高次脳機能障害の診療に係る実態把握と課題の検討のための研究

文献情報

文献番号
202517020A
報告書区分
総括
研究課題名
高次脳機能障害の診療に係る実態把握と課題の検討のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24GC1010
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
今橋 久美子(藤田 久美子)(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 浦上 裕子(国立障害者リハビリテーションセンター病院)
  • 立石 博章(国立障害者リハビリテーションセンター 高次脳機能障害情報・支援センター)
  • 向野 雅彦(国立大学法人北海道大学 北海道大学病院リハビリテーション科)
  • 藤盛 寿一(東北医科薬科大学 医学部脳神経内科学)
  • 渡邉 修(東京都立大学 人間健康科学研究科)
  • 間瀬 光人(名古屋市立大学大学院 医学研究科 脳神経外科学)
  • 小林 康孝(福井医療大学 大学院保健医療学研究科)
  • 土岐 明子(大阪急性期・総合医療センター リハビリテーション科)
  • 平岡 崇(川崎医科大学  リハビリテーション医学)
  • 高木 康志(徳島大学 医歯薬学研究部脳神経外科学分野)
  • 佐伯 覚(産業医科大学 医学部 リハビリテーション医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
9,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高次脳機能障害は、頭部外傷や脳血管疾患等により発症し、記憶障害・注意障害・遂行機能障害・社会的行動障害など多様な症状を呈する。しかし、医療機関や社会における認知が十分でないため、早期診断につながらない、あるいは診断後の支援が途絶える事例が少なくない。特に、急性期から生活期への移行時に情報提供が不足し、支援開始が遅れる可能性が指摘されている。本研究は、全国の支援拠点機関等を対象に後方視的調査を行い、①診断・支援の実態、②支援途絶の要因、③支援遅延が生活に及ぼす影響を明らかにし、今後の施策改善に資するエビデンスを得ることを目的とした。
研究方法
全国の高次脳機能障害支援拠点機関等約120か所を対象に、令和5年度の来談者のうち高次脳機能障害の診断を受けた者について、専門職が記録に基づき質問紙に回答した。調査項目は、発症時年齢、原因傷病、受療歴、退院時の情報提供、診断までの期間、診断した診療科、相談機関の利用状況、支援途絶の時期・理由、現在の生活状況・課題など多岐にわたった。データ収集は全都道府県を10ブロックに分け、研究分担者がとりまとめを行った。倫理審査は国立障害者リハビリテーションセンター倫理審査委員会の承認を得て実施した。
結果と考察
(1)診断・相談につながるまでの実態
1,271例のうち、発症から診断可能な医療機関への初診までの期間は、約75%が2年以内であったが、最長50年以上の例もみられた。ロジスティック回帰分析では、退院時に情報提供がない、発症時年齢が低い、原因傷病が頭部外傷・脳腫瘍であることが、初診まで2年以上かかる要因として有意であった。特に急性期病院での情報提供率は22%にとどまり、回復期病院でも6割にとどまった。退院時の情報提供不足が、支援開始の遅れに直結していることが明らかとなった。
(2)支援途絶の構造
支援が途絶えた時期として最も多かったのは急性期治療終了後(28%)であり、回復期終了後(16%)が続いた。途絶の理由は、障害の指摘を受けていない(35%)、本人が必要性を感じていない(15%)、問題が表面化していない(7%)などであった。これらは、医療機関での説明不足や、症状の特性上、本人・家族が障害を認識しにくいことが背景にあると考えられる。
(3)支援途絶が生活に及ぼす影響
支援途絶の影響として、就労困難(52%)、家族関係の悪化(17%)、社会参加機会の損失(12%)など、生活全般に深刻な影響が確認された。また、現在の課題として「就労できない・続かない」(50%)、「独居困難」(36%)、「社会的行動障害」(33%)などが多く、支援の遅れが長期的な不利益につながっていた。
(4)診断・支援体制の課題
診断した診療科はリハビリテーション科(40%)、脳神経外科(27%)が中心であったが、精神科・心療内科、小児科、循環器内科など多岐にわたっていた。診断書を記載した診療科も同様であり、診断・支援の入口が分散していることが確認された。また、頭部外傷・脳腫瘍では診断につながりにくく、脳血管疾患に比べて地域連携パス等の仕組みが弱いことが影響していると考えられる。小児例では、学校生活に復帰した後に問題が顕在化することが多く、教育機関との連携不足が診断遅延の一因となっていた。
結論
本研究により、高次脳機能障害の診断・支援の実態と、支援途絶を生む構造的課題が全国規模で明らかとなった。特に、急性期・回復期から生活期への移行時の情報提供不足、原因傷病や年齢による診断格差、支援途絶が生活全般に及ぼす深刻な影響、が確認された。これらの課題は、個々の医療機関の努力だけでは解決が難しく、退院時情報提供の標準化、診断・連携へのインセンティブ付与、教育機関との協働体制の構築、地域ハブ機関の明確化など、制度的整備が不可欠である。本研究で得られたエビデンスは、早期診断・早期支援を実現し、支援途絶を防ぐための政策立案に資する基盤となるものであり、今後の施策改善に向けた重要な知見を提供する。

