薬物治療モニタリングによる造血幹細胞移植成績の向上に関する研究

文献情報

文献番号
201023047A
報告書区分
総括
研究課題名
薬物治療モニタリングによる造血幹細胞移植成績の向上に関する研究
課題番号
H20-免疫・若手-029
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
金子 久美(大島 久美)(自治医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 半下石 明(NTT東日本関東病院)
  • 森 有紀(国家公務員共済組合連合会 虎の門病院)
  • 山本 久史(国家公務員共済組合連合会 虎の門病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
同種造血幹細胞移植で使用する薬剤について、免疫抑制剤と抗菌剤を中心にして薬剤の血中濃度測定に基づく薬物治療モニタリングを行い、より安全で効果的な投与方法を検討し、移植成績の向上を目指す。
研究方法
下記のテーマを設定し、臨床研究計画書を作成して、倫理委員会の承認を経た上で、臨床研究を施行した。
① 目標血中濃度を500 ng/mlに設定したCsA持続静注の安全性と有効性の検討
② 目標血中濃度を15 ng/mlに設定したFK持続静注の安全性と有効性の検討
③ 持続静注から経口への投与経路変更時のCsA血中濃度の検討
④ 消化管粘膜障害時のイトラコナゾール内用液の血中濃度
⑤ アムビゾーム血中濃度モニタリング
⑥ ガンシクロビル血中濃度と有効性、安全性の検討
⑦ 発熱性好中球減少症に対するβラクタム系薬の3時間点滴療法
結果と考察
①は、目標血中濃度を高く設定してもコントロール可能で、低く設定していた過去の症例と比較し、安全性は同等でGVHD予防効果は有意に優れているという結果を、口頭と原著論文で発表した。②は、症例の蓄積中である。③は、12症例の検討を行い、経口薬としてネオーラルを使用した場合、1:2の用量変換比が適切であることを確認し、口頭および原著論文で発表した。④は、イトラコナゾール内用液200mg/日を用いて真菌感染症予防を行う症例について週1回イトラコナゾール血中濃度測定を行い、自家末梢血幹細胞移植症例では予防内服2週目の最も粘膜障害が著しいと考えられる時期に血中濃度が低くなり、好中球減少症時の侵襲性肺アスペルギルス症予防に十分でないレベルに至る症例が認められた。⑤は、L-AMBの血中濃度を測定し、その有効性・安全性と血中濃度との関連を検討する臨床研究を立案し、他施設共同研究として臨床研究を継続している。⑥は「投与後4時間値を用いたガンシクロビルの血中濃度下面積とサイトメガロウイルス感染症の予防効果の関係の検討」の臨床研究を施行中である。⑦は、好中球減少期間中の発熱に対するβラクタム系薬の3時間点滴療法の臨床効果を検討する際に、特にメロペメムとドリペネムの血中濃度測定を行い、期待したAUCが得られているかを検討する臨床研究を開始した。
結論
本研究により、個々の免疫抑制剤や抗菌剤の投与量・投与法が適正化され、GVHD発症率の低下や真菌感染症・ウィルス感染症の発症率の低下と感染症治療成績の改善が期待できるだけでなく、薬剤投与による毒性の軽減が可能となり、移植成績が向上すると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2011-09-30
更新日
-

文献情報

文献番号
201023047B
報告書区分
総合
研究課題名
薬物治療モニタリングによる造血幹細胞移植成績の向上に関する研究
課題番号
H20-免疫・若手-029
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
金子 久美(大島 久美)(自治医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 半下石 明(NTT東日本関東病院)
  • 伊豆津 宏二(NTT東日本関東病院)
  • 森 有紀(国家公務員共済組合連合会 虎の門病院)
  • 山本 久史(国家公務員共済組合連合会 虎の門病院)
  • 瀬尾 幸子(国家公務員共済組合連合会 虎の門病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
同種造血幹細胞移植で使用する薬剤について、免疫抑制剤と抗菌剤を中心にして薬剤の血中濃度測定に基づく薬物治療モニタリング(TDM)を行い、より安全で効果的な投与方法を検討し、移植成績の向上を目指す。
研究方法
下記のテーマを設定し、臨床研究計画書を作成して、倫理委員会の承認を経た上で、臨床研究を施行した。
① 目標血中濃度を500 ng/mlに設定したCsA持続静注の安全性と有効性の検討
② 目標血中濃度を15 ng/mlに設定したFK持続静注の安全性と有効性の検討
③ 持続静注から経口への投与経路変更時のCsA血中濃度の検討
④ 消化管粘膜障害時のイトラコナゾール内用液の血中濃度
⑤ アムビゾーム血中濃度モニタリング
⑥ ガンシクロビル血中濃度と有効性、安全性の検討
⑦ 発熱性好中球減少症に対するβラクタム系薬の3時間点滴療法
結果と考察
①と③は、CsAの目標血中濃度を高く設定することの妥当性と静注からネオーラルの経口投与に変更する際の1:2の用量変換比の妥当性を確認し、口頭と原著論文で発表した。②と⑤、⑥、⑦は、臨床研究計画を立案し、倫理委員会の審査後を経て、症例の蓄積中である。④はほぼ症例の蓄積を終了した。イトラコナゾール内用液200mg/日を用いて真菌感染症予防を行う症例について週1回イトラコナゾール血中濃度測定を行ったところ、自家末梢血幹細胞移植症例では予防内服2週目の最も粘膜障害が著しいと考えられる時期に血中濃度が低くなり、好中球減少症時の侵襲性肺アスペルギルス症予防に十分でないレベルに至る症例が認められるという結果であり、口頭と原著論文で発表予定である。
結論
3年間で、臨床研究計画の立案、症例の蓄積、十分な症例数が蓄積した研究についてはデータの解析と検討を行い、学会や原著論文での報告を行うとともに、さらなる検討へつなげることができた。そこに到達しなかったものも、数年以内の研究の完遂が可能な状態に至っている。臨床研究の結果は個々の免疫抑制剤や抗菌剤の投与量・投与法が適正化につながり、添付文書等への反映、移植領域における免疫抑制剤および感染症治療薬の投与法に関してのガイドライン策定に寄与する。これによって、移植成績を向上させるだけでなく、高額な免疫抑制剤および感染症治療薬の過剰投与の抑制から、医療費の増大抑制につながる可能性も考えられ、公益性の高い研究と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2011-09-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201023047C

