世界精神保健調査に資する大規模疫学調査による精神疾患の有病率等を把握するための研究

文献情報

文献番号
202517008A
報告書区分
総括
研究課題名
世界精神保健調査に資する大規模疫学調査による精神疾患の有病率等を把握するための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23GC1016
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
西 大輔(東京大学 大学院医学系研究科 精神保健学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 立森 久照(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所精神保健計画研究部)
  • 佐々木 那津(東京大学大学院医学系研究科 精神保健学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
28,039,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
疫学によって疾患の頻度や関連要因等を明らかにすることは、精神疾患の受療ニーズを明らかにしたり、その対策を立てたりする上で非常に重要である。これまでに、世界保健機関(WHO)とハーバード大学がとりまとめる世界精神保健調査の一環として、わが国では世界精神保健調査日本調査ファースト(WMHJ、2002-2006年)および同調査セカンド(WMHJ2、2013-2015年)が行われ、比較的頻度の高い精神疾患の有病率等が明らかにされてきた。しかし、2020年からの新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって、感染拡大前と比べて世界中でうつ病や不安症が25%以上増加したことが推定されており、有病率等が大きく変化した可能性がある。また、WMHJおよびWMHJ2は精神保健疫学調査用の構造化面接であるWHO統合国際診断面接(Composite International Diagnostic Interview, CIDI)の第3版(CIDI 3.0)を用いて実施されたが、精神疾患の国際的診断基準がDSM-5に改訂されたことに伴い、CIDIも第5版(CIDI 5.0)に改訂されている。
そこで本研究は、国際的な診断基準の変更を踏まえたうえで、ランダムサンプリング・構造化面接といった方法論を用いた大規模地域疫学研究によって、2020年代前半の日本における精神疾患の有病率、受診率、関連要因等を明らかにすることを目的とする。2025年度に関しては西日本地域(近畿、中国、四国、九州・沖縄)において調査を行うとともに、2023年度の関東地域(1都6県)の調査の回答率が低かったことから関東地域において再抽出し調査を行った。
研究方法
2025年度に関しては西日本の市区町村を①政令市(大都市)、②人口20万以上の市(中都市)、③人口20万人未満の市(小都市)、④郡部の町村の4層に分け、各層の人口に比例した47地点を無作為抽出し、その47地点の住民基本台帳に基づき、各地点から20歳以上75歳未満の男女55人を無作為抽出し、47地点×55標本= 合計2,585人を、研究参加を依頼する対象者とした。関東再調査では、同様の方法で25地点を新たに無作為抽出し、1地点あたり55人、合計1375人を、研究参加を依頼する対象者とした。
調査は面接調査と自己記入式質問紙を用いた留置調査の2つの方法を用いて実施した。面接調査にはCIDI5.0を用いた。CIDI5.0では、PCの画面上に所定の質問が決められた順に表示される。調査員は、画面上の質問を読み上げ、得られた回答を入力画面に入力した。面接調査では、WMHJおよびWMHJ2で有病率に関するデータを収集したうつ病、双極性障害、不安症群(パニック障害、社交不安障害、広場恐怖、全般性不安障害)、PTSD、アルコール使用障害に加えて、精神病体験のセクションも実施した。
精神病体験のセクションに関しては、精神病体験があり、わずか以上の精神的苦痛があると回答した者全員と、精神病体験はあるものの精神的苦痛はないと回答した研究参加者からランダムに25%を抽出して二次面接を依頼し、精神科医によるオンライン面接を行った。
結果と考察
面接調査に関しては、西日本では846人(回答率32.7%)が、関東再調査では398人(回答率28.9%)が面接を完了した。2023年度、2024年度と合わせると、合計で3030人(回答率33.2%)の面接調査完了者を確保した。自己記入式質問紙調査に関しては、西日本では908人(回答率35.1%)、関東再調査では419人(回答率30.5%)より回答を得た。2023年度、2024年度と合わせると、合計で3349人(回答率36.7%)の質問紙調査完了者を確保した。
統合失調症に関しては、西日本では、①精神病体験がありわずか以上の苦痛があったと回答した研究参加者全員の13人と、②精神病体験があり苦痛がなかったと回答した研究参加者からランダムに25%を抽出した9人、合計22人に精神科医によるオンライン面接への参加を依頼し、①の1人、②の2人、合計3人(13.6%)の面接を完了した。統合失調症の診断がついた者はいなかった。関東再調査では、①の5人と、②の5人、合計10人に精神科医によるオンライン面接への参加を依頼し、①の1人、②の3人、合計4人(40.0%)の面接を完了した。診断がついたのは①の1人であった。
結論
ランダムサンプリング・構造化面接といった方法論を用いて、2025年度は西日本地域の調査と関東地域の再調査を完了した。3年間合わせて3030人の面接調査完了者を確保した。3年間のデータを合わせて解析することで、2020年代前半の日本における精神疾患の有病率等を明らかにする。

