文献情報
文献番号
202517004A
報告書区分
総括
研究課題名
強度行動障害のある人の豊かな地域生活を実現する「地域共生モデル」の理論の構築と重層的な支援手法の開発のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23GC1007
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
野澤 和弘(植草学園大学 発達教育学部)
研究分担者(所属機関)
- 内山 登紀夫(福島学院大学)
- 八木 淳子(岩手医科大学医学部 神経精神科学講座)
- 鈴木 さとみ(福島学院大学 福島こどもと親のメンタルヘルス情報・支援センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
6,906,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
強度行動障害の「地域共生モデル」とは、行動障害があっても周囲と調和し生活の質を維持しながら幸福感のある地域生活を実現することを目指し、その結果として行動障害の緩和や予防を図ろうというものである。就労などの創造的活動・地域社会に関わる活動を通して豊かな地域生活の実現を図るための理論の構築を目指す。
研究方法
「地域共生モデル研究」と併せて、家族や支援者側の意識の変容によって行動障害の予防や悪化の回避を図る「シナジー・プログラム」(日本語版)を策定する。また、トラウマと行動障害の関連を明らかにし、トラウマインフォームドケア(TIC)による強度行動障害支援の「手引き」を作成する。更には建築や環境の観点から行動障害の予防や軽減につながる要因を分析する。これらの四つの研究の連携によって重層的な支援手法を開発し、当事者の豊かな地域生活の実現を目指す。
結果と考察
①「地域共生モデル」では全国の施設・事業所の調査から、国の強度行動障害支援者養成研修は8割近くが受けているが、現場では専門的な支援はあまり行われておらず、静かな居室での処遇や手厚い人員配置で凌いでいる実態がわかった。先駆的な施設・事業所のヒアリング調査では、強度行動障害の人が地域でトラブルを起こしながらも継続的に支援をしている事業所では、幼いころからの虐待や体罰等によるトラウマを把握し、権利擁護の視座を土台にした利用者理解ができているところが多かった。そうした事業所の中には年齢や経験に関係なく自由に意見を言い合える等、職員間のコミュニケーションを大事にしているところが多いこともわかった。多様な価値観がぶつかり合いながら職員が自らの固定観念を問い直す機会が日常的にあることを意味する。失敗を認め合える寛容な文化があることも特徴で、強度行動障害の人にもポジティブな支援が実現できる重要な要因になっている。
この調査結果を基に、余裕のない施設・事業所でも取り組める「地域共生モデルを実現するためのガイドブック」をまとめた。
②「シナジー・プログラム」は、イギリスで開発されたシナジー・プログラムの日本語版を作成し、研修の実施および評価を行った。受講者のアンケート調査では、プログラムの有用性、研修実施上の課題、日本の支援現場への適用可能性について訊ねたところ、内容の分かりやすさ、支援実践への適用性、今後の実践意向、職場内での共有意向について高い肯定的評価が得られた。さらに、同プログラム開発者との協議により、日本の支援現場に即したローカライズが可能であること、国内でのトレーナー育成やメンター制度、第三者評価を含む実装体制の整備が重要であることが確認された。以上より、シナジー・プログラムは、日本の強度行動障害支援の現場においても有用性と適用可能性を有することが示唆された。
③「トラウマ」(分担研究者:八木淳子)は強度行動障害の病態をトラウマインフォームドの視点で捉え直し、養育者・支援者らが行動障害のある本人及び自分自身のトラウマの影響を理解し、トリガーの汎化や症状の増悪を惹起する関わりを廃し、本人のレジリエンスを引き出す対応をとれるようになるための方法論と具体策の提示を目指す。これにより、強度行動障害の予防や症状悪化の回避、支援者のエンパワー等につながることが見込まれる。本研究3年目はシナジー・プログラムと併せて「シナトラ研修」を岩手と東京で実施した。受講者のアンケート結果から、内容のわかりやすさ、理解度、TIC実践可能性、同僚への研修受講推奨のいずれの項目も高い評価が得られた。
