精神保健医療福祉を取り巻く環境に係る中長期的な変化等を見据えた精神保健医療福祉提供体制の構築を推進するための研究

文献情報

文献番号
202517030A
報告書区分
総括
研究課題名
精神保健医療福祉を取り巻く環境に係る中長期的な変化等を見据えた精神保健医療福祉提供体制の構築を推進するための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
25GC1004
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
黒田 直明(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 公共精神健康医療研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 藤井 千代(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和7(2025)年度
研究終了予定年度
令和9(2027)年度
研究費
14,619,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2040年を見据えた新たな地域医療構想に精神医療を位置づけるという政策的転換を背景として、本研究班は令和7年4月に3年計画で発足した。令和7年12月の医療法改正により精神病床が地域医療構想の対象に組み込まれたものの、制度の具体的枠組みは法改正後に順次具体化される方針であったため、初年度は制度的前提条件が流動的な状況のもとでの研究となった。このような状況を踏まえ、本年度は現行データを活用した基盤的分析と概念整理に重点を置き、以下の3課題に取り組んだ。(1)精神病床の機能や区分に関する理論的・実証的整理(研究1)。(2)有床総合病院精神科(有床GHP)が地域において担う機能の実証的把握(研究2)。(3)病床機能報告制度への精神病床組み込みを想定した調査項目の予備的検討(研究3)。
研究方法
研究1では、DonabedianのStructure–Process–Outcome(SPO)モデルを概念的枠組みとして採用し、令和7年度630調査(回答率96.8%)の集計データを用いた記述的分析を行った。ストラクチャ指標として病棟入院料(20種類)、プロセス指標として隔離・身体的拘束の指示のある患者割合、アウトカム指標として在宅および施設退院の月間発生率と退院者実数を設定し、在院日数を3か月未満・3か月以上1年未満・1年以上の3区分で検討した。研究2では、全国10の有床GHPを2025年9月から11月に退院した患者(N=729)を対象に診療録調査を実施した。収集項目は診断・身体合併症の有無・入院目的・入院経路・有床GHP必要度・在院日数・退院後転帰等とし、記述統計・クロス集計・潜在クラス分析を行った。研究3では、「令和6年度病床機能報告 報告様式1【病院】」の基本票・施設票・病棟票を基礎資料とし、630調査との整合性の観点から項目ごとに追加・修正・継続収集の必要性を検討した。
結果と考察
研究1において、令和7年度630調査による精神病床入院者は247,808人(許可病床301,660床)であり、在院1年以上が58.5%を占めた。在院日数の経過に伴い機能指標は段階的に変化し、3か月未満では行動制限患者割合(15.6%)と退院発生率がともに高く、急性・高密度医療と早期退院支援が主たる機能として発現していた。3か月以上1年未満では退院発生率は低下しつつも在宅・施設退院が継続的に生じており、1年以上では著しく低下した。病棟ストラクチャ別には特定機能病院・急性期系病棟で退院発生率が高い一方、退院者の実数規模を支えているのは15対1入院基本料病棟を中心とする他の病棟であった。慢性期系病棟でも措置入院者の受け入れが行われているなど、精神病床の多機能性・複合性が示された。在院日数の3区分はSPOモデルの観点から機能変容を概ね反映していたが、単純な区分化には限界があり、病棟ストラクチャ・患者特性・地域資源との統合的な把握が必要と考えられた。研究2では、対象者の平均年齢52.73歳、GAF平均30.06点、身体合併症保有率61.2%であり、有床GHP必要度は代替困難群33.9%・相対的必要群29.4%・非必須群36.8%であった。潜在クラス分析により、①気分障害・神経症性障害を中心とし在院日数が比較的短い任意入院群、②身体合併症を高率に有する重症身体リスク管理群(代替困難群64.8%)、③GAFが最低で在院日数が最長の重症精神科群の3クラスが抽出された。有床GHPは精神身体合併症対応・地域生活継続支援・精神科救急・危機介入の3機能軸を担うことが示唆され、精神科病院からの紹介患者の85.9%に身体合併症が認められた第2クラスの存在は、有床GHPの後方支援的役割を示すものであった。研究3では、基本情報の多くは既存項目を維持可能と判断された一方、精神病床区分の追加、精神保健福祉法関連項目の大項目新設、mECT機器の追加、精神科入院料・精神科リハビリテーション関連項目の追加の必要性が示唆された。職員数等の収集負担が大きい項目は630調査での継続収集が現実的と考えられた。
結論
本年度の3研究は、新たな地域医療構想への精神医療の位置づけに向けた基盤的な知見の整理として位置づけられる。精神病床の機能は在院日数・病棟種別・地域特性の相互作用により規定される複合的なものであり、一次元的な区分のみによる把握には限界があることが示された。有床GHPが担う精神身体合併症対応機能は代替が困難な側面を有しており、地域医療構想における機能要件の検討においてこの点を考慮する必要性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2026-06-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-06-02
更新日
-

収支報告書

文献番号
202517030Z