ダニ媒介性新興感染症の疫学、発症機序および予防法に関する研究

文献情報

文献番号
199700794A
報告書区分
総括
研究課題名
ダニ媒介性新興感染症の