文献情報
文献番号
202517035A
報告書区分
総括
研究課題名
療育手帳の交付判定及び知的障害に関する専門的な支援等に資する知的能力・適応行動の評価手法の開発のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
25GC1009
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
辻井 正次(学校法人梅村学園 中京大学 現代社会学部)
研究分担者(所属機関)
- 内山 登紀夫(福島学院大学)
- 日詰 正文(独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園 総務企画局研究・人材養成部)
- 岡田 俊(公立大学法人 奈良県立医科大学 精神医学講座)
- 本田 秀夫(信州大学 学術研究院医学系)
- 伊藤 大幸(お茶の水女子大学 生活科学部)
- 浜田 恵(中京大学 心理学部)
- 高柳 伸哉(愛知教育大学)
- 明翫 光宜(中京大学心理学部)
- 山根 隆宏(国立大学法人神戸大学 人間発達環境学研究科)
- 岩永 竜一郎(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科)
- 桝屋 二郎(法務省 関東医療少年院)
- 村山 恭朗(金沢大学 人間社会研究域 人間科学系)
- 小林 真理子(山梨英和大学 人間文化学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和7(2025)年度
研究終了予定年度
令和9(2027)年度
研究費
19,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
療育手帳制度は、知的発達症(知的障害)を示す児者への福祉の増進を目的として、昭和48年(1973年)に都道府県知事および指定都市長宛になされた厚生事務次官通知(厚生省発児第156号)に基づき、現在まで運用されている。先行研究において、都道府県・指定市間に認められる基準や実施する検査のバラつきなどが課題として指摘されていたことから、我々は知的機能と適応行動の簡便な評定を可能としたノルム化検査(ABIT-CV)を開発した。一方で、現場職員への研修や二軸評定の導入による課題と懸念、各地域における判定結果との照合など、ABIT-CV の実装には課題も残っている。そのため、本研究では全国各地におけるABIT-CV説明会の実施や希望する機関でABIT-CVの訓練、既存の判定結果との比較から療育手帳の判定交付基準の統一に向けた基礎資料および判定ガイドラインの作成を目的とする。
研究方法
本年度は3か年計画の初年度にあたり、主に以下の三点に取り組んだ。第一に、全国各地でABIT-CV説明会を実施し、児童相談所や知的障害者更生相談所等の現場職員からのフィードバックを得た。第二に、療育手帳の判定基準の統一化や知的機能と適応行動の二軸判定の導入などを進めることで生じうる課題や懸念について、児童精神科医らによる検討を行った。最後に、ABIT-CVと全国各地の児童相談所や知的障害者更生相談所等における療育手帳判定の結果について、一部自治体における調査から比較を行った。合わせて、希望する自治体職員を対象にABIT-CVの見学や訓練を行った。
結果と考察
第一の目的である説明会について,ABIT-CVの理解度は概ね良好であった一方、実務的理解を深めるための具体的情報や実践的研修へのニーズが示された。自由記述の分析から、導入における最大の課題はツール自体ではなく、制度的・運用的枠組みにあることが明らかとなった。特に、制度整備や関連制度との整合、研修体制の構築が重要であると認識されていた。また、現行の判定実務は研究班ガイドラインと十分に一致しておらず、知的機能評価の標準化の不統一や適応行動評価の未整備などの課題が確認された。
第二の目的である児童精神科医らによる療育手帳の判定基準の統一化や二軸判定の導入などによる課題については,従来判定との重症度閾値の差異や手帳判定に該当しない児者への支援,こどもや精神疾患の併存,就労場面における精神保健福祉手帳との関連について検討を行った。
第三の目的であるABIT-CVと児童相談所・知的障害者更生相談所等における療育手帳判定の結果の照合では,得点レベルと判定レベルの双方で知的機能および適応行動のいずれにおいても高い相関が認められた。判定の不一致事例を質的に分析した結果、その要因は主に①検査方法の差異、②検査結果の差異、③判定基準の差異に分類された。特に、判定機関における標準化されていない評価方法の使用や、特定の検査における系統的な得点バイアスなどが主たる要因として確認された。また、適応行動評価が十分に判定へ反映されていないケースや、国際的診断基準を満たさないにもかかわらず交付が行われているケースも認められ、判定基準の運用のばらつきが示唆された。自治体におけるABIT-CVの説明・研修・見学による意見交換においても、概ね肯定的な意見が聞かれた。一方で、ABIT-CVの実施に関する質問や、判定現場の職員でもわかりやすいマニュアル作成の要望など、全国の療育手帳判定の現場に普及するにあたっての課題も提示された。
第二の目的である児童精神科医らによる療育手帳の判定基準の統一化や二軸判定の導入などによる課題については,従来判定との重症度閾値の差異や手帳判定に該当しない児者への支援,こどもや精神疾患の併存,就労場面における精神保健福祉手帳との関連について検討を行った。
第三の目的であるABIT-CVと児童相談所・知的障害者更生相談所等における療育手帳判定の結果の照合では,得点レベルと判定レベルの双方で知的機能および適応行動のいずれにおいても高い相関が認められた。判定の不一致事例を質的に分析した結果、その要因は主に①検査方法の差異、②検査結果の差異、③判定基準の差異に分類された。特に、判定機関における標準化されていない評価方法の使用や、特定の検査における系統的な得点バイアスなどが主たる要因として確認された。また、適応行動評価が十分に判定へ反映されていないケースや、国際的診断基準を満たさないにもかかわらず交付が行われているケースも認められ、判定基準の運用のばらつきが示唆された。自治体におけるABIT-CVの説明・研修・見学による意見交換においても、概ね肯定的な意見が聞かれた。一方で、ABIT-CVの実施に関する質問や、判定現場の職員でもわかりやすいマニュアル作成の要望など、全国の療育手帳判定の現場に普及するにあたっての課題も提示された。
結論
ABIT-CVは現行の判定実務と高い整合性を有し、標準化された評価を可能とする有効なツールであることが示された。一方で、現行の判定実務には評価方法および判定基準の不統一が存在しており、判定の客観性・公平性の向上に向けて、評価手法および判定基準の標準化が重要であると考えられる。ABIT-CVの社会実装には、評価ツールの普及に加え、制度整備、制度間連携、研修体制の構築を含む包括的な政策対応が不可欠である。本研究の成果は、療育手帳制度の標準化および公平性の向上に資する基礎資料となることが期待される。一方で,療育手帳判定基準の統一化や二軸判定の導入には療育手帳判定現場や支援サービスの提供など,様々な課題が想定されうるため,導入に際しての配慮事項や移行期間の設定などを検討していく必要も示された。
公開日・更新日
公開日
2026-05-29
更新日
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