食物アレルギーにおける経口免疫療法の確立と治癒メカニズムの解明に関する研究

文献情報

文献番号
201023038A
報告書区分
総括
研究課題名
食物アレルギーにおける経口免疫療法の確立と治癒メカニズムの解明に関する研究
課題番号
H22-免疫・一般-007
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
岩田 力(東京家政大学 家政学部児童学科)
研究分担者(所属機関)
  • 竹森 利忠(理化学研究所 免疫・アレルギー科学総合研究センター)
  • 荒川 浩一(群馬大学大学院医学系 研究科小児科学)
  • 下条 直樹(千葉大学大学院 医学研究院小児病態学)
  • 藤澤 隆夫(国立病院機構三重病院 臨床研究部)
  • 吉原 重美(獨協医科大学医学部 小児科)
  • 北林 耐(昭和大学医学部 小児科)
  • 五十嵐 隆(東京大学医学部 小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
35,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
適切な根本療法が確立されていない食物アレルギーでは、長期にわたる厳格な食物除去によって患者とその家族は生活の質の著しい低下を余儀なくされている。本研究では我が国において初となる多施設共同ランダム化比較試験により、新規根本的治療法としての経口免疫療法の確立を目指すとともに、多種類の免疫学的パラメーターを測定し、患者背景との関連解析から、食物アレルギーの発症・治癒・予後に関わる因子や経口免疫寛容機構の解明を企図した。
研究方法
鶏卵アレルギーに対する経口免疫療法を、ランダム化比較試験により実施した。主要評価項目は登録3ヶ月後の経口負荷試験閾値とした。倫理的観点より、未治療の対照群はdelayed controlとして、3ヶ月時点での評価後から同様に治療を行った。目標症例数は治療群20例、対照群20例の計40例と設定した。
結果と考察
45例が登録され、23例が治療群、22例が対照群に無作為割り付けされた。3ヶ月後の経口負荷試験誘発閾値は、対照群では割付け前に比べ変化がなかったのに対して、治療群では有意に上昇した。この治療効果に一致して、鶏卵抗原に対する特異IgG抗体、特異IgG4抗体、特異IgA抗体が、治療群でのみ有意に上昇する一方、特異IgE抗体と好塩基球活性化は治療群で有意に低下した。さらに、卵白抗原液を用いた皮膚プリックテストの反応も治療群で有意に低下した。全体としては、3ヶ月遅れて治療に入った対照群を含め、免疫療法を行った45例中40例(88.9%)が維持期に到達し、すべて鶏卵1個以上の摂取が可能となった。50?70%とされている諸外国の報告よりも高い治療成績と考えられた。
一方、副反応による試験中止は5例で、内訳はアナフィラキシーショック1例、アレルギー性胃腸炎2例、増量困難による脱落2例であった。アナフィラキシーショック発生時は、直ちに外部モニタリング委員会へ報告するとともに、再発防止のための増量法プロトコール一部改訂を行い、安全確保に努めた。アレルギー性胃腸炎は好酸球性の慢性炎症として他の即時型反応とは成因が異なる可能性が考えられたが、超音波エコー法による画像診断が早期発見に有用であることを見いだした。今後、重篤な副反応発生を未然に防ぐため、さらなる予測因子の同定を進める予定である。
結論
わが国初のランダム化比較試験により、鶏卵アレルギーに対する急速経口免疫療法の有効性が明確に証明された。

公開日・更新日

公開日
2011-09-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
201023038Z