ベーチェット病に関する調査研究

文献情報

文献番号
201024006A
報告書区分
総括
研究課題名
ベーチェット病に関する調査研究
課題番号
H20-難治・一般-006
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
石ヶ坪 良明(横浜市立大学 大学院医学研究科 病態免疫制御内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 大野 重昭(北海道大学 大学院医学研究科 視覚器病学分野)
  • 猪子 英俊(東海大学医学部 分子生命学系遺伝部門 分子遺伝学)
  • 岩渕 和也(北里大学 医学部 免疫学)
  • 鈴木 登(聖マリアンナ医科大学 免疫・病害動物学)
  • 磯貝 恵美子(東北大学農学研究科動物微生物学)
  • 桑名 正隆(慶應義塾大学 医学部 内科学)
  • 水木 信久(横浜市立大学 大学院 医学研究科 視覚器病態学)
  • 太田 正穂(信州大学 医学部 法医学教室)
  • 広畑 俊成(北里大学 医学部 膠原病・感染内科学)
  • 黒沢 美智子(順天堂大学 医学部 衛生学教室)
  • 内藤 真理子(名古屋大学 大学院 医学研究科 予防医学)
  • 新見 正則(帝京大学 医学部 外科)
  • 蕪城 俊克(東京大学 大学院 医学研究科 外科学専攻眼科学)
  • 後藤 浩(東京医科大学 眼科学)
  • 中村 晃一郎(埼玉医科大学 皮膚科)
  • 岳野 光洋(横浜市立大学 大学院医学研究科 病態免疫制御内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
37,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ベーチェット病(BD)の病型別診療ガイドラインを作成する。病因については、遺伝因子、環境因子の両面から、免疫異常については自己免疫、自己炎症の観点から解析する。平成20年に開設した研究班ホームページを利用して、一般国民の情報交換の場とする。
研究方法
①臨床研究:共同研究施設およびアンケート調査から得られたBD患者情報をもとに眼病変、腸管型、神経型、血管型の各病型に対する診療ガイドラインを作成した。②基礎研究:約50万個のSNPを用いたGWASにより、感受性遺伝子を同定した。環境因子は口腔内常在菌の関与を、免疫異常のついてはTh17応答と自然免疫異常に焦点をあて検討した。また、実験モデル動物を用いて新規薬剤治療のスクリーニングを行った。③広報活動:ホームページを活用して一般国民の情報交換の場とした。
結果と考察
①臨床研究:眼病変ガイドラインではBDブドウ膜炎の眼科的な診断根拠をまとめ、コルヒチン、シクロスポリン、インフリキシマブなどの治療推奨を明確にした。腸管型は抗TNF抗体をオプションに位置付けた治療のアルゴリズムを提唱した。神経型では急性型の髄液細胞数、慢性進行型の髄液IL-6上昇、MRI脳幹委縮の重要性を診断基準案に盛り込んだ。これらガイドラインの印刷物を発行した。②基礎研究:GWASにより疾患感受性遺伝子として同定したIL10、IL23R/IL12RB2はトルコ・米国の結果とも一致した。IL-10の抗炎症作用不全やIL-23R/IL-12RB2を介したTh17、Th1過剰活性の病態への関与が示唆された。患者検体でもTh17型自己免疫異常を解析し、pyrinを中心に自己炎症についても解析を進めた。動物モデルではDHMEQ、抗オステオポンンチン抗体、OPN siRNA、抗TNF-α抗体の硝子体内投与が有効であった。③広報活動:ホームページで診療医紹介、学会レポートなどの情報を提供し、年間約30件の患者質問に回答した。
結論
3年間の最後の年度にあたり、臨床から基礎研究にわたるまで上記の成果を上げた。また、研究班ホームページの運営も軌道に乗り、貴重な一般国民の情報交換の場となっている。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

