包括的な精神保健医療福祉施策の推進に関する研究

文献情報

文献番号
202517047A
報告書区分
総括
研究課題名
包括的な精神保健医療福祉施策の推進に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
25GC2001
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
藤井 千代(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 野口 正行(岡山県精神保健福祉センター)
  • 来住 由樹(岡山県精神科医療センター)
  • 椎名 明大(千葉大学社会精神保健教育研究センター)
  • 杉山 直也(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所地域精神保健・法制度研究部)
  • 小池 純子(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 地域精神保健・法制度研究部)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和7(2025)年度
研究終了予定年度
令和9(2027)年度
研究費
28,121,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、精神保健医療福祉上のニーズを有する方等が地域で安心して暮らせる包括的な精神保健医療福祉体制を実現するため、実態調査や好事例調査、エキスパートコンセンサスの形成を通じて研究成果に基づく政策提言を行うとともに、施策実装のための具体的方法を提示することを目的とする。
研究方法
上記目的に係る調査研究について、以下の分担班で課題の検討状況を共有しつつ実施した。
以下の6つの分担班で調査研究を実施している。
自治体における精神保健相談支援体制の推進に関する研究(野口正行)
地域における精神医療体制のあり方に関する研究(来住由樹)
措置入院の適正化に関する研究(椎名明大)
行動制限最小化に関する研究(杉山直也)
入院中の精神障害者の虐待防止に関する研究(小池純子)
精神障害者の権利擁護に関する研究(藤井千代)
結果と考察
野口分担班で作成した演習資料は、全国精神保健福祉相談員会の協力を得て奈良県、長崎県、石川県、滋賀県等の精神保健福祉センターで試行され、教材整備が進んだ。好事例分析からは、歴史的背景や組織体制、部署間連携等の応用可能な要素が整理された。今後は規模や資源に応じた体制構築方法の検討が必要である。
来住分担班で作成した高規格病棟必要性チェックリストの分析では、AUCが0.7497、3点以上をカットオフとした場合の感度83.64%、特異度51.87%であり、一定の実用可能性が示された。精神科地域包括ケア病棟のアンケートでは約4割が撤退・撤退予定であり、移行要件や180日超過時の評価が主要課題であった。また、個票調査では180日超過群で高い支援ニーズが示された。精神科救急では人口対受診件数の漸減と入院率の上昇、身体合併症対応の課題がみられ、過度な地域差の縮小に向けた自治体へのフィードバック継続が重要と考えられた。
椎名分担班で実施したグループインタビューから、自治体ごとの指定医確保や関係機関との連携状況の差などの課題が把握された。実践セミナーでは受講後に措置診察に対する自信や知識の有意な向上が確認され、標準化された研修パッケージの意義が示された。追加分析により、警察官通報後の各段階での判断に影響する情報が明確化された。
杉山分担班で実施したPMSR活用の予備的解析では、強制的手段への態度や病棟風土(患者間の仲間意識等)の得点に有意な変化が認められた。PRの予備的解析でも、行動制限最小化活動の有効性や課題の明確化に関する項目の得点が有意に上昇した。教育資材やPRによる実践的介入が組織文化の変革に有効である可能性が示唆された。
小池分担班で実施したインタビューの分析から、通報等対応における課題として自治体から9つ、病院管理者から5つ、多職種から12の課題が抽出された。当事者からは制度に関する12の課題や提言が抽出された。虐待防止には組織風土や相談体制、外部への通報機能など多層的な対応が必要と考えられた。
藤井分担班では、実務上迷いやすい場面(電話受付時の不測の事態等)に対応する演習教材やアンケート案を整備した。精神医療審査会データの分析では、請求審査や合議体委員、請求認容数が増加している一方で、退院等の請求頻度の低さや審査結果の地域差、委員確保や書面審査の負担などの課題が示された。
考察として、これらの成果は、地域における相談支援、精神科救急、入院医療、非自発的入院制度、行動制限最小化、虐待防止、権利擁護が、それぞれ独立した課題ではなく、包括的な精神保健医療福祉体制を支える相互に連関した構成要素であることを示している。
結論
地域における相談支援や早期支援は危機的状況に至る前に支援につなげるための基盤であり、急性増悪時には精神科救急や措置入院を含む非自発的入院制度が適切かつ公正に機能する必要がある。さらに、入院医療が必要となった場合には、適切な医療提供と同時に、可能な限り本人の意思と選好、尊厳を守るための取組み(行動制限最小化、虐待防止、入院者訪問支援事業、精神医療審査会の適正運用)が不可欠である。
今後は、本年度得られた知見を踏まえてさらに調査・分析を進めるとともに、地域の実情に応じた実装可能性を考慮しながら、相談支援、医療提供体制、非自発的入院制度、入院中の権利擁護を相互に関連づけ、各領域を一体的に捉えた施策のあり方を検討していく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2026-06-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2026-06-02
更新日
-

収支報告書

文献番号
202517047Z