認知症診断後支援の総合的・学際的研究

文献情報

文献番号
202516006A
報告書区分
総括
研究課題名
認知症診断後支援の総合的・学際的研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24GB1003
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
岡村 毅(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) 自立促進と精神保健研究チーム)
研究分担者(所属機関)
  • 矢吹 知之(高知県立大学 社会福祉学部)
  • 山下 真里(東京都健康長寿医療センター研究所 自立促進と精神保健研究チーム)
  • 井原 涼子(東京都健康長寿医療センター)
  • 枝広 あや子(地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
  • 杉山 美香(東京都健康長寿医療センター研究所)
  • 井藤 佳恵(東京都健康長寿医療センター研究所 福祉と生活ケア研究チーム)
  • 宮前 史子(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 自立促進と精神保健研究チーム)
  • 古田 光(東京都健康長寿医療センター 精神科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症政策研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和8(2026)年度
研究費
5,959,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、認知症基本法が掲げる「希望と尊厳をもって暮らせる共生社会」の実現に向け、認知症診断後支援の実態と課題を明らかにし、地域で生活を継続するための支援モデルを構築することである。特に、診断前後に生じる「空白の期間」に着目し、本人ミーティング、ACP、ケアファーム、アート活動など多様な実践を通じて、本人・家族・地域をつなぐ支援のあり方を検討した。
研究方法
本研究では、認知症診断後支援を多面的に検討するため、全国調査、質問紙調査、質的研究、参与観察を組み合わせた混合研究法を用いた。第一に、「空白の期間」の研究では、全国の認知症疾患医療センターおよび認知症サポート医の協力を得て、認知症外来患者家族を対象とした質問紙調査を実施した。認知症症状の自覚から診断まで(BP1)、診断から介護サービス利用開始まで(BP2)の期間を定量化し、関連因子を統計学的に分析した。第二に、本人ミーティング研究では、研究者・実践者・行政担当者への半構造化インタビューを実施し、リフレクシブ・テーマ分析により、本人主体性や制度化との関係を分析した。第三に、農園を活用した診断後支援では、自治体委託によるケアファーム事業を対象に、参与観察、質問紙、半構造化面接を行い、精神的健康状態や地域活動移行を評価した。第四に、アート活動を用いた診断後支援では、創作活動や共同制作の場において参与観察と聞き取りを行い、役割感や交流の変化を検討した。さらに、独居高齢転入者を対象とした「ウェルカムプロジェクト」により、転居後支援の実践と心理社会的変化を分析した。また、全国の認知症疾患医療センターを対象とした診断後支援の全国調査を行い、本人支援・家族支援・地域連携の実態を把握した。加えて、東京都の認知症サポート医を対象にACP実践調査を実施し、診断後支援との関連を検討した。
結果と考察
「空白の期間」の研究では、BP1平均13.5か月、BP2平均16.9か月と、診断前後に長期の支援空白が存在することが示された。受診への躊躇、若年性認知症、同居状況などが関連因子として抽出され、認知症支援アクセスには社会的・文化的背景が深く関与していた。本人ミーティング研究では、「出会い―語り合い―社会提案」という発達過程が確認され、本人主体性を支える水平的関係や小さな成功体験が重要であった。一方で、行政事業化による数値目標化は、本人主体性を損なう可能性が示唆された。農園を活用した支援では、参加者の精神的健康状態の維持・改善が認められ、農作業を介した共同活動が役割回復や関係形成に寄与していた。アート活動では、認知症の人が「支援される存在」ではなく「表現する主体」として位置づけられ、非言語的コミュニケーションを通じた交流促進が確認された。また、転居後支援では、中間的支援者の存在が地域参入時の心理的不安を軽減していた。さらに、認知症疾患医療センター調査では地域差が大きく、積極的施設では地域資源との連携が強かった。ACP研究では、地域連携意識の高い認知症サポート医ほどACP実践が積極的であった。これらの結果から、診断後支援は単なる医療的フォローではなく、人とのつながりや役割を再構築する社会的実践として位置づけられることが示された。
結論
本研究は、認知症診断後支援を「診断後の付加的支援」ではなく、「認知症とともに地域で生きることを支える社会的実践」として再定義した。空白の期間、本人ミーティング、ケアファーム、アート活動、ACPなど多様な実践を通じて、本人の役割・関係性・地域参加を支える支援の重要性が示された。今後は、これらの実践を地域実装可能な支援モデルとして体系化し、本人・家族・専門職・地域住民が協働する持続可能な共生社会モデルへ発展させていく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2026-06-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-05-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
202516006Z