患者末梢血を用いた重症薬疹モデルマウスの作成および発症機序の解明

文献情報

文献番号
201023048A
報告書区分
総括
研究課題名
患者末梢血を用いた重症薬疹モデルマウスの作成および発症機序の解明
課題番号
H21-免疫・若手-009
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
阿部 理一郎(北海道大学 北海道大学病院)
研究分担者(所属機関)
  • 尾崎倫孝(北海道大学 医学研究科)
  • 北市伸義(北海道大学 医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
8,555,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 重症薬疹(中毒性表皮壊死症、Stevens-Johnson症候群)は時に致死的疾患であり、加えて重篤な後遺症を残す。特にTENはいまだ致死率が20-30%と高率であり、SJSにおいては失明または重度の視力障害を残す。重症薬疹の発症機序についてはいまだ不明なことが多いが、それは適切なモデルマウスがないためである。一方、重症薬疹の臨床的問題点として、水疱・びらん、または粘膜疹出現以前では、通常の薬疹との鑑別が非常に困難であることが挙げられる。そのため適切な治療開始が遅れ、結果として重篤な後遺症を残し、致死率の上昇につながると考えられる。我々はこれまで、水疱・びらん、または粘膜疹出現前にsFasLは上昇し、その後速やかに低下することを報告してきた。本研究においてsFasL以外の早期診断マーカーも同定し、迅速診断テストを開発する。
研究方法
1)重症薬疹モデルマウスの作成
NOGマウス(週令6週)に、すでに治癒している重症薬疹患者の末梢血単核球を尾静脈から静注する。静注当日から連日原因薬剤を経口的にマウスに投与する。
2)重症薬疹早期診断のための血清マーカー検索
本年度においては、実際の臨床における有効性を検討するために多施設において、重症薬疹への進展が予想される薬疹患者、または通常の薬疹患者において測定を行う。
結果と考察
1)重症薬疹モデルマウスの作成
 臨床症状として薬剤投与10日目以降眼症状(結膜下出血、眼瞼炎症)が肉眼的に確認できたが、非投与群ではみられなかった。病理組織所見では原因薬剤投与群の眼部、特に結膜に著明な浮腫が認められた。さらにヒト疾患病態に近い重症薬疹モデルマウスの作成を行った。患者皮膚をNOGマウスに移植し生着後、患者末梢血単核球を静注し、経口的に原因薬剤を投与した。同マウスにおいて、移植部に一部淡褐部が見られた。組織学的にも同部位に表皮細胞のアポトーシスが確認できた。
2)重症薬疹早期診断のための血清マーカー検索
 我々は重症薬疹患者血清中のgranulysin濃度を測定したところ、水疱・びらん、または粘膜疹出現の4-2日前に80%の患者において有意に上昇し、その後速やかに減少傾向を示した。一方通常薬疹では94%の患者で正常域であった。以上から重症薬疹早期診断に有用であることを見出した。迅速判定テストの作成が可能と考え検討を開始している。
結論
 本研究2年目において、重症薬疹モデルマウスの作成に成功し、さらに早期診断判定テストの作成にも成功した。今後3年目で早期診断判定テストの多施設における有用性の検討と、モデルマウスを用いた重症薬疹病態解明に取り組む。

公開日・更新日

公開日
2011-09-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
201023048Z