文献情報
文献番号
202516007A
報告書区分
総括
研究課題名
独居認知症高齢者の権利利益の保護を推進するための調査研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
25GB1001
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
粟田 主一(社会福祉法人浴風会 認知症介護研究・研修東京センター)
研究分担者(所属機関)
- 小原 知之(九州大学大学院医学研究院精神病態医学)
- 川越 雅弘(公立大学法人埼玉県立大学 大学院保健医療福祉学研究科)
- 岡村 毅(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) 自立促進と精神保健研究チーム)
- 武田 章敬(独立行政法人国立長寿医療研究センター 脳機能診療部)
- 井藤 佳恵(東京都健康長寿医療センター研究所 福祉と生活ケア研究チーム)
- 水島 俊彦(社会福祉法人浴風会認知症介護研究・研修東京センター 研究部)
- 黒澤 史津乃(社会福祉法人浴風会 認知症介護研究・研修東京センター)
- 吉川 悠貴(東北福祉大学 総合福祉学部社会福祉学科)
- 齊藤 葉子(社会福祉法人浴風会 認知症介護研究・研修東京センター)
- 永田 久美子(社会福祉法人浴風会 認知症介護研究・研修東京センター 研究部)
- 津田 修治(東京健康長寿医療センター研究所 福祉と生活ケア研究チーム)
- 石山 麗子(国際医療福祉大学大学院 医療福祉学研究科)
- 花田 健二(社会福祉法人浴風会認知症介護研究・研修東京センター 研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症政策研究
研究開始年度
令和7(2025)年度
研究終了予定年度
令和9(2027)年度
研究費
15,560,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、独居認知症高齢者の権利利益の保護を推進するための調査研究を分野横断的に行い、令和1~3年度厚生労働科学研究/令和4~6年度厚生労働科学研究(いずれも研究代表者:粟田主一)で作成した自治体向け手引きを改訂するとともに、新たに関係機関向けガイドラインを作成することにある。
研究方法
上記の目的を達成するために、2025年度は独居認知症高齢者の権利利益の侵害に係る実態を明らかにすることを目的に14の分担研究課題を設定して研究を行った。
結果と考察
1)わが国の4地域で実施された疫学調査データを用いて、2022年のわが国の独居認知症高齢者/独居MCI高齢者の有病率を5.08%/14.28%、人数を55.1万人/125.6万人と推計した。2)市町村が有する各種データをもとに、要介護認知症高齢者に占める独居者の割合を明らかにする方法を示した。3)地域在住高齢者を対象とする調査から「反応群」と「未反応群」のデータを比較し、未反応群では夫婦のみ世帯、低栄養、うつ状態、フレイル、認知機能低下高齢者が多いことを示した。4)全国の認知症初期集中支援チームの調査から、対象者の3-4割が独居であり、独居の女性は消費者被害に遭いやすく、男性は自宅での生活の継続が難しいことを示した。5)高齢者の急性期医療を担う大規模総合病院の職員のアンケート調査から、医療同意に関する法的理解やACPの概念理解にばらつきがあること、特に家族による医療同意が法的に認められているとする誤解があること、ACPを現在の治療方針決定や治療制限の合意と同一視する傾向があることを示した。6)自治体での現地調査によって、①フォロワーの「支持者性」と「支援者性」の揺らぎが社会構造上生じうること、②相互牽制機能を担保する仕組みが必要であること、③フォロワーが本人の意思、選好及び価値観の媒介者としての機能を果たし得ること、④自治体の既存評価軸では意思決定支援の成果が見えにくく、普及啓発が不可欠であることを示した。7)有識者への個別ヒアリング、当事者予備軍へのアンケート及び有識者検討会から、終身サポート事業では、軽微な支援からの伴走や高度な支援へのスムーズな切り替え、支援が必要な時期に備えた情報や意向・希望の健常時からの整理・保存、民間事業の質、信頼性の明確化、民間事業の支援対象の拡大が課題であることを示した。8)ケアマネジャー・訪問介護員を対象とするアンケート調査から、両群とも独居認知症高齢者への虐待事例を一定程度経験しており、発見・対応に重要な役割を占めていることを示した。9)都内全域の介護支援専門員を対象とするアンケート調査の自由記述回答の分析から、訪問販売は新聞・食品・寝具など日常生活に密接に関わる商品を中心に生じており、被害は生活状況の変化や物品の増加を契機として事後的に把握されること、高額商品・複数契約・価格の不透明さといった金銭的特徴があることを確認した。10)識者レビューを行い、行方不明の発生時期は、診断前から施設入所後まで5段階の幅広い時期に渡ること、発生の背景として生活上の危機と心身状態の増悪があることを示した。11)事例分析を通して認知症疾患医療センターを受診する独居認知症高齢者は、受診までの経緯や初診時においても、権利利益の保護に関わる多様な課題に直面していることを示した。12)訪問看護の対象となった在宅認知症高齢者の調査を実施し、独居群には経済的困窮者が多いこと、認知症が軽度であること、訪問介護サービスの利用頻度が高いこと、日常生活支援ニーズが高いこと、本人同意のない対応として、身体拘束、非同意のケア、施錠やキーボックスの設置、金銭や重要書類の管理があることを示した。13)文献調査、グループインタビューを行い、ケアマネジャーは利用者の不利益の実感から事象を権利侵害と認識する「帰納的プロセス」によって権利擁護に関与していること、権利侵害は経済的搾取、自己決定権の侵害、プライバシー侵害、健康・行動制限、セルフネグレクト等の構造的課題に類型化できることを示した。14)全国の認知症地域支援推進員を対象とする調査から、認知症地域支援推進員の8割が独居認知症高齢者の相談支援・個別支援に関与していること、認知症の診断/精神的・身体的健康問題に対する医療/介護・生活支援/権利擁護支援/経済支援についてのアンメットニーズや、地域社会の中での虐待/消費者被害/行方不明/社会的孤立に直面している独居認知症高齢者の事例を経験していることを示した。
結論
14の分担研究を通して、わが国の独居認知機能低下(認知症またはMCI)高齢者数と独居認知症高齢者が直面している権利利益の侵害に係る実態が可視化されている。
公開日・更新日
公開日
2026-06-17
更新日
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