文献情報

文献番号
201024006B
報告書区分
総合
研究課題名
ベーチェット病に関する調査研究
課題番号
H20-難治・一般-006
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
石ヶ坪 良明(横浜市立大学 大学院医学研究科 病態免疫制御内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 大野 重昭(北海道大学大学院医学研究科医学専攻炎症眼科学講座)
  • 猪子 英俊(東海大学医学部 基礎医学系分子生命科学)
  • 岩渕 和也(北里大学医学部免疫学)
  • 鈴木 登(聖マリアンナ医科大学免疫・病害動物学)
  • 磯貝 恵美子(東北大学農学研究科動物微生物学)
  • 桑名 正隆(慶應義塾大学医学部リウマチ内科)
  • 水木 信久(横浜市立大学大学院医学研究科視覚器病態学)
  • 太田 正穂(信州大学医学部法医学教室)
  • 廣畑 俊成(北里大学医学部膠原病・感染内科学)
  • 黒沢 美智子(順天堂大学医学部衛生学講座)
  • 内藤 真理子(名古屋大学大学院医学系研究科予防医学)
  • 新見 正則(帝京大学医学部外科)
  • 蕪城 俊克(東京大学医学部附属病院眼科)
  • 後藤 浩(東京医科大学眼科学教室)
  • 中村 晃一郎(埼玉医科大学皮膚科)
  • 岳野 光洋(横浜市立大学大学院医学研究科病態免疫制御内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ベーチェット病(BD)の診療の現状を把握し、病型別診療ガイドラインを作成する。病因については、遺伝因子、環境因子の両面から、免疫異常については自己免疫、自己炎症の観点から解析する。これらの研究成果をはじめとしBD関連の情報を発信するため、研究班としてのホームページを開設する。
研究方法
①臨床研究:共同研究施設およびアンケート調査から得られたBD患者情報を解析し、眼病変、腸管型、神経型、血管型の各病型に対する診療ガイドラインを作成した。②基礎研究:約50万個のSNPを用いたGWASにより、感受性遺伝子を同定した。環境因子は口腔内常在菌の関与を、免疫異常のついてはTh17応答と自然免疫異常に焦点をあて検討した。また、実験モデル動物を用いて新規薬剤治療のスクリーニングを行った。③広報活動:ホームページを開設し、研究班と一般国民の情報交換の場とした。
結果と考察
①臨床研究:眼病変ガイドラインではBDブドウ膜炎の眼科的な診断根拠をまとめ、コルヒチン、シクロスポリン、インフリキシマブなどの治療推奨を明確にした。腸管型はアンケート調査でその有用性が検証された抗TNF抗体をオプションに位置付けた治療のアルゴリズムを提唱した。神経型では急性型の髄液細胞数、慢性進行型の髄液IL-6上昇、MRI脳幹委縮の重要性を診断基準案に盛り込んだ。また、臨床調査個人票より有用な情報が得られるように改定した。②基礎研究:GWASにより疾患感受性遺伝子として同定したIL10、IL23R/IL12RB2はトルコ・米国の結果とも一致した。IL-10の抗炎症作用不全やIL-23R/IL-12RB2を介したTh17、Th1過剰活性の病態への関与が示唆された。患者検体でもTh17型自己免疫異常を解析し、pyrinを中心に自己炎症についても解析を進めた。動物モデルではDHMEQ、抗オステオポンンチン抗体、OPN siRNA、抗TNF-α抗体の硝子体内投与が有効であった。③広報活動:ホームページで診療医紹介、学会レポートなどの情報を提供し、年間約30件の患者質問に回答した。
結論
この3年間で上記の成果を上げたが、残っている課題については引き続き検討していく。2012年第15回国際ベーチェット病会議(横浜)にて、上記の成果を国内のみならず、国際的発信の場とする予定である。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201024006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
SNPを用いたGWASにより、疾患感受性遺伝子としてIL10、IL23R/IL12RB2を同定し(Mizuki et al, Nature Genetics, 2010)、IL-10の抗炎症作用不全や、IL-23R/IL-12RB2を介したTh17、Th1過剰活性の病態への関与が示唆された。この所見はトルコ・米国の共同研究の結果とも一致しており、国内外の反響は大きく、メディアにも取り上げられた。また、HLA-A26、TLR4、HO-1に関する知見を報告した。
臨床的観点からの成果
小児ベーチェット病の国際共同研究(Kitaich, et al, Int Ophthal Clin. 2008)のほか、診療ガイドラインに作成に必要な既存の患者資料を収集する中で、我国における神経ベーチェット病の特徴をまとめ(Ideguchi et al, J. Neurology, 2010)、ベーチェット病患者病像の臨床症状の推移の解析(Ideguchi et al, Medicine, in press)などを含めた論文報告、学会発表を行った。
ガイドライン等の開発
ベーチェット病眼病変診療ガイドラインには眼科的にベーチェット病の可能性が高い所見をまとめ、推奨される治療を示し、完成版を公開した。腸管型に関しては、これまでの平成19年度案を検討し、治療を中心に、「腸管ベーチェット病診療ガイドライン平成21年度案-コンセンサス・ステートメントに基づく-」をまとめ、公開した。神経型診断ガイドライン(案)も完成し、血管型ガイドラインについても作成中である。
その他行政的観点からの成果
臨床調査個人票は特定疾患受給に必須であるばかりでなく、貴重な患者データである。これを用いた疫学調査をより効率的に行うため、「更新」申請書に症状、治療状況を「ここ1年」と「全経過」の記載項目を設けたほか、副症状、参考となる所見の記載事項、鑑別診断の一部を変更した。さらに、これに合致するよう診断基準についても改定した。
その他のインパクト
上記Natureの報告は全国紙にて報道された。平成20年度にホームページを開設し、ベーチェット病の概説、診療医の紹介、学会レポートなどで新しい情報を一般に提供するとともに、年間約30件の患者からの質問に回答し、双方向性の意見交換の場として活用した。また、2007年から隔年で開催している韓国とのジョイント会議は本年度は日本開催を予定しており,さらに,2012年横浜にて開催予定の第15回国際ベーチェット病会議の準備を進めるとともに、同時期開催の国際患者会を側面的に支援する。

