原発性免疫不全症候群に関する調査研究

文献情報

文献番号
201024003A
報告書区分
総括
研究課題名
原発性免疫不全症候群に関する調査研究
課題番号
H20-難治・一般-003
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
原 寿郎(国立大学法人九州大学 医学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 宮脇 利男(富山大学大学院 医学薬学研究部)
  • 有賀 正(北海道大学大学院 医学研究科)
  • 土屋 滋(東北大学大学院 医学系研究科)
  • 野々山 恵章(防衛医科大学校 医学研究科)
  • 森尾 友宏(東京医科歯科大学大学 医歯学総合研究科)
  • 上松 一永(信州大学 医学研究科)
  • 近藤 直実(岐阜大学 医学系研究科)
  • 小島 勢二(名古屋大学 医学系研究科)
  • 谷内江 昭宏(金沢大学 医学系研究科)
  • 中畑 龍俊(京都大学iPS細胞研究センター)
  • 小林 正夫(広島大学 医歯薬学総合研究科)
  • 布井 博幸(宮崎大学 医学部)
  • 横田 俊平(横浜市立大学大学院 医学研究科)
  • 峯岸 克行(東京医科歯科大学 医学研究科)
  • 千葉 滋(筑波大学 医学部)
  • 平家 俊男(京都大学大学院 医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
38,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本調査研究班は、迅速で正確な診断、病因・病態解析、治療ガイドラインの作成、新規治療法の開発、患者や主治医への情報提供を介して原発性免疫不全症患者QOLと医療水準の向上に貢献することを目的とする。
研究方法
全国疫学調査は国際分類に沿った形で、平成20年度より開始した。平成22年度はSCID/CIDと高IgE症候群について解析した。迅速診断法開発は、専門の研究分担者が協力して行う。遺伝子解析は、理化学研究所、かずさDNA研究所と連携して行う。原因不明の疾患については、エキソーム解析など最新の方法も取り入れ、免疫遺伝学的特徴を基に責任遺伝子を解明する。病態解析については疾患の免疫分子遺伝学的特徴を基盤として行う。新たな病態解析toolとしてiPS細胞からの血球分化系及びヒト化マウスモデル等を樹立した。治療ガイドラインについては、国内外の成績を基に、適切な造血幹細胞移植法等について議論し作成する。
結果と考察
疫学調査では、SCID/CID患者は国内に71例が登録された。造血幹細胞移植が60例行われ、4例死亡しており、出生時マススクリーニングの必要性が確認された。PIDJ登録患者の遺伝子解析数は、平成22年年10月現在で遺伝子数126種類、解析検体618名、のべ2084遺伝子である。新規疾患RALDを初めて明らかにし、責任遺伝子を解明した。高IgE症候群研究でアトピー性皮膚炎、高IgE血症の起こるメカニズムを解明した。IPEX症候群では、消化管自己抗原villinを同定した。XLPの国内例を集計し、臨床・遺伝的背景を明らかにした。TREC、KREC値によってCVIDを細分類できることを解明した。CINCA症候群の主要原因がNLRP3体細胞モザイクであることを国内外で確認した。WASではT細胞におけるWASP蛋白分解機構を解明した。RAG異常症ではRAGのV(D)J組み換え活性の低下を確認した。TIRAP/Malの遺伝子変異、構造解析を継続している。X-SCIDの造血幹細胞移植ガイドラインを公開し、その他の疾患についても造血幹細胞移植の成績、問題点を解析した。患者や主治医の登録をオンラインで行っており、原発性免疫不全症候群に関する最新の情報を研究会、ホームページで医師、患者家族に提供している。患者家族会との連携を深め、講演会・相談会を実施した。
結論
原発性免疫不全症候群患者の状態を把握し、より適切な治療を受けQOLを改善させるための今年度の目標を達成し、今後、さらなる情報発信、より良い診断・治療法の開発へ向けて貢献をしていく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

