気管支喘息の診断、治療判定のための簡便な指標としての簡易な気道炎症マーカーの検討 -呼気NO測定オフライン法のかかりつけ医での応用の可能性-

文献情報

文献番号
201023044A
報告書区分
総括
研究課題名
気管支喘息の診断、治療判定のための簡便な指標としての簡易な気道炎症マーカーの検討 -呼気NO測定オフライン法のかかりつけ医での応用の可能性-
課題番号
H20-免疫・若手-026
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
粒来 崇博(独立行政法人国立病院機構相模原病院 アレルギー科)
研究分担者(所属機関)
  • 熱田 了(順天堂大学医学部呼吸器内科)
  • 石塚 全(群馬大学医学系研究科(呼吸器・アレルギー内科))
  • 佐藤 俊(福島県立医科大学医学部呼吸器内科)
  • 白井 敏博(静岡県立総合病院呼吸器科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
6,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
気管支喘息は慢性の好酸球性炎症が惹起する発作性可逆性の気道閉塞を呈する疾患である。診断および治療評価のために簡便かつ客観的な指標が望まれており、好酸球性気道炎症の証明法として、非侵襲的な呼気一酸化窒素濃度(FeNO)測定が期待されている。プライマリーケア医におけるスクリーニングや疫学的な調査への応用可能な方法論として、オフライン法が挙げられ、拠点施設に共有の分析器を置き各診療施設で回収した呼気を運搬し測定することでより安価に測定しうる。しかし、現時点ではオフライン法の報告に乏しい。そこで、本研究班では気管支喘息患者においてオフライン法によるeNO測定を検討、診療応用の可能性について模索している。今年度は最終年度として、「呼気NO測定オフライン法のかかりつけ医での応用の可能性」を立証する。
研究方法
研究協力施設と関連するかかりつけ医においてオフライン法を配置し、院外の研究協力施設12施設において呼気回収し搬送、FeNOの測定値が院内のものと同一かどうかを調査した。
結果と考察
関連施設より計892症例が集積された。気管支喘息(未治療/治療中)、非喘息性慢性咳嗽、健常者の4群に分類し検討したところ、喘息患者群は非喘息に比較し有意に高値であり(p<0.001)、未治療喘息の検出カットオフは39.5ppbと算定された。この結果は院内で測定した結果とほぼ一致しており、当研究班の提唱するオフライン法で回収→冷蔵搬送→中核施設で測定という方法論は妥当な測定値を検出し十分実用可能であると証明された。また、萌芽的研究として大学生の健康診断に平行して測定したところ、ECRHS質問表により検出された気管支喘息症例の呼気NOは高値であった。また、近年登場した携帯型測定器の測定値と比較、ある程度の互換性を認めた。
結論
我々の検討により、SIEVERS法、およびCEIS法の2法はFeNO評価法として、安定して評価できること、遠隔地測定が可能であること、一都四県にまたがって同じ方法論を用いて同様の値を得ることが判明した。これらの結果により、かかりつけ医で応用していくための基本的条件がそろい、プライマリーケアでの応用が十分可能であると考えられた。本研究班の目的としては十分達成されたが、今後臨床応用に向けていくつかの解決すべき課題、よりFeNOを活用できる分野を見出した。