成果

専門的・学術的観点からの成果
薬物治療モニタリングを通じた薬剤の適正使用の考え方は抗生剤の分野を中心として近年拡まってきているが、特に造血幹細胞移植領域では、世界的に十分なエビデンスは蓄積されていないのが現状であるため、我々の研究成果は口頭発表、原著論文において評価されている。また、造血幹細胞移植領域では様々な臓器障害や合併症が出現する上に毒性の強い薬剤の使用や適応外薬剤の使用が多いため、本班研究の結果は臓器障害時や合併症併発時の薬剤投与法や薬剤使用による副作用対策を考える上での基礎データとしても有用である。
臨床的観点からの成果
研究結果より、免疫抑制剤、抗生剤、抗真菌剤、抗ウィルス剤の血中薬物濃度測定に基づく投与量・投与方法の適正化がはかられる。対象症例ごとでの安全性と有効性を詳細に検討した臨床研究を施行したため、実際の臨床現場に取り入れやすい研究成果を得られている。免疫抑制剤や抗菌剤の投与量・投与法が適正化されることにより、GVHD発症率の低下や真菌感染症・ウィルス感染症の発症率の低下と感染症治療成績の改善が期待できるだけでなく、薬剤投与による毒性の軽減が可能になる。そして、移植成績の向上をもたらすと考えられる。
ガイドライン等の開発
詳細な薬剤の使用方法の検討により薬剤投与量や投与法の適正化がはかられると考えるため、特に免疫抑制剤、抗真菌剤では添付文書への反映を目指している。また、免疫抑制剤、抗生剤、抗真菌剤、抗ウィルス剤の投与量、投与方法については、造血細胞移植学会のGVHDや感染管理のガイドラインへの反映を目指しているが、現時点では達成されていない。
その他行政的観点からの成果
高額な免疫抑制剤および抗生剤、抗真菌剤、抗ウィルス剤等の感染症治療薬の投与量や投与方法の適正化は、過剰投与の抑制や副作用の発現抑制の観点から、医療費の増大抑制につながる可能性も考えられ、公益性の高い研究であると考えられる。
その他のインパクト
マスコミで取り上げられたり、公開シンポジウムを開催したりすることはかなわなかったが、全国骨髄バンク推進連絡協議会の講演会で、本班研究の成果の一部を紹介することができ、多くの患者・家族に興味を持っていただくことができた。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
43件
その他論文(和文)
9件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
9件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kimura S, Oshima K, Okuda S et al.
Pharmacokinetics of CsA during the switch from continuous intravenous infusion to oral administration after allogeneic hematopoietic stem cell transplantation.
Bone Marrow Transplantion , 45 (6) , 1088-1094  (2010)
原著論文2
Oshima K, Sato M, Terasako K et al.
Target blood concentrations of CYA and tacrolimus in randomized controlled trials for the prevention of acute GVHD after hematopoietic SCT.
Bone Marrow Transplantion , 45 (4) , 781-782  (2010)
原著論文3
Oshima K, Kanda Y, Nakasone H et al.
Decreased incidence of acute graft-versus-host disease by continuous infusion of cyclosporine with a higher target blood level.
American Journal of Hematology , 83 (3) , 226-232  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-04-27
更新日
2015-06-29

収支報告書

文献番号
201023047Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,000,000円
(2)補助金確定額
2,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 0円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 0円
間接経費 0円
合計 0円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-