皮膚バリア障害によるアレルギーマーチ発症機序解明に関する研究

文献情報

文献番号
201023034A
報告書区分
総括
研究課題名
皮膚バリア障害によるアレルギーマーチ発症機序解明に関する研究
課題番号
H22-免疫・一般-003
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
天谷 雅行(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 古瀬 幹夫(神戸大学 大学院医学研究科)
  • 菅井 基行(広島大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 工藤 純(慶應義塾大学 医学部)
  • 加藤 則人(京都府立医科大学 大学院医学研究科)
  • 椛島 健治(京都大学 大学院医学研究科)
  • 浅野 浩一郎(慶應義塾大学 医学部)
  • 松井 毅(東京医科歯科大学 難治疾患研究所)
  • 海老原 全(慶應義塾大学 医学部)
  • 久保 亮治(慶應義塾大学 医学部)
  • 永尾 圭介(慶應義塾大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
35,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究では、皮膚バリア機能障害の観点から、アレルギーマーチを起こすアトピー性疾患の発症に関する病態解明を行い、皮膚バリア機能補正によるアレルギー疾患発症抑制・予防への分子基盤を確立する。フィラグリン欠損に伴う角層バリア機能障害に起因するアレルギーマーチ発症機序を解明するとともに、フィラグリン以外のアトピー性疾患発症新規因子の同定を試みる。本年度は、アレルギーマーチに関与する新しい研究テーマの基盤を確立する。
研究方法
 細胞内局在を指標とした発現クローニング法により、トリセルラータイトジャンクション(tTJ)に局在する新規タンパク質を同定し、機能解析を行う。フィラグリン以外のアトピー性疾患発症新規関連因子として、フィラグリン分解異常に関与するプロテアーゼの同定と角層機能の解析を行う。臨床検体から分離された黄色ブドウ球菌を用いて、そのゲノタイプと病原性との関連性を検討する。
結果と考察
 tTJの新規構成分子として、Lipolysis stimulated lipoprotein receptor (LSR)を同定した。LSRは上皮組織においてtTJに局在し、RNAi法によりLSRの発現を抑制すると、トリセルリンがトリセルラーコンタクトに濃縮しなくなった。一方、トリセルリンの発現を抑えても、LSRはトリセルラーコンタクトに局在していた。LSRはtTJ形成に重要な役割を持つと考えられる。
 プロテアーゼG(仮称)は、プロフィラグリンのリンカー配列をin vitroで切断した。プロテアーゼG欠損無毛マウスは、生後3?4週目において乾燥肌様表皮を呈した。経皮水分蒸散量に変化は認めないが、角質水分量は有意に減少しており、透過電子顕微鏡にて、電子密度のより濃い角質層が有意に増加していた。更に、プロフィラグリンの分解異常による異常なプロフィラグリンが蓄積していた。今後、アトピー性皮膚炎患者ゲノムにおけるヒトプロテアーゼGの遺伝子解析を行い、乾燥肌やアトピー性皮膚炎発症機序に新たな展開がうまれることが期待される。
  日本全国から収集した黄色ブドウ球菌の代表株として200株を選別し、CGH解析によりクラスタリングを行った。その結果、アトピー性皮膚炎患者皮膚に定着する黄色ブドウ球菌は特定のゲノタイプをもつことが明らかにされた。
結論
 アレルギーマーチを起こすアトピー性疾患の発症機序において、皮膚バリア障害による持続的経皮免疫が根本的な要因であることを示す確固たる免疫学的基盤が確立されつつある。

公開日・更新日

公開日
2011-09-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
201023034Z