文献情報

文献番号
201024003B
報告書区分
総合
研究課題名
原発性免疫不全症候群に関する調査研究
課題番号
H20-難治・一般-003
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
原 寿郎(国立大学法人九州大学 医学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 宮脇 利男(富山大学大学院 医学薬学研究部)
  • 有賀 正(北海道大学大学院 医学系研究科)
  • 土屋 滋(東北大学大学院 医学系研究科)
  • 野々山 恵章(防衛医科大学校 医学研究科)
  • 森尾 友宏(東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科)
  • 上松 一永(信州大学大学院 医学研究科)
  • 近藤 直実(岐阜大学大学院 医学系研究科)
  • 蒲池 吉朗(名古屋大学大学院 医学系研究科)
  • 小島 勢二(名古屋大学大学院 医学系研究科)
  • 谷内江 昭宏(金沢大学大学院 医学系研究科)
  • 中畑 龍俊(京都大学 iPS細胞研究センター)
  • 平家 俊男(京都大学大学院 医学研究科)
  • 小林 正夫(広島大学大学院 医歯薬学総合研究科)
  • 布井 博幸(宮崎大学 医学部)
  • 岩田 力(東京家政大学 家政学部)
  • 横田 俊平(横浜市立大学大学院 医学研究科)
  • 峯岸 克行(東京医科歯科大学大学院 医学研究科)
  • 千葉 滋(筑波大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
研究目的は、疫学研究による患者の把握、迅速で正確な診断、病因・病態解析、治療ガイドラインの作成、既治療法の改善と新規治療法の開発を介して原発性免疫不全症候群の患者QOLと医療水準を向上させることである。
研究方法
新たな分類に従って国内2,894病院を対象として全国疫学調査を行いデータを解析した。XLAの成人を対象にQOL調査を実施した。迅速診断法の開発は、各専門分野の研究分担者が協力して行った。遺伝子解析は、理化学研究所、かずさDNA研究所と連携し行った。原因不明の疾患は、責任遺伝子の解明に向けてエキソーム解析などの最新の方法も取り入れ、免疫遺伝学的特徴等を基に行った。病態解析については疾患の免疫分子遺伝学的特徴を基盤として行った。新たな病態解析toolとしてiPS細胞からの血球分化系及びヒト化マウスモデル等を樹立した。治療ガイドラインは、国内外の成績を基に、適切な造血幹細胞移植法等について議論しながら作成した。
結果と考察
疫学調査の結果、原発性免疫不全症候群患者数は推計3500人(95%信頼区間:2800人- 4200人)、推計有病率は2.7人/人口10万人対であった。合併症など国内患者の詳細を把握し公開した。XLA患者のQOL調査結果で、疾患が患者の身体的、精神的両面に影響を及ぼしていることがわかり、適切な疾患の管理および精神的ケアが必要である。迅速診断法は、18疾患について確立し、TREC、KRECの定量によるSCIDおよびB細胞欠損症の新生児マススクリーニングが可能であることを明らかにした。遺伝子解析は平成22年10月現在でのべ2084もの遺伝子を解析した。新たな疾患としてRALDを解明し責任遺伝子を明らかにした。