文献情報
文献番号
201024010A
報告書区分
総括
研究課題名
中枢性摂食異常症に関する調査研究
課題番号
H20-難治・一般-010
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
小川 佳宏(国立大学法人東京医科歯科大学 難治疾患研究所)
研究分担者(所属機関)
- 芝崎 保(日本医科大学 大学院医学研究科)
- 中尾 一和(京都大学 大学院医学研究科)
- 児島 将康(久留米大学 分子生命科学研究所)
- 吉松 博信(大分大学 医学部)
- 赤林 朗(東京大学 医学系研究科)
- 赤水 尚史(和歌山県立医科大学)
- 鈴木 眞理(政策研究大学院大学 保健管理センター)
- 久保 千春(九州大学病院)
- 堀川 玲子(国立成育医療研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
17,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
わが国における若年女性の理想体重に対する認識は大きく変化し、中枢性摂食異常症患者と予備軍は増加しており、発症の低年齢化が進んでいる。しかしながら、本症は心療内科的な対応しかできない難治性疾患であり、有効な治療法がない。本調査研究の目的は、中枢性摂食異常症の成因・病態に関する基礎研究と臨床研究を組み合わせて本症の新しい治療法と予防法の開発を推進することである。
研究方法
基礎研究では、摂食・エネルギー代謝調節関連分子あるいはそれらの受容体の遺伝子改変動物を用いて、中枢性摂食異常症の成因と病態に関する摂食・エネルギー代謝調節の分子機構と主要な中枢性神経伝達分子の病態生理的意義を検討した。臨床研究では、新しい方法論による摂食障害の病態の解析とともに、全身性強皮症患者を対象としてグレリンの消化管運動増進と摂食亢進の作用に関する新たな臨床試験を企画した。全国疫学調査に向けて、東京都の小学生・中学生・高校生を対象として質問紙調査(EAT26)を用いたパイロット研究を企画した。
結果と考察
基礎研究では、絶食時の骨髄B 細胞分化障害におけるレプチンの病態生理的意義、中枢性摂食異常症や関連病態におけるCRF や神経ヒスタミンあるいはグレリンの生理的・病態生理的意義を明らかになった。臨床研究では、f-MRI を用いた食欲異常と脳神経活動の解析、神経性食欲不振症患者の低栄養状態が心身へ及ぼす影響、日常生活下における神経性食欲不振症患者の代償行動の実態が明らかになった。消化管障害におけるグレリンの治療効果を検証する新しい臨床試験を開始した。以上により、中枢性摂食異常症の病態の分子機構が明らかになり、中枢性摂食異常症の病因・病態の臨床的理解が進んだ。一方、中枢性摂食異常症の全国疫学調査に向けて、東京都の小学生・中学生・高校生を対象としたパイロット研究を開始した。全国レベルの疫学調査は1992 年以降実施されていないため、将来、学校を対象とした実態調査により正確な有病率が得られることが期待される。
結論
中枢性摂食異常症の成因・病態に関する基礎研究と臨床研究を推進した。中枢性摂食異常症の克服に向けて有効な予防法と治療法に関する基盤データの集積とインフラの整備が推進し、患者自身のQOL の向上とともに本症患者と予備軍の減少により医療福祉行政における経済損失の抑制につなげたい。
公開日・更新日
公開日
2011-12-27
更新日
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