精神保健医療福祉分野におけるトラウマインフォームドケア活用促進のための研究

文献情報

文献番号
202517010A
報告書区分
総括
研究課題名
精神保健医療福祉分野におけるトラウマインフォームドケア活用促進のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23GC1019
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
西 大輔(東京大学 大学院医学系研究科 精神保健学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 宮本 有紀(東京大学大学院 医学系研究科 健康科学・看護学専攻 精神看護学分野)
  • 臼田 謙太郎(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 公共精神健康医療研究部)
  • 亀岡 智美(兵庫県こころのケアセンター)
  • 大岡 由佳(武庫川女子大学 心理・社会福祉学部)
  • 佐々木 那津(東京大学大学院医学系研究科 精神保健学分野)
  • 細田・アーバン 珠希(鳥取大学 大学院医学系研究科 臨床心理学専攻)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
4,985,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、精神保健医療福祉分野のTICが活用可能な領域におけるTICの研修プログラムを開発し、その効果を実証的に検討し、さらにTICの活用推進の方策を検討し、さらなるTICの普及に資することを目的とする。令和7年度は、①精神科医療機関等におけるTIC研修プログラムの改善と関連するエビデンスの創出、②児童相談所におけるTIC研修教材の開発と社会実装の方略に関する検討、③母子保健分野におけるTIC研修教材の開発と社会実装の方略に関する検討を行った。
研究方法
1.精神科医療機関等におけるTIC研修プログラムの改善と関連するエビデンスの創出
2024年度の研究から得られた「TIC研修資材の提供」という実装戦略を採用し、福島県精神保健福祉センターに「こども期の逆境体験」「トラウマ体験が引き起こす3つの反応」「トラウマと希死念慮」など16枚のスライドを提供し、研修資材の活用法についてご検討いただいた。

2.児童相談所におけるTIC研修教材の開発と社会実装の方略に関する検討
児相職員向けのTIC研修動画の効果を検討する非ランダム化比較試験の結果をまとめるとともに、児童相談所におけるTIC研修の実装に関する阻害要因・促進要因を明らかにし、段階ごとの実装戦略への示唆を得ることを目的に、児童相談所で研修企画に関わる職員を対象に半構造化インタビューを実施し、得られた内容をEPISフレームワーク(探索・準備・実装・維持)に基づき質的に分析した。

3.母子保健分野におけるTIC研修教材の開発と社会実装の方略に関する検討
2024年度に実施した助産師向けの研修動画の有効性を検討するランダム化比較試験の論文化を目指した。
結果と考察
1.精神科医療機関等におけるTIC研修プログラムの改善と関連するエビデンスの創出
福島県精神保健福祉センターが主催する、薬剤師・自治体職員・就労支援事業所職員・相談支援事業所職員・社会福祉協議会職員等を対象とする研修会やゲートキーパー講座で、TIC研修資材の一部をご活用いただいた。福島県精神保健福祉センターおよび受講者からは肯定的な評価が多かった一方で、事例があるとさらに望ましいというフィードバックが寄せられた。なお、本研究班で作成した動画や研修資材を閲覧できるホームページは、2025年4月1日から2026年3月31日までの間に新規ユーザー8,925人、ベージビュー数37,074件を記録した(2021年4月から2026年3月までの累計では新規ユーザー数36,601人、ページビュー数148,989件)。

2.児童相談所におけるTIC研修教材の開発と社会実装の方略に関する検討
非ランダム化比較試験については、73名(58.9%)が研究に参加し、介入群に40名、対照群に33名を割り付け、介入群のうち27名(67.5%)が全4回の動画を視聴した。ベースライン調査回答者のうち、必要な調査項目に欠損がなかった68人(介入群37人、対照群31人)をITT分析の対象として解析を行った。統計学的に有意な結果は得られなかったが、介入3か月後のTICに関する態度、チームの心理的安全性に関しては中程度の効果量が認められた。
実装に関するインタビューについては、5県7名のインタビューから、各段階で異なる阻害・促進要因が確認された。探索期では中心的人材の不在が障害、伝達講習文化が促進要因であった。準備期では専門部署や組織的枠組み、外部研修が促進要因となり、実装期では会議体やネットワーク、効果の実感が継続を支えた。維持期では定期研修化や専門機能の定着、関連施設への展開が促進要因であった。動画研修は概ね好意的に評価されたが、補助的支援の必要性が指摘された。

3.母子保健分野におけるTIC研修教材の開発と社会実装の方略に関する検討
2024年度に実施した助産師を対象とした動画研修プログラムの効果を検討するためのRCTはWomen and Birth誌に出版した。
結論
精神科看護師を対象としたTIC動画研修プログラムの有効性を示唆する論文を出版し、児童相談所職員、助産師を対象としたTIC動画研修プログラムの有効性を示唆した。TICに関するエビデンスを創出するとともにホームページ・研修等での啓発を行い、本研究班が日本におけるTICの普及に一定の役割を果たしていると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2026-06-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-06-02
更新日
-