高IgE症候群の病態を解明し、MSMD、IPEX症候群、XLP、CVID、CAPS、家族性地中海熱、若年性サルコイドーシス、などの国内例の遺伝的臨床的特徴を明らかにした。TLRシグナル異常の病態、WASPタンパク分解機構を解析した。ヘルパー依存型アデノ・アデノ随伴ウイルス(HD-Ad.AAV) ハイブリッドベクターを用いた遺伝子修復を確立した。CGD、WAS、SCIDに対する造血幹細胞移植法を公開した。 患者や主治医の登録をオンラインで行い、原発性免疫不全症候群の最新の情報を公開し、講演会、相談会により患者家族会との連携を深めた。
結論
原発性免疫不全症候群患者の状態を把握し、より適切な治療を受けQOLを改善させるための今回の目標を達成し、今後、さらなる情報発信、より良い診断・治療法の開発へ向けて貢献をしていく。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201024003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
FANC異常による液性免疫不全症、GATA2欠損症、PIK3CD異常症、LRBA異常症、RTEL1欠損症、Aprataxin異常症などを初めて同定した。疾患特異的iPS細胞を樹立し、AK2欠損症等の病態解析を行った。変異STAT3ノックインマウスを作製し、高IgE症候群の病態を解明した。XLA患者の好中球減少のメカニズム、女性WASやXLPにおけるX染色体不活化異常の意義、WASP変異のT細胞機能への影響、C3遺伝子異常と臨床像の相関、NLRP3異常によるIL-1β活性化機構等を解明した。
臨床的観点からの成果
全国疫学調査結果から、内分泌疾患の合併が多いことを初めて明らかにし、液性免疫不全症の成人例の特徴、IRAK4欠損症や先天性好中球減少症、C3欠損症、慢性皮膚粘膜カンジダ症(CMCD)の臨床・遺伝学的特徴を解明した。新たに (1) p47phox欠損型CGD、(2) p67phox欠損型CGD、(3) FHL、(4) 高IgE症候群Tyk2欠損型、(5) CMCD、(6) IKBA欠損症、(7) ADA欠損症の迅速診断法などを開発した。
ガイドライン等の開発
既に作成していた、X-SCID、JAK3欠損症、WAS、CGDに対する造血幹細胞移植法を中心としたガイドラインの成績調査を継続し、新たに、造血幹細胞移植における前処置法、移植前後の管理などの具体的な方法を含めた高IgM症候群の治療ガイドライン、原発性免疫不全症に合併するBCG感染症の治療ガイドラインを作成し、ホームページに公開した(http://pidj.rcai.riken.jp/medical_guideline.html)。
その他行政的観点からの成果
乾燥濾紙血(ガスリー血)中のTRECs測定による重症複合型免疫不全症、KRECs測定による無γグロブリン血症の新生児スクリーニング法は極めて実用的であることを確認した。海外では実際に全新生児を対象として行われている地域もある。この新生児スクリーニングを実施できるよう今後とも働きかけていく。
その他のインパクト
年1回から数回開催される患者家族会「NPO法人PIDつばさの会」では、患者や家族に対して、病気の特徴、合併症への注意や具体的な予防法、日常生活での注意点などに関して、講演会・医療相談会を開催した。

