食物アレルギーの発症要因の解明および耐性化に関する研究

文献情報

文献番号
201023028A
報告書区分
総括
研究課題名
食物アレルギーの発症要因の解明および耐性化に関する研究
課題番号
H21-免疫・一般-005
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
海老澤 元宏(独立行政法人 国立病院機構相模原病院 臨床研究センター アレルギー性疾患研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 板橋 家頭夫(昭和大学医学部)
  • 近藤 直実(岐阜大学大学院 医学系研究科 小児病態学)
  • 伊藤 浩明(あいち小児保健医療総合センター アレルギー科)
  • 伊藤 節子(同志社女子大学 生活科学部 食物栄養科学科)
  • 宇理須 厚雄(藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院 小児科)
  • 今井 孝成(国立病院機構相模原病院 小児科)
  • 玉利 真由美(理化学研究所 ゲノム医科学研究センター 呼吸器疾患研究チーム)
  • 穐山 浩(国立医薬品食品衛生研究所 代謝生化学部)
  • 大嶋 勇成(福井大学医学部附属病院小児科)
  • 松本 健治(国立成育医療研究センター研究所 アレルギー研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食物アレルギー(FA) (発症要因の解明、予防や治療法の開発、社会環境整備)研究の発展に寄与し、国民への正確な情報提供を行うことを目的とした。
研究方法
FAの管理と患者のQOL向上に寄与すべく積極的な治療法(経口免疫療法:OIT)の開発研究を中心に活動した。
結果と考察
相模原病院で260症例にOITの検討を加えた。アナフィラキシー(An)型の6歳以上の卵・乳・小麦・落花生FAには急速法(入院)後、緩徐法(外来)で治療するOITを確立し132例(卵44、乳71、小麦13、落花生4)に行った。1年超経過例(卵17:乳26)の中で卵80%、乳73%で減感作状態(連日のOITで無症状)に誘導可能だが、耐性化は卵29%,乳15%のみであった。乳OITは卵よりも副作用の発現頻度が高かった。減感作の機序として急速法では不応期の関与、その後抗原特異的IgG4抗体の上昇、IgE抗体の低下に伴いマスト細胞・好塩基球の反応性の低下が認められた。即時型FA81例(An歴無)の卵(28)・乳(28)・小麦(25)を対象に緩徐法にてOITの効果を無治療群(47例)と比較検討した。卵(80%)、乳(50%)、小麦(67%)で減感作状態に達していたが、耐性化率で小麦(80%vs無治療33%)のみ有用性を認めた。あいち小児保健医療総合センターで卵、乳、小麦の負荷試験で陽性の74名に対する積極的な食事指導の有用性が示された。岐阜大学で乳FA17名を対象にエピトープ改変乳を用いたOITの有効性の検討が行われた。藤田保健衛生大学でオボムコイドを低減化したOITにより卵FA 80名にてプラセボと比較し有用性が示された。動物モデルではカロテンの発症抑制効果、抗原を封入したマンノース結合リポゾームの粘膜投与の効果などの検証を継続している。新生児乳FAでは負荷試験による正確な診断による前方視疫学調査を開始し49例の報告があった。負荷試験は23例に行われ陰性12例では早期に治療乳を中止できていた。日本小児科学会研修施設522施設で入院・外来のいずれかで負荷試験を行っているのは310 施設であった。負荷試験実施施設の情報を食物アレルギー研究会HPで公開し患者への情報提供、病診連携に役立てもらっている。
結論
Ana型のFAへの積極的治療のOITの方法は確立することができたが、抗原や個体差による急速期・維持期の治療反応性の違いが明らかになった。事前に治療反応性を予測できる臨床的・免疫学的パラメーターの確立が急務である。緩徐OITと必要最小限の除去+栄養指導の比較検討でOITの有効性を明らかにする必要がある。

公開日・更新日

公開日
2011-09-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
201023028Z