公開日・更新日

公開日
2026-06-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-06-02
更新日
-

文献情報

文献番号
202517008B
報告書区分
総合
研究課題名
世界精神保健調査に資する大規模疫学調査による精神疾患の有病率等を把握するための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23GC1016
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
西 大輔(東京大学 大学院医学系研究科 精神保健学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 立森 久照(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所精神保健計画研究部)
  • 佐々木 那津(東京大学大学院医学系研究科 精神保健学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
疫学によって疾患の有病率等を明らかにすることは、受療ニーズを明らかにしたりその対策を立てたりする上で非常に重要である。これまでにわが国では世界精神保健調査日本調査ファーストおよび同調査セカンドが行われ、比較的頻度の高い精神疾患の有病率等が明らかにされてきた。しかし、2020年からの新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって有病率等が大きく変化した可能性がある。また、WMHJおよびWMHJ2は精神保健疫学調査用の構造化面接であるWHO統合国際診断面接(Composite International Diagnostic Interview, CIDI)の第3版(CIDI 3.0)を用いて実施されたが、精神疾患の国際的診断基準がDSM-5に改訂されたことに伴い、CIDIも第5版(CIDI 5.0)に改訂されている。

そこで本研究は、国際的な診断基準の変更を踏まえたうえで、ランダムサンプリング・構造化面接といった方法論を用いた大規模地域疫学研究によって、2020年代前半の日本における精神疾患の有病率等を明らかにすることを目的とした。
研究方法
調査員のトレーニングを行った上で、全国の市区町村を人口規模に基づく4層に分類し、各層の人口に比例した地点を無作為抽出し、さらに抽出された各地点の住民基本台帳に基づき20歳以上75歳未満の男女を対象として無作為抽出を行い、CIDI 5.0を用いた面接調査を行った。
結果と考察
3030人(回答率33.2%)が面接調査を完了した。重みづけを行う前の精神疾患の生涯有病率は、うつ病で9.7%、双極症Ⅰ型で0.3%、双極症Ⅱ型で0.2%、パニック症で1.1%、社交不安症で1.6%、広場恐怖で0.7%、全般性不安症で3.7%、アルコール使用症で6.2%であった。生涯でPTSDスクリーニングにおけるカットオフ値を超えたことがあるのは5.6%であった。同じく重みづけを行う前の12か月有病率は、うつ病で2.9%、双極症Ⅰ型で0.2%、双極症Ⅱ型で0.1%、パニック症で0.3%、社交不安症で0.7%、広場恐怖で0.1%、全般性不安症で2.1%、アルコール使用症で1.3%であった。また、直近12か月でPTSDスクリーニングのカットオフ値を超えたのは1.9%であった。
本研究は、CIDI5.0を用いた全国規模のランダムサンプリングによる構造化面接調査により、2020年代前半の日本における精神疾患の有病率等を明らかにした点に意義がある。世界精神保健調査(WMH)の枠組みに準拠しつつ、DSM-5に対応した診断基準に基づくデータを収集したことにより、国際比較および経時比較の双方に資する基盤的資料を提供するものである。

ただし、本報告で示した有病率は、現時点では重みづけ前の粗集計値である点に特に留意する必要がある。年齢、性別等を反映した重みづけを行うことで初めて、母集団を代表する推定値が得られるため、本報告の数値はあくまで暫定的なものであり、最終的な評価は重みづけ後の結果に基づいて行う必要がある。また、PTSDに関してはスクリーニングの結果であり、偽陽性が多いと考えられるため、より正確な有病率の推定のためにはさらなる検討を要する。

うつ病については、12か月有病率はWMHJ2と大きく変わらない一方で、生涯有病率は明らかに上昇していた。この結果は、コロナ禍において新たにうつ病を経験した者が一定数存在する一方で、その多くが調査時点では寛解している可能性を示唆する。すなわち、パンデミックに伴う心理社会的ストレスにより一時的に発症したうつ病が、その後の環境変化や適応によって回復し、生涯有病率として蓄積されているという解釈が現時点では整合的である。

一方で、本研究は横断調査であり、発症時期や経過を直接的に追跡したものではないため、この解釈は仮説的なものである。また、診断基準や測定ツールの変更等の影響も完全には排除できない。今後は、発症時期等も含めた検討が必要である。
本研究の最大の限界は回答率が約3割と低い点が挙げられる。また、本研究は20歳以上75歳未満を対象としており、高齢者や若年層の実態は反映されていない。
結論
本研究では、2020年代前半の日本における精神疾患の有病率を示す基礎的データを提供した。ただし、本報告は重みづけ前の暫定結果であり、最終的な評価は重みづけ後の推定値に基づいて行う必要がある。今後、重みづけや、質問紙調査も含めた詳細な分析を進める予定である。

公開日・更新日

公開日
2026-06-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
202517008C

収支報告書

文献番号
202517008Z