発表件数

原著論文(和文)
172件
原著論文(英文等)
471件
その他論文(和文)
222件
その他論文(英文等)
31件
学会発表(国内学会)
504件
学会発表(国際学会等)
175件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
2件
「取得」計2件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kamae C, Nakagawa N, Sato H, et al
Common variable immunodeficiency classification by quantifying T-cell receptor and immunoglobulin κ-deleting recombination excision circles.
J Allergy Clin Immunol , 131 (5) , 1437-1440  (2013)
10.1016/j.jaci.2012.10.059.
原著論文2
Wada T, Muraoka M, Toma T, et al
Rapid Detection of Intracellular p47phox and p67phox by Flow Cytometry; Useful Screening Tests for Chronic Granulomatous Disease.
J Clin Immunol , 33 (4) , 857-864  (2013)
10.1007/s10875-012-9859-9.
原著論文3
Hiramoto T, Ebihara Y, Mizoguchi Y, et al
Wnt3a stimulates maturation of impaired neutrophils developed from severe congenital neutropenia patient-derived pluripotent stem cells
Proc Natl Acad Sci U S A , 110 (8) , 3023-3028  (2013)
10.1073/pnas.1217039110.
原著論文4
Yang X, Kanegane H, Nishida N, et al
Clinical and genetic characteristics of XIAP deficiency in Japan.
J Clin Immunol , 32 (3) , 411-420  (2012)
10.1007/s10875-011-9638-z.
原著論文5
Takezaki S, Yamada M, Kato M, et al
Chronic mucocutaneous candidiasis caused by a gain-of-function mutation in the STAT1 DNA-binding domain.
J Immunol , 189 (3) , 1521-1526  (2012)
10.4049/jimmunol.1200926.
原著論文6
Ohnishi H, Miyata R, Suzuki T, et al
A rapid screening method to detect autosomal-dominant ectodermal dysplasia with immune deficiency syndrome.
J Allergy Clin Immunol , 129 (2) , 578-580  (2012)
10.1016/j.jaci.2011.09.042.
原著論文7
Kawai T, Nishikomori R, Izawa K, et al
Frequent somatic mosaicism of NEMO in T cells of patients with X-linked anhidrotic ectodermal dysplasia with immunodeficiency.
Blood , 119 (23) , 5458-5466  (2012)
10.1182/blood-2011-05-354167.
原著論文8
Ishimura M, Takada H, Doi T, et al
Nationwide survey of patients with primary immunodeficiency diseases in Japan.
J Clin Immunol , 31 (6) , 968-976  (2011)
10.1007/s10875-011-9594-7.
原著論文9
Hoshina T, Takada H, Sasaki-Mihara Y, et al
Clinical and host genetic characteristics of Mendelian susceptibility to mycobacterial diseases in Japan.
J Clin Immunol , 31 (3) , 309-314  (2011)
10.1007/s10875-010-9498-y.
原著論文10
Nakagawa N, Imai K, Kanegane H, et al
Quantification of κ-deleting recombination excision circles in Guthrie cards for the identification of early B-cell maturation defects.
J Allergy Clin Immunol , 128 (1) , 223-225  (2011)
10.1016/j.jaci.2011.01.052.
原著論文11
Murata Y, Yasumi T, Shirakawa R, et al
Rapid diagnosis of FHL3 by flow cytometric detection of intraplatelet Munc13-4 protein.
Blood , 118 (5) , 1225-1230  (2011)
10.1182/blood-2011-01-329540.
原著論文12
Liu L, Okada S, Kong XF, et al
Gain-of-function human STAT1 mutations impair IL-17 immunity and underlie chronic mucocutaneous candidiasis.
J Exp Med , 208 (8) , 1635-1648  (2011)
10.1084/jem.20110958
原著論文13
Takagi M, Shinoda K, Piao J, et al.
Autoimmune Lymphoproliferative Syndrome Like Disease With Somatic KRAS Mutation.
Blood , 117 (10) , 2887-2890  (2011)
10.1182/blood-2010-08-301515.
原著論文14
Sakata-Yanagimoto M, Sakai T, Miyake Y, et al.
Notch2 signaling is required for proper mast cell distribution and mucosal immunity in the intestine.
Blood , 117 (1) , 128-134  (2011)
10.1182/blood-2010-07-289611.
原著論文15
Saito M, Nagasawa M, Takada H, et al.
Defective IL-10 signaling in hyper-IgE syndrome results in impaired generation of tolerogenic dendritic cells and induced regulatory T cells.
J Exp Med , 208 (2) , 235-249  (2011)
10.1084/jem.20100799.
原著論文16
Albert M, Bittner T.C, Nonoyama S, et al.
X-linked thrombocytopenia (XLT) due to WAS mutations: Clinical characteristics, long-term outcome and treatment options.
Blood , 115 (16) , 3231-3238  (2010)
10.1182/blood-2009-09-239087.
原著論文17
Minegishi Y, Saito M, Nagasawa M, et al.
Molecular explanation for the contradiction between systemic Th17 defect and localized bacterial infection in hyper-IgE syndrome.
J Exp Med , 206 (6) , 1291-1301  (2009)
10.1084/jem.20082767.
原著論文18
Wada T, Yasui M, Toma T, et al.
Detection of T lymphocytes with a second-site mutation in skin lesions of atypical X-linked severe combined immunodeficiency mimicking Omenn syndrome.
Blood , 112 (5) , 1872-1875  (2009)
10.1182/blood-2008-04-149708.
原著論文19
Shinohara M. Koga T. Okamoto K, et al.
Tyrosine kinases Btk and Tec regulate osteoclast differentiation by linking RANK and ITAM signals.
Cell , 132 (5) , 794-806  (2008)
10.1016/j.cell.2007.12.037.
原著論文20
Saito M, Nishikomori R, Kambe N, et al.
Disease-associated CIAS1 mutations induce monocyte death, revealing low-level mosaicism in mutation-negative cryopyrin-associated periodic syndrome patients.
Blood , 111 (4) , 2132-2141  (2008)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
2016-06-20

収支報告書

文献番号
201024003Z