文献情報

文献番号
202517010B
報告書区分
総合
研究課題名
精神保健医療福祉分野におけるトラウマインフォームドケア活用促進のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23GC1019
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
西 大輔(東京大学 大学院医学系研究科 精神保健学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 宮本 有紀(東京大学大学院 医学系研究科 健康科学・看護学専攻 精神看護学分野)
  • 臼田 謙太郎(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 公共精神健康医療研究部)
  • 亀岡 智美(兵庫県こころのケアセンター)
  • 大岡 由佳(武庫川女子大学 心理・社会福祉学部)
  • 佐々木 那津(東京大学大学院医学系研究科 精神保健学分野)
  • 細田・アーバン 珠希(鳥取大学 大学院医学系研究科 臨床心理学専攻)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
子ども期の逆境体験(ACE)の頻度の高さと影響の大きさが明らかになったこと等から、トラウマインフォームドケア(TIC)が近年注目されている。本研究は、精神保健医療福祉分野におけるTIC研修プログラムを開発し、その効果を実証的に検討し、普及に資することを目的とする。特に、①精神科医療機関等におけるTIC研修プログラムの改善とエビデンス創出、②児童相談所におけるTIC研修教材の開発・有効性検討・社会実装方略、③母子保健分野におけるTIC研修教材の開発と社会実装方略、を行った。
研究方法
1.精神保健福祉センターにおけるTIC普及の実態調査と外部向け研修の実装方略の検討を行った。また精神科看護師におけるTIC研修プログラムの有効性、および身体制限最小化に対する有効性を検討した。

2.児童相談所職員を対象としたTIC動画研修プログラムの有効性を検討する非ランダム化比較試験を行った。また、研修企画に関与する職員に半構造化インタビューを実施し、EPISフレームワークに基づき阻害・促進要因を整理した。

3.日本助産師会等へのヒアリングを踏まえ、助産師を対象としたTIC動画研修プログラムを開発し、都内の総合周産期医療センターの協力を得てランダム化比較試験を実施した。
結果と考察
1.2025年度に福島県精神保健福祉センターに研修資材を提供し、福島県こころのケアセンター主催の研修会等で活用された。肯定的評価が多かった一方、事例の追加が望ましいとのフィードバックが寄せられた。精神科看護師を対象としたTIC動画研修については、非ランダム化比較試験でTICに対する態度、心理的安全性、バーンアウトへの有効性が示唆された。行動制限最小化に関しても、拘束時間について介入群で研修終了3・6・12か月後のいずれも統計学的に有意な減少を認めた。本研究班作成の動画・研修資材を閲覧できるホームページは、2021年4月から2026年3月までの累計で新規ユーザー数36,601人、ページビュー数148,989件を記録し、TIC普及に一定の役割を果たしていると考えられる。

2.東京都児童相談所職員124名に調査を依頼し、73名(58.9%)が同意。介入群40名、対照群33名に割り付け、ITT分析対象は68人(介入群37人、対照群31人)であった。統計学的に有意な結果は得られなかったが、介入3か月後のTICに関する態度、チームの心理的安全性に中程度の効果量が認められた。現在、学術誌に投稿中である。ヒアリング調査では、内容が分かりやすく事例が状況に合っていること、視聴時間が取りやすいことが評価された。施設として取り組むことで職員間で共通認識が得られ、アセスメントがしやすくなったとの意見も得た。改善点として、シフト制勤務の一時保護所職員のため振り返り会の複数回開催、振り返りシートへの記入例追加が提案された。実装に関するインタビュー(5県7名)では、探索期は中心的人材の不在が障害、伝達講習文化が促進要因、準備期は専門部署や外部研修が促進要因、実装期は会議体やネットワーク、効果の実感が継続を支え、維持期は定期研修化や関連施設への展開が促進要因であった。

3.助産師を対象とした約75分間(4回)の動画研修を開発し、RCTを実施。都内最大規模の周産期医療機関の助産師160人に協力を依頼し、42人の同意を得て介入群・対照群に無作為割付した。介入開始3か月後、介入群(N=21)は対照群(N=21)と比較して、TICに対する態度、職場の心理的安全性、バーンアウトの対人関係の遮断において統計学的に有意な改善を示した。インタビューでは肯定的評価に加え、出産関連トラウマを経験した妊産婦への関わりに迷うことがあるとの内容も聴取された。
結論
精神科看護師研修や精神保健福祉センター、児童相談所における実装方略を検討するとともに、精神科看護師・児童相談所職員・助産師等を対象としたTIC動画研修プログラムの有効性を示唆した。ホームページでの情報発信と合わせて、本研究班は日本におけるTICの普及に一定の役割を果たしていると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2026-06-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
202517010C

収支報告書

文献番号
202517010Z