障害者ピアサポート研修の実施内容の検証及び更なる効果的な実施方法の確立に向けた研究

文献情報

文献番号
202517014A
報告書区分
総括
研究課題名
障害者ピアサポート研修の実施内容の検証及び更なる効果的な実施方法の確立に向けた研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24GC1004
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
岩崎 香(早稲田大学 人間科学学術院)
研究分担者(所属機関)
  • 山口 創生(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所地域精神保健・法制度研究部)
  • 宮本 有紀(東京大学大学院 医学系研究科 健康科学・看護学専攻 精神看護学分野)
  • 森地 徹(筑波大学人間系障害科学域)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
5,980,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、自治体が障害者ピアサポート研修事業をより効果的に実施するために、研修カリキュラムの改善点をとりまとめ、提案を行うことを主な目的としている。障害福祉サービス事業等において、障害当事者が職員として雇用され、地域移行や地域生活の支援にかかわることは、当事者主体の実践を促進するものだと捉えられるが、令和2年に始まった研修も5年以上が経過したところで、カリキュラムの見直しが求められている。特にフォローアップ研修に関しては、現在ピアサポート体制加算、ピアサポート実施加算の対象となっておらず、その位置づけについても議論が必要とされている。
また、障害者ピアサポート研修はすべての障害者を対象として実施されているわけであるが、障害福祉の中でも支援対象者が多い知的障害領域のピアサポートについては、これまで十分な検討が行われてこなかった経緯がある。本研究は障害者ピアサポート研修の見直しに加え、知的障害領域におけるピアサポートに関する検討を含み、今後の障害ピアサポート研修事業の推進に寄与することを目的としている
研究方法
2年目は、障害者ピアサポート研修を実施している自治体で、講師・ファシリテーターとして活躍されている方を対象にアンケート調査を実施し、分析を行った。その結果と昨年度実施した自治体を対象としたアンケート結果を踏まえ、これまで障害者ピアサポート研修事業に関わってきた障害当事者、専門職、研究者等の研究協力者で基礎、専門、フォローアップ研修の見直しについて検討を行なった。
また、これまで各障害領域の中で十分な検討が行われてこなかった知的障害については、昨年に引き続き、9ヶ所で「本人活動」を行ってきた77名にインタビューを実施した。

結果と考察
令和7年度については、障害者ピアサポート研修事業に講師・ファシリテーターとして参加しているピアサポーター及び専門職を対象として実施したアンケートの分析を行った。研修を行う上での基盤的環境整備と合理的配慮、演習を円滑に進めるための工夫、基礎研修、専門研修、フォローアップ研修への評価などに関する回答から、受講者同士が支え合える場づくりや、障害特性に応じた理解促進などに期待が持たれており、単なるカリキュラムの見直しに留まらず、講師・ファシリテーターの継続的な育成や、多様な障害特性に応じた柔軟な研修運営体制(合理的配慮の標準化や教材の整備など)を構築していくことが求められていることが示された。
基礎研修、専門研修の見直しについては、昨年度実施した自治体を対象としたアンケート結果と、今年度実施した講師・ファシリテーターへのアンケート結果、障害者ピアサポート研修に長年かかわってきた研究協力者からの意見聴取を踏まえ、シラバス、テキストの改訂案を提示するに至った。また、研修受講者への合理的配慮の一環として「わかりやすい版」のテキストと、テキストファイルの作成も行なった。
フォローアップ研修についても、2つのアンケート結果と研究協力者への意見聴取を行い、シラバス案を作成することができた。フォローアップ研修は、単なる追加の研修ではなく、ピアサポーターの専門性を担保し高め、質の高い活動を継続していくための重要な仕組みとして位置づけられる。しかしながら、報酬上の評価と結びついてないがゆえに、自治体によって実施状況、内容にもばらつきがある。そうした実情を踏まえ、研修開催地に応じて演習内容を柔軟に選択できるような工夫も盛り込んだ。
知的障害領域のピアサポートの有効性に関する分担班では、昨年度に引き続き、全国で展開されてきた「本人活動」に関わってきたピアサポーター77名のインタビュー調査を実施し、本人活動の有効性について検討した。その結果、知的障害領域におけるピアサポートの有効性とは、個別的な相談・助言の機能だけでなく、「主体的な集団活動(本人活動)の場」と「相互に支え合うピアの関係性」の双方が相乗的に作用することで発揮されると考えられた。知的障害領域のピアサポーターの雇用実績やピアサポート配置加算等の取得が少ないと言われている現状があるが、知的障害領域のピアサポーターが活躍していくためには、個別の相談場面へのピアの配置のみならず、これまで各地域で任意に取り組まれてきた「本人活動」の基盤を正当に評価し、既存の事業所や地域生活支援事業等と有機的に結合させていくシステム構築の必要性が示唆された。
結論
本研究では、障害者ピアサポート研修事業の検証を行い、カリキュラムの見直しを行った。また、知的障害領域で展開されてきた「本人活動」に焦点化し、ピアサポート活動の意義についての検討を行なったわけであるが、この間の研究プロセスは、障害当事者を中心に据えた今後の障害福祉領域におけるピアサポートの促進及び、障害福祉サービスの質の向上に貢献できると考える。