公開日・更新日

公開日
2011-09-30
更新日
-

文献情報

文献番号
201023044B
報告書区分
総合
研究課題名
気管支喘息の診断、治療判定のための簡便な指標としての簡易な気道炎症マーカーの検討 -呼気NO測定オフライン法のかかりつけ医での応用の可能性-
課題番号
H20-免疫・若手-026
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
粒来 崇博(独立行政法人国立病院機構相模原病院 アレルギー科)
研究分担者(所属機関)
  • 熱田 了(順天堂大学医学部呼吸器内科 )
  • 石塚 全(群馬大学医学系研究科)
  • 斎藤 純平(福島県立医科大学医学部呼吸器内科)
  • 佐藤 俊(福島県立医科大学医学部呼吸器内科)
  • 白井 敏博(静岡県立総合病院呼吸器科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
気管支喘息は慢性の好酸球性炎症が惹起する発作性可逆性の気道閉塞を呈する疾患である。診断および治療評価のために簡便かつ客観的な指標が望まれており、好酸球性気道炎症の証明法として、非侵襲的な呼気一酸化窒素濃度(FeNO)測定が期待されている。プライマリーケア医におけるスクリーニングや疫学的な調査への応用可能な方法論として、オフライン法が挙げられ、拠点施設に共有の分析器を置き各診療施設で回収した呼気を運搬し測定することでより安価に測定しうる。しかし、現時点ではオフライン法の報告に乏しいため、オフライン法を応用した呼気NO測定のかかりつけ医での臨床応用を模索する。
研究方法
測定方法はすでに確立されているSIEVERS bag collection kitを用いたオフライン法(SIVERS法)と、本邦で開発され応用が期待されているオフライン法(環境情報科学センター開発のCEIS法)の二法を用いる。まず初年度、次年度に気管支喘息患者の診断における有用性を検討するため、NOの測定値を盲検として専門医による気管支喘息診断を行い、呼吸機能、好酸球(末梢血、喀痰)、気道過敏性と比較しつつ共通したカットオフ値を設定し、治療中の気管支喘息患者において臨床的重症度、発作の頻度とNOの比較を行う。同時に各施設において呼気NOの臨床応用における課題を検証する。
結果と考察
気管支喘息患者においてオフライン法によるeNO測定を検討、診療応用の可能性について模索し、SIEVERS法、およびCEIS法の2法はFeNO評価法として、安定して評価可能であること、気道過敏性を予測しうること、運動誘発性喘息の検出に有用であること、COPDの解析に有用であること、白血球除去療法の効果判定に有用であることを見出した。 さらに、適切な遠隔地での測定法の条件設定を見出し、かかりつけ診療医と協力し892症例を抽出、適切な測定値を得ることができることを示した。
結論
我々の検討により、オフライン法を用いてかかりつけ診療医で測定が可能であること、FeNO測定の気管支喘息評価の妥当性、臨床上の問題について適切な評価を得ることができることを明確に示すことができた。以上より、オフラインキットの妥当性、有用性が明確になり、かかりつけ医での測定による臨床応用は十分実現可能なものであるとの結論を得た。

公開日・更新日

公開日
2011-09-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201023044C

成果

専門的・学術的観点からの成果
CEIS法を用いること、4℃7日間冷蔵保管をすることで、大幅なコストダウンと汎用性の向上が可能であった。また、喘息診療において、診断、慢性咳嗽診断、気道過敏性との関連、ACTとの関連、COPDとの鑑別、交絡因子の調査による判定精度の向上、治療経過における変化、FeNO高値症例の中の非喘息の割合、安定性と安全性、といった分野において当研究班で検証、妥当性をみいだした。実地医療において約900例において測定が可能であり、また測定値は院内で回収する場合と同等であったことが証明された。
臨床的観点からの成果
気管支喘息は有病率が高く、その診療を専門医のみで行うことは現実的に不可能である。かかりつけ医での喘息診療の底上げが不可欠であるが、明確な治療指標が存在し得なかったため現在でも全ての患者が適切な治療を受けているとはいえない。FeNOは喘息の根本的病態である慢性好酸球性気道炎症の指標として長年注目され、学問的には確立されていながら、高コストのために普及しなかった背景がある。我々のこうした試みは安価にFeNOをかかりつけ医で測定することが可能であることを明確に示した。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
特になし
その他のインパクト
Medical tribune(2009年2月)
Japan Medicine Monthly(2010 3月号): Monthly Clinical News

発表件数

原著論文(和文)
15件
原著論文(英文等)
59件
その他論文(和文)
79件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
76件
学会発表(国際学会等)
13件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
粒来崇博 他
成人気管支喘息患者に置ける簡便な呼気中一酸化窒素濃度測定法―オフライン法2法とNIOXminoの比較-
アレルギー , 59 (8) , 956-964  (2010)
原著論文2
粒来崇博 他
成人気管支喘息患者における治療効果と呼気中一酸化窒素濃度(FeNO:The Fraction of Exhaled Nitric Oxide)の変化
アレルギー , 57 (12) , 1293-1301  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-06-29
更新日
2015-08-26

収支報告書

文献番号
201023044Z