文献情報
文献番号
202517028A
報告書区分
総括
研究課題名
精神科医療機関における包括的支援マネジメントの普及に関する実態把握、及び精神保健医療福祉の効果的な連携方策の検討に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
25GC1002
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
山口 創生(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所地域精神保健・法制度研究部)
研究分担者(所属機関)
- 木村 大(医療法人学而会 木村病院)
- 佐藤 さやか(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 地域・司法精神医療研究部)
- 藤井 千代(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和7(2025)年度
研究終了予定年度
令和9(2027)年度
研究費
6,155,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究班は、地域精神科医療における包括的支援マネジメントの推進・普及、ならびに療養生活継続支援加算を含む関連制度の改善に資する資料・データ・ガイドを作成することを目的とした。包括的支援マネジメントは、精神障害当事者が地域で安心して自分らしく生活するために、多職種によるアセスメント、プランニング、直接支援、多機関連携を通じて、医療・生活・家族・社会参加に関する多様なニーズに対応する支援技法である。療養生活継続支援加算は、の包括的支援マネジメントの実装を狙って創設された制度である。一方で、包括的支援マネジメントの普及には課題が残り、本研究は調査・レビュー・ガイド作成の取り組みを通して、目的を遂行する。
研究方法
本年度は、3つの分担班により研究を実施した。第1に、包括的支援マネジメントを提供し、療養生活継続支援加算を算定した経験のある医療機関のスタッフを対象として、支援状況や同加算の運用上の課題を把握するヒアリング調査を実施した。また、包括的支援マネジメントの利用者像を明らかにするため、複数の医療機関を対象とした後方視的横断調査を進めた。第2に、精神疾患・精神障害をもつ成人を対象として、ケースマネジメントにおける支援内容、支援主体、支援頻度、支援場所などを整理するスコーピングレビューを実施した。PsycINFO、MEDLINE、CINAHL、医中誌を用いて文献検索を行い、組み入れ基準に基づいてスクリーニングを進めた。第3に、既存のガイドおよび国内の関連知見を踏まえ、入院中から退院後の地域生活への移行を見据えた多職種・多機関による連携支援(連携支援)のガイドβ版を作成した。
結果と考察
ヒアリング調査は、6精神科病院および2精神科診療所の計8医療機関を対象に実施された。包括的支援マネジメントに関わるスタッフは、その意義を再入院の防止に限定せず、日常生活の自立、社会生活の継続、家族を含む支援者との連携強化、支援者の負担軽減にあると捉えていた。支援対象者は、日常生活の破綻の危機にある層から、一見自立しているものの社会的孤立や症状の波により継続的支援を要する層まで幅広かった。支援内容も、本人のニーズに応じて多岐にわたっていた。一方、療養生活継続支援加算については、月1回の算定という制限があり、急性増悪時や重層的課題への対応には限界があること、直接支援に加えて連絡調整、書類作成、家族を含む支援者への支援が十分に評価されていないこと、重篤な精神症状や生活課題を有する当事者、契約が難しい当事者では算定が困難であることが示された。後方視的横断調査では、6医療機関から708件のデータを回収し、欠損確認と最終データ回収を進めている。スコーピングレビューでは7,666編を抽出し、重複除去後の6,353編を一次スクリーニングの対象とした結果、695編が二次スクリーニングの対象となった。今後、フルテキスト・スクリーニング、データ抽出、質的統合を実施する予定である。実践ガイドの開発では、入院中の多職種による構造的かつ包括的なアセスメント、本人も参加するケア会議、退院後の生活に向けた治療計画と支援、退院後の支援者との情報共有、地域生活で技能を活用するための個別支援を含む「多職種・多機関による連携支援ガイドβ版」を作成した。
結論
本年度は、当初計画に沿って包括的支援マネジメントに関するヒアリング調査を完了し、後方視的横断調査、スコーピングレビュー、多職種・多機関による連携支援ガイドβ版の作成を進めた。ヒアリング調査からは、包括的支援マネジメントが多様な生活課題をもつ当事者の地域生活を支える重要な実践である一方、療養生活継続支援加算の算定要件や評価範囲には現場の実態とのずれがあることが示された。特に、重症度の高い当事者や複合的課題を有する当事者ほど支援ニーズが高いにもかかわらず、現行制度では十分に評価されにくい可能性がある。今後は、後方視的横断調査およびレビューを継続し、包括的支援マネジメントの対象者像、支援内容、制度上の課題をさらに整理する必要がある。また、得られた知見を踏まえて既存ガイドを更新し、外来における包括的支援マネジメントガイドβ版を作成することで、地域精神科医療における包括的かつ継続的な支援体制の整備に貢献することが期待される。
公開日・更新日
公開日
2026-06-02
更新日
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