ケーススタディは福祉事業所の支援職4人、精神科単科病院の専門職6人を対象に行った。事前アンケートでは強度行動障害の人に関わる際の不安や自信のなさ、自責や回避の傾向が窺える記述が多かった。
④「日中活動・街の環境」では、2法人を対象に店舗や公園など地域における外部活動の調査と、一日の移動支援の見学を実施した。地域のキーパーソンを介した連携の形成、場所と時間の重ね使いによる地域との接点の創出、計画と委任を組み合わせた利用者主導の移動ルート選定、時間ではなく利用者の状態を判断基準とする終了時間を決めない支援―の4点を知見として得た。地域での活動は地域のキーパーソンとの関わりや場所の重ね使いが見られた。キーパーソンに共通するのは、活動場所の立地条件などから日常的に多様な属性の人と関わりがあり、利用者に対しても同様に自然体で接する姿勢である。こうした関わりが利用者の安心感につながり、活動が地域へさらに広がる契機となっていたと考えられる。地域のキーパーソンの存在とその人物が持つ地域内のネットワークが、障害当事者の活動範囲を広げる上で重要な役割を果たしていると考えられる。
この調査結果を基に、余裕のない施設・事業所でも取り組める「地域共生モデルを実現するためのガイドブック」をまとめた。
②「シナジー・プログラム」は、イギリスで開発されたシナジー・プログラムの日本語版を作成し、研修の実施および評価を行った。受講者のアンケート調査では、プログラムの有用性、研修実施上の課題、日本の支援現場への適用可能性について訊ねたところ、内容の分かりやすさ、支援実践への適用性、今後の実践意向、職場内での共有意向について高い肯定的評価が得られた。さらに、同プログラム開発者との協議により、日本の支援現場に即したローカライズが可能であること、国内でのトレーナー育成やメンター制度、第三者評価を含む実装体制の整備が重要であることが確認された。以上より、シナジー・プログラムは、日本の強度行動障害支援の現場においても有用性と適用可能性を有することが示唆された。
③「トラウマ」(分担研究者:八木淳子)は強度行動障害の病態をトラウマインフォームドの視点で捉え直し、養育者・支援者らが行動障害のある本人及び自分自身のトラウマの影響を理解し、トリガーの汎化や症状の増悪を惹起する関わりを廃し、本人のレジリエンスを引き出す対応をとれるようになるための方法論と具体策の提示を目指す。これにより、強度行動障害の予防や症状悪化の回避、支援者のエンパワー等につながることが見込まれる。本研究3年目はシナジー・プログラムと併せて「シナトラ研修」を岩手と東京で実施した。受講者のアンケート結果から、内容のわかりやすさ、理解度、TIC実践可能性、同僚への研修受講推奨のいずれの項目も高い評価が得られた。
ケーススタディは福祉事業所の支援職4人、精神科単科病院の専門職6人を対象に行った。事前アンケートでは強度行動障害の人に関わる際の不安や自信のなさ、自責や回避の傾向が窺える記述が多かった。
④「日中活動・街の環境」では、2法人を対象に店舗や公園など地域における外部活動の調査と、一日の移動支援の見学を実施した。地域のキーパーソンを介した連携の形成、場所と時間の重ね使いによる地域との接点の創出、計画と委任を組み合わせた利用者主導の移動ルート選定、時間ではなく利用者の状態を判断基準とする終了時間を決めない支援―の4点を知見として得た。地域での活動は地域のキーパーソンとの関わりや場所の重ね使いが見られた。キーパーソンに共通するのは、活動場所の立地条件などから日常的に多様な属性の人と関わりがあり、利用者に対しても同様に自然体で接する姿勢である。こうした関わりが利用者の安心感につながり、活動が地域へさらに広がる契機となっていたと考えられる。地域のキーパーソンの存在とその人物が持つ地域内のネットワークが、障害当事者の活動範囲を広げる上で重要な役割を果たしていると考えられる。
結論
以上の研究結果から、強度行動障害の地域共生モデルは有用性や汎用性が十分に高いと結論づけられる。
公開日・更新日
公開日
2026-06-01
更新日
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