公開日・更新日

公開日
2026-06-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2026-06-01
更新日
-

文献情報

文献番号
202517014B
報告書区分
総合
研究課題名
障害者ピアサポート研修の実施内容の検証及び更なる効果的な実施方法の確立に向けた研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24GC1004
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
岩崎 香(早稲田大学 人間科学学術院)
研究分担者(所属機関)
  • 山口 創生(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所地域精神保健・法制度研究部)
  • 宮本 有紀(東京大学大学院 医学系研究科 健康科学・看護学専攻 精神看護学分野)
  • 森地 徹(筑波大学人間系障害科学域)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、自治体が障害者ピアサポート研修事業をより効果的に実施するために、研修カリキュラムの改善点をとりまとめ、提案を行うことを主な目的としている。障害福祉サービス事業等において障害当事者が職員として雇用され、地域移行や地域生活の支援にかかわることは、当事者主体の実践を促進するものであるが、多くの課題が残されている。障害者ピアサポート研修事業も開始から5年以上が経過し、基礎研修、専門研修、フォローアップ研修それぞれの研修カリキュラムの見直しが求められている。また、支援対象者が多い知的障害領域のピアサポートについては、これまで十分な検討が行われてこなかった経緯がある。本研究は、障害者ピアサポート研修の見直しに加え、知的障害領域におけるピアサポートに関する検討を含み、今後の障害ピアサポート研修事業の推進に寄与することを目的とした。
研究方法
障害者ピアサポート研修事業の検証として、障害者ピアサポート研修事業を実施している都道府県及び政令指定都市を対象としたアンケート、及び研修事業に講師・ファシリテーターとしてかかわっている方々を対象としたアンケートを実施した。それらの結果を踏まえ、身体障害領域、精神障害領域、高次脳機能障害領域、難病領域の障害当事者や支援専門職、研究者等からなる研究協力者に基礎研修、専門研修、フォローアップ研修に関する意見聴取を行い、見直しについての検討を行った。知的障害領域におけるピアサポートの検討に関しては、知的障害領域で本人活動のリーダーを務めてきた人たち及びその支援者に協力を得て、2年間にわたり全国16カ所で計128名を対象としたグループインタビューを実施し、質的分析を行った。
結果と考察
2年間にわたり実施したアンケート調査結果を踏まえ、多障害領域の当事者・専門職・研究者等への意見聴取を行い、基礎研修・専門研修・フォローアップ研修のカリキュラムを大幅に見直した。具体的には基礎研修・専門研修については、基礎研修は経験を活かして働きたいがすぐにはそこに至らないという方々にも参加してもらえるような入門編的な研修として内容を見直した。そして、基礎研修・専門研修の双方への参加を必須とする参加募集方法以外に、基礎研修のみの受講も認める方向を打ち出すとともに、精神障害以外の障害領域にも伝わるよう、わかりやすい表現への改訂を行った。専門研修ではピアサポーターと事業所職員が分かれて参加する講講座4つを廃止し、全員が同じ講座を受講する方向とした。新たに「労働環境と合理的配慮」という講座を設置し、労働者の権利や環境整備を明示した。「セルフマネジメントとバウンダリー」を分離し、基礎研修から専門研修に移した「倫理」を加え、「バウンダリーと倫理」と「セルフマネジメント」という2つの講座とした。倫理については、これまでの守秘義務中心から「専門性を担保する土台としての倫理」へと位置付けを転換した。フォローアップ研修については、実践経験を振り返り継続的学習を支える仕組みとして再検討し、研修シラバス案の作成にあたっては、特に、フォローアップ研修がピアサポーターの専門性を担保し高めると共に、質の高いピアサポート活動が継続されていくための仕組みとなることを意識した検討を行なった。
