文献情報
文献番号
202516005A
報告書区分
総括
研究課題名
認知症の有病率に影響を与える因子の解明のための調査研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24GB1002
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
二宮 利治(九州大学大学院医学研究院 衛生・公衆衛生学分野)
研究分担者(所属機関)
- 前田 哲也(岩手医科大学 脳神経内科・老年科)
- 小野 賢二郎(金沢大学 医薬保健研究域医学系)
- 伊賀 淳一(愛媛大学 大学院医学系研究科)
- 花島 律子(鳥取大学 医学部 医学科 脳神経医科学講座 脳神経内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症政策研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和8(2026)年度
研究費
9,074,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
超高齢社会を迎えたわが国では、認知症は大きな医療・社会問題として注目されている。認知症の社会的・医療的な対策を推進する上で、認知症の有病率の定期的な把握と実用的な推定手法の確立が求められている。本研究は、地域住民を対象とした大規模調査データを用いて、認知症の有病率に影響を及ぼす因子を明らかにするとともに、既存の公的データ(要介護認定情報や健診情報等)を活用した認知症有病率の推計モデルを構築することを目的とした。特に、自治体レベルで実用可能な有病率推定モデルの構築を目指した。
研究方法
(研究1)福岡県久山町の認知症悉皆調査(2012–13年、2017–18年、2022–23年)の調査データを用いて、MCIと診断された住民を5年間追跡し、正常認知機能への回復(reversion)や認知症への進展を評価した。解析にはロジスティック回帰および一般化推定方程式(GEE)を用い、臨床背景因子との関連を検討した。
(研究2)認知症有病率推計モデルを作成した。モデルの構築には久山町の住民3,935人のデータを用いた。さらに、JPSC-AD研究に参加した4地域の住民4,675人のデータを用いて作成したモデルの外的妥当性を検証した。モデルは要支援・要介護認定の有無別に構築し、年齢、既往歴、生活機能指標などを説明変数として用いた。モデル性能はC統計量で評価した。
(研究2)認知症有病率推計モデルを作成した。モデルの構築には久山町の住民3,935人のデータを用いた。さらに、JPSC-AD研究に参加した4地域の住民4,675人のデータを用いて作成したモデルの外的妥当性を検証した。モデルは要支援・要介護認定の有無別に構築し、年齢、既往歴、生活機能指標などを説明変数として用いた。モデル性能はC統計量で評価した。
結果と考察
(研究1)MCI者を5年間追跡した2コホートを統合解析した結果、MCI者の31.3%が正常認知機能へ回復(reversion)し、26.8%がMCIを維持、27.9%が認知症へ進展、14.0%が死亡した。さらに、2012-13年から2022-23年の10年間の長期追跡した解析では、reversion率は18.1%に低下し、15.2%MCIの状態を維持、25.2%が認知症発症、41.5%が死亡した。また、2012-13年から2017-18年の5年間に正常化した者のうち約半数のみがその後も正常認知機能を維持し、約3割が再びMCIまたは認知症へ進展した。MCIから正常認知機能へのreversionに関連する因子の検討では、年齢が若いこと、女性であること、収縮期血圧が低いこと、降圧薬使用、糖尿病がないこと、IADL障害がないこと、握力が高いことが関連した。MCIの可逆性には、血管性要因やフレイル状態が関与していることが示唆された。
(研究2)認知症有病率推計モデルの構築では、要支援・要介護認定情報の有無別にモデルを作成した。認定情報あり群では年齢、脳卒中既往、要介護度が主要な規定因子として抽出され、モデルの識別能はC統計量0.85と高かった。モデルで推定された認知症を有する確率0.60以上(Youden Indexにより算出)を認知症ありとしたところ、感度87.2%、特異度70.3%であった。認定情報なし群では、年齢と脳卒中既往に加え、老研式活動能力指標(手段的自立、知的能動性、社会的役割)が有意な因子として選択され、C統計量0.86と同様に高い識別能を示したが、特異度95%以上であることを優先したカットオフ設定のため感度は40.3%と低値であった。さらに、これらのモデルを用いた有病率推定では、認定あり群(実測73.7%、推定72.1%)、認定なし群(実測7.7%、推定7.1%)、全体(実測17.7%、推定16.9%)と、いずれも実測値と良好に一致した。また、外部コホートであるJPSC-AD研究のデータにおいてもC統計量0.81~0.89と高い性能が維持されており、モデルの外的妥当性が確認された。
(研究2)認知症有病率推計モデルの構築では、要支援・要介護認定情報の有無別にモデルを作成した。認定情報あり群では年齢、脳卒中既往、要介護度が主要な規定因子として抽出され、モデルの識別能はC統計量0.85と高かった。モデルで推定された認知症を有する確率0.60以上(Youden Indexにより算出)を認知症ありとしたところ、感度87.2%、特異度70.3%であった。認定情報なし群では、年齢と脳卒中既往に加え、老研式活動能力指標(手段的自立、知的能動性、社会的役割)が有意な因子として選択され、C統計量0.86と同様に高い識別能を示したが、特異度95%以上であることを優先したカットオフ設定のため感度は40.3%と低値であった。さらに、これらのモデルを用いた有病率推定では、認定あり群(実測73.7%、推定72.1%)、認定なし群(実測7.7%、推定7.1%)、全体(実測17.7%、推定16.9%)と、いずれも実測値と良好に一致した。また、外部コホートであるJPSC-AD研究のデータにおいてもC統計量0.81~0.89と高い性能が維持されており、モデルの外的妥当性が確認された。
結論
本研究により、MCIの約30%が5年以内に正常認知機能へ回復する一方、長期的には再低下する例も多く、継続的な観察と介入の重要性が示された。また、要支援・要介護認定情報の有無別に、認知症の有病率推計モデルを構築したところ、作成したモデルは外部データにおける外的妥当性も検証され、本モデルを用いた認知症有病率推定の可能性が示された。一方で、要支援・要介護認定情報を有しない者では自治体で利用可能なデータに限界があり、推定精度に制約があることも明らかとなった。
公開日・更新日
公開日
2026-06-24
更新日
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