発表件数

原著論文(和文)
11件
原著論文(英文等)
135件
その他論文(和文)
21件
その他論文(英文等)
4件
学会発表(国内学会)
185件
学会発表(国際学会等)
119件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Haruko Ideguchi,Akiko Suda,Mitsuhiro Takeno et al.
Behçet disease: evolution of clinical manifestations.
Medicine , 90 (2) , 125-132  (2011)
原著論文2
Mizuki N, Meguro A, Ota M et al.
Genome-wide association studies identify IL23R-IL12RB2 and IL10 as Behçet's disease susceptibility loci.
Nat Genet , 42 (8) , 703-706  (2010)
原著論文3
Ideguchi H, Suda A, Takeno M et al.
Neurological manifestations of Behçet's disease in Japan: a study of 54 patients.
J Neurol , 257 (6) , 1012-1020  (2010)
原著論文4
Kaneko F, Togashi A, Saito S et al.
Behçet's disease (Adamantiades-Behçet's disease)
Clin Dev Immunol , 2011  (2011)
原著論文5
Kirino Y, Takeno M, Watanabe R et al.
Association of reduced heme oxygenase-1 with excessive Toll-like receptor 4 expression in peripheral blood mononuclear cells in Behçet's disease.
Arthritis Res Ther , 10 (1)  (2008)
原著論文6
Horie Y, Meguro A, Ota M et al.
Association of TLR4 polymorphisms with Behcet's disease in a Korean population
Rheumatology (Oxford) , 48 (6) , 638-642  (2009)
原著論文7
Ebihara T, Azuma M, Oshiumi H et al.
Identification of a polyI:C-inducible membrane protein that participates in dendritic cell–mediated natural killer cell activation
J Exp Med , 207 (12) , 2675-2687  (2010)
原著論文8
Yamaguchi Y, Takahashi H, Satoh T et al.
Natural killer cells control a T-helper 1 response in patients with Behçet's disease.
Arthritis Res Ther , 12 (3)  (2010)
原著論文9
Horie Y, Meguro A, Ota M et al.
Association of TLR4 polymorphisms with Behcet's disease in a Korean population.
Rheumatology , 48 (6) , 638-642  (2009)
原著論文10
Kaburaki T, Araki F, Takamoto M et al.
Best-corrected visual acuity and frequency of ocular attacks during the initial 10 years in patients with Behçet's disease.
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol , 248 (5) , 709-714  (2010)
原著論文11
Meguro A, Inoko H, Ota M et al.
Genetics of Behcet's disease inside and outside the MHC.
Ann Rheum Dis. , 69 (4) , 747-754  (2009)
原著論文12
Tomiyama R, Meguro A, Ota M et al.
Investigation of the association between Toll-like receptor 2 gene polymorphisms and Behçet's disease in Japanese patients.
Hum Immunol , 70 (1) , 41-44  (2008)
原著論文13
Takemoto Y, Naruse T, Namba K et al.
Re-evaluation of heterogeneity in HLA-B*510101 associated with Behçet's disease.
Tissue Antigens , 72 (4) , 347-353  (2008)
原著論文14
Hayashi F, Yanagawa Y, Onoé K et al.
Dendritic cell differentiation with prostaglandin E results in selective attenuation of the extracellular signal-related kinase pathway and decreased interleukin-23 production.
Immunology , 131 (1) , 67-76  (2010)
原著論文15
Miyazaki Y, Iwabuchi K, Iwata D et al.
Effect of high fat diet on NKT cell function and NKT cell-mediated regulation of Th1 responses.
Scand J Immunol , 67 (3) , 230-237  (2008)
原著論文16
Miyazaki A, Kitaichi N, Ohgami K et al.
Anti-inflammatory effect of angiotensin type 1 receptor antagonist on endotoxin-induced uveitis in rats.
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol , 246 (5) , 747-757  (2008)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
2015-05-21

収支報告書

文献番号
201024006Z