さらに、これまで十分な検討が行われてこなかった知的障害領域のピアサポートについて、2カ年にわたり「本人活動」に参加する知的障害者へのインタビュー調査(全国延べ16カ所、計128名)を実施し、結果から、「人間関係が広がる」「自分を変えることができる」「会の活動を行うことができる」「色々な人に支えてもらえる」の4カテゴリーが抽出され、同領域におけるピアサポート展開の基礎となる知見を得た。これらの内容が知的障害領域においてピアサポートを展開する意義につながると考えられ、今後、知的障害領域においてピアサポートが展開される中で検証を行う必要がある。
結論
本研究では、検証のためのアンケート調査を実施し、その結果を踏まえ、多領域にまたがるピアサポーター、専門職、研究者等の研究協力者による議論により、これまで実施してきた障害者ピアサポート研修事業のカリキュラムの見直しを行った。その成果として、基礎研修、専門研修、フォローアップ研修のシラバス案、基礎研修・専門研修の標準テキスト案、ルビ付きわかりやすい版、視覚障害者用のテキストファイルを完成させることができた。知的障害領域におけるピアサポートの検証については、ピアサポート活動と類似する活動である「本人活動」を取り上げ、有効性の検討を行なった。各分担研究班の研究結果が今後も継続して実施されていく障害者ピアサポート研修事業の質の向上、ひいては、ピアサポートの更なる普及に貢献できることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2026-06-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-06-01
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202517014C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究には、多様な障害領域の研究者はもちろん、専門職、当事者が協力者として参画した点で貴重な研究だと言える。開発したツールは、今後の障害者ピアサポートを促進していく上で大きな貢献が期待できる。
臨床的観点からの成果
障害福祉サービスで働くピアサポーターの専門性の向上と、ともに働く専門職の環境整備の必要性への理解(合理的配慮を含む)を促すことができる。それに伴い、当事者中心の福祉サービスの提供も促進される。
ガイドライン等の開発
障害者ピアサポート研修事業で使用されている基礎研修・専門研修、フォローアップ研修のシラバス案及び、基礎研修・専門研修テキスト案及び、ルビ付きわかりやすい版テキスト(知的障害の方などが対象)、テキストファイル(聴覚障害の方などが対象)を作成した。
また、フォローアップ研修については、シラバス案を作成した。
その他行政的観点からの成果
本研究は障害者総合支援法の付帯決議に示された障害者ピアサポート研修事業のカリキュラムの見直しを実現したものであり、今後の障害者ピアサポート研修事業での活用が期待される。
その他のインパクト
障害者ピアサポート研修事業は障害福祉サービスにおいて、職員として働くピアサポーターを養成する事業である。障害者はサービスを受ける側であるという認識を覆し、自身の経験を活かして当事者中心のサービスを創り上げるために貢献する人材を育成する点に大きな意義がある。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
9件
障害者ピアサポート研修事業基礎研修・専門研修、フォローアップ研修のシラバス案、基礎研修・専門研修のテキスト案、基礎研修・専門研修のルビ付きわかりやすい版テキスト、基礎研修・専門研テキストファイルの作成
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2026-06-01
更新日
-

収支報告書

文献番号
202517014Z