文献情報
文献番号
202517001A
報告書区分
総括
研究課題名
難聴児の手話療育体制整備に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23GC1001
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
今橋 久美子(藤田 久美子)(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
研究分担者(所属機関)
- 高嶋 由布子(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
- 阿部 敬信(九州産業大学 人間科学部)
- 松﨑 丈(国立大学法人宮城教育大学 教育学部)
- 前川 和美(関西学院大学 手話言語研究センター)
- 伊藤 理絵(常葉大学 保育学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
7,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
日本では、ろう・難聴児が乳幼児期から手話言語を習得できる体制が十分に整備されていない。音声言語中心の療育では、聴覚活用の限界や親子の意思疎通不全、語用論的発達への影響などが指摘されており、手話を含む複数の言語手段を早期から保障する必要がある。しかし、現職の聴者専門職の多くは手話を十分に扱えず、家庭に手話を導入する支援が実質的に機能していない。そこで本研究は、アメリカの手話療育体制との比較および国内調査を通じて、日本における手話療育体制の課題を明らかにし、手話を第一言語とするろう者が家庭支援に関与する「デフメンター」制度の導入可能性を検討することを目的とした。
研究方法
(1) 制度的検討
アメリカの聾学校・研究機関・早期支援機関を訪問し、IFSP/IEPを基盤とした早期支援体制、手話専門家、デフメンターの役割を調査した。また、ボストン大学およびテキサス聾学校の専門家による講演会を実施し、日本への導入可能性を議論した。
(2) 国内の実態調査
東北・関東・関西・九州の手話療育拠点を視察し、聾学校・児童発達支援事業所における支援体制、ろう者の関与状況、手話使用の実態を把握した。
(3) デフメンター研修の試行
全国から20名のろう者を対象に、オンライン講座・座学・ワークショップ形式の研修を実施し、デフメンターの役割や必要な専門性について意見交換を行った。
アメリカの聾学校・研究機関・早期支援機関を訪問し、IFSP/IEPを基盤とした早期支援体制、手話専門家、デフメンターの役割を調査した。また、ボストン大学およびテキサス聾学校の専門家による講演会を実施し、日本への導入可能性を議論した。
(2) 国内の実態調査
東北・関東・関西・九州の手話療育拠点を視察し、聾学校・児童発達支援事業所における支援体制、ろう者の関与状況、手話使用の実態を把握した。
(3) デフメンター研修の試行
全国から20名のろう者を対象に、オンライン講座・座学・ワークショップ形式の研修を実施し、デフメンターの役割や必要な専門性について意見交換を行った。
結果と考察
(1)日本の手話療育体制の課題
調査の結果、日本では手話が「言語」として制度的に扱われておらず、支援の中心が日本語対応手話や単語提示に偏っていた。聾学校や児童発達支援事業所では、ろう者が絵本読み聞かせや単語モデルとして関与する例はあるものの、専門性として評価されず、家庭支援の役割も担っていない。
一方、アメリカでは、ろう者は言語モデル・ロールモデルとして制度的に位置づけられ、家庭訪問を含む早期支援に継続的に関与していた。また、手話言語発達を評価する手話専門家が配置され、家庭支援と専門的言語支援が分化していた。
(2)デフメンターの必要性
日本では、手話を第一言語とするろう者が家庭支援に関与する仕組みが欠如しているため、親子間の視覚的コミュニケーション形成が十分に支えられていない。
デフメンターは、
手話の言語モデル・ロールモデルとして家庭に関与
親子のコミュニケーション成立を支援
ろう者コミュニティとの接続を促進
という役割を担う点で、日本の支援体制の空白を埋める存在である。
(3)制度化に向けた方向性
デフメンターは、子育て支援員研修に類する研修体系を整備し、児童発達支援事業所や養育支援訪問事業に位置づけることが現実的である。また、既に保育士・保健師等の資格を持つろう者は、デフメンター研修を受けることで専門性を強化できる。さらに、手話言語発達の評価を担う手話専門家の養成も並行して進め、両者を相互補完的に配置する必要がある。
調査の結果、日本では手話が「言語」として制度的に扱われておらず、支援の中心が日本語対応手話や単語提示に偏っていた。聾学校や児童発達支援事業所では、ろう者が絵本読み聞かせや単語モデルとして関与する例はあるものの、専門性として評価されず、家庭支援の役割も担っていない。
一方、アメリカでは、ろう者は言語モデル・ロールモデルとして制度的に位置づけられ、家庭訪問を含む早期支援に継続的に関与していた。また、手話言語発達を評価する手話専門家が配置され、家庭支援と専門的言語支援が分化していた。
(2)デフメンターの必要性
日本では、手話を第一言語とするろう者が家庭支援に関与する仕組みが欠如しているため、親子間の視覚的コミュニケーション形成が十分に支えられていない。
デフメンターは、
手話の言語モデル・ロールモデルとして家庭に関与
親子のコミュニケーション成立を支援
ろう者コミュニティとの接続を促進
という役割を担う点で、日本の支援体制の空白を埋める存在である。
(3)制度化に向けた方向性
デフメンターは、子育て支援員研修に類する研修体系を整備し、児童発達支援事業所や養育支援訪問事業に位置づけることが現実的である。また、既に保育士・保健師等の資格を持つろう者は、デフメンター研修を受けることで専門性を強化できる。さらに、手話言語発達の評価を担う手話専門家の養成も並行して進め、両者を相互補完的に配置する必要がある。
結論
本研究は、日本の手話療育体制における最大の課題が、ろう者を言語モデル・ロールモデルとして制度的に位置づける仕組みの欠如であることを明らかにした。アメリカの事例から、家庭支援にろう者が関与するデフメンター制度は、親子コミュニケーションの成立を支え、手話言語環境を整える上で有効であることが示唆された。
今後は、デフメンターの研修体系・資格制度の整備、手話専門家との役割分担、地域支援機関との連携体制の構築が求められる。また、地域差を縮小するため、遠隔支援や教材提供システムの整備も重要である。
デフメンター制度の導入は、日本における手話療育体制整備の第一歩であり、ろう・難聴児の言語権保障に向けた基盤形成として大きな意義を持つ。
今後は、デフメンターの研修体系・資格制度の整備、手話専門家との役割分担、地域支援機関との連携体制の構築が求められる。また、地域差を縮小するため、遠隔支援や教材提供システムの整備も重要である。
デフメンター制度の導入は、日本における手話療育体制整備の第一歩であり、ろう・難聴児の言語権保障に向けた基盤形成として大きな意義を持つ。
公開日・更新日
公開日
2026-06-12
更新日
-