公開日・更新日

公開日
2026-06-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-06-02
更新日
-

文献情報

文献番号
202517020B
報告書区分
総合
研究課題名
高次脳機能障害の診療に係る実態把握と課題の検討のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24GC1010
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
今橋 久美子(藤田 久美子)(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 浦上 裕子(国立障害者リハビリテーションセンター 病院)
  • 立石 博章(国立障害者リハビリテーションセンター 高次脳機能障害情報・支援センター)
  • 向野 雅彦(国立大学法人北海道大学 北海道大学病院リハビリテーション科)
  • 藤盛 寿一(東北医科薬科大学 医学部脳神経内科学)
  • 渡邉 修(東京都立大学 人間健康科学研究科)
  • 間瀬 光人(名古屋市立大学大学院 医学研究科 脳神経外科学)
  • 小林 康孝(福井医療大学 大学院保健医療学研究科)
  • 土岐 明子(大阪急性期・総合医療センター リハビリテーション科)
  • 平岡 崇(川崎医科大学  リハビリテーション医学)
  • 高木 康志(徳島大学 医歯薬学研究部脳神経外科学分野)
  • 佐伯 覚(産業医科大学 医学部 リハビリテーション医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高次脳機能障害は、頭部外傷や脳血管疾患等により発症し、記憶障害・注意障害・遂行機能障害・社会的行動障害など多様な症状を呈する。しかし、医療機関や社会における認知が十分でないため、早期診断につながらない、あるいは診断後の支援が途絶える事例が少なくない。特に、急性期から生活期への移行時に情報提供が不足し、支援開始が遅れる可能性が指摘されている。本研究は、全国の支援拠点機関等を対象に後方視的調査を行い、①診断・支援の実態、②支援途絶の要因、③支援遅延が生活に及ぼす影響を明らかにし、今後の施策改善に資するエビデンスを得ることを目的とした。
研究方法
全国の高次脳機能障害支援拠点機関等約120か所を対象に、令和5年度の来談者のうち高次脳機能障害の診断を受けた者について、専門職が記録に基づき質問紙に回答した。調査項目は、発症時年齢、原因傷病、受療歴、退院時の情報提供、診断までの期間、診断した診療科、相談機関の利用状況、支援途絶の時期・理由、現在の生活状況・課題など多岐にわたった。データ収集は全都道府県を10ブロックに分け、研究分担者がとりまとめを行った。倫理審査は国立障害者リハビリテーションセンター倫理審査委員会の承認を得て実施した。
結果と考察
(1)診断・相談につながるまでの実態
1,271例のうち、発症から診断可能な医療機関への初診までの期間は、約75%が2年以内であったが、最長50年以上の例もみられた。ロジスティック回帰分析では、退院時に情報提供がない、発症時年齢が低い、原因傷病が頭部外傷・脳腫瘍であることが、初診まで2年以上かかる要因として有意であった。特に急性期病院での情報提供率は22%にとどまり、回復期病院でも6割にとどまった。退院時の情報提供不足が、支援開始の遅れに直結していることが明らかとなった。
(2)支援途絶の構造
支援が途絶えた時期として最も多かったのは急性期治療終了後(28%)であり、回復期終了後(16%)が続いた。途絶の理由は、障害の指摘を受けていない(35%)、本人が必要性を感じていない(15%)、問題が表面化していない(7%)などであった。これらは、医療機関での説明不足や、症状の特性上、本人・家族が障害を認識しにくいことが背景にあると考えられる。
(3)支援途絶が生活に及ぼす影響
支援途絶の影響として、就労困難(52%)、家族関係の悪化(17%)、社会参加機会の損失(12%)など、生活全般に深刻な影響が確認された。また、現在の課題として「就労できない・続かない」(50%)、「独居困難」(36%)、「社会的行動障害」(33%)などが多く、支援の遅れが長期的な不利益につながっていた。
(4)診断・支援体制の課題
診断した診療科はリハビリテーション科(40%)、脳神経外科(27%)が中心であったが、精神科・心療内科、小児科、循環器内科など多岐にわたっていた。診断書を記載した診療科も同様であり、診断・支援の入口が分散していることが確認された。また、頭部外傷・脳腫瘍では診断につながりにくく、脳血管疾患に比べて地域連携パス等の仕組みが弱いことが影響していると考えられる。小児例では、学校生活に復帰した後に問題が顕在化することが多く、教育機関との連携不足が診断遅延の一因となっていた。
結論
本研究により、高次脳機能障害の診断・支援の実態と、支援途絶を生む構造的課題が全国規模で明らかとなった。特に、急性期・回復期から生活期への移行時の情報提供不足、原因傷病や年齢による診断格差、支援途絶が生活全般に及ぼす深刻な影響、が確認された。これらの課題は、個々の医療機関の努力だけでは解決が難しく、退院時情報提供の標準化、診断・連携へのインセンティブ付与、教育機関との協働体制の構築、地域ハブ機関の明確化など、制度的整備が不可欠である。本研究で得られたエビデンスは、早期診断・早期支援を実現し、支援途絶を防ぐための政策立案に資する基盤となるものであり、今後の施策改善に向けた重要な知見を提供する。

公開日・更新日

公開日
2026-06-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-06-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202517020C

収支報告書

文献番号
202517020Z