細胞遊走・ケモカインを標的として生体イメージングと数理シミュレーションを駆使した新しい関節リウマチ治療薬の開発

文献情報

文献番号
201023049A
報告書区分
総括
研究課題名
細胞遊走・ケモカインを標的として生体イメージングと数理シミュレーションを駆使した新しい関節リウマチ治療薬の開発
課題番号
H21-免疫・若手-010
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
石井 優(国立大学法人大阪大学 免疫学フロンティア研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 佐伯 行彦(独立行政法人国立病院機構大阪南医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
8,360,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、今後の展開が期待される「細胞遊走を標的とした創薬」に注目し、特にS1Pを主要な標的とした新しいRA治療薬の開発を目的としている。このために関節炎発症モデル動物を使った治療実験に加えて、本研究代表者が開発・使用している生体2光子励起イメージングを薬効評価系として活用して、より迅速かつ正確な評価が可能なシステムを構築し、またイメージングによって得られた詳細な時空間データを元に、RAにおける細胞遊走・ケモタキシスの制御機構に関する数理シミュレーターを作成し、「細胞遊走を標的とした創薬」のin Silicoでの薬効評価系の開発し、さらにこれらの新規の研究手法を用いた検索と合わせて、本研究成果をヒトRA治療へと応用するための臨床研究を連携機関とともに遂行する。
研究方法
①卵巣摘出による骨粗鬆症発症マウス(OVX)や、さらに関節炎を誘導したマウス(OVX+CAIA)を用いて、S1P受容体作動薬やS1Pのタイプ2受容体(S1P2)阻害剤の薬効評価検討。
②細胞遊走を標的とした生体2光子励起観察するシステム開発。
③新規RA治療薬候補化合物のスクリーニングのため、数理シミュレーターの開発。
④関節リウマチの病態における脂質メディエーターおよびケモカインの役割解明の臨床研究。
結果と考察
①卵巣摘出骨粗鬆症モデルマウスにおいて、S1P受容体作動薬のうち、FTY720は有意な骨吸収抑制効果が認められた。S1P2受容体阻害剤JTE013も有意な骨吸収抑制効果が認められた。OVX+CAIAモデルマウスでは、FTY720は、ステロイドとほぼ同等にCAIAによる関節の炎症を抑制することができた一方、OVXによる骨塩量低下をも抑制した。
②SEW2871およびFTY720の双方とも、破骨前駆細胞を含む単球系細胞の動きを大きく調節し、またS1P2アンタゴニストJTE013も効果があることが示された。 
③脂質メディエーターやケモカインによる細胞遊走を記述する予備的数理モデルの作成を完了した。
④ヒト末梢血細胞中ではCD11b+分画の破骨細胞前駆細胞を用いて、新規骨吸収抑制剤として注目しているS1P1アゴニストSEW2871およびFTY720の代謝活性型のFTY720-P、およびS1P2アンタゴニストJTE013について、その細胞遊走刺激効果について検討した。
結論
これらの結果から、S1P作用を標的とする破骨細胞前駆細胞の遊走制御は、新しいRA治療薬として極めて有望であることが示された。またそれら新規薬剤の薬効評価として生体イメージングやシミュレーションが重要なツールとなるため、今後の開発が必要不可欠である。

公開日・更新日

公開日
2011-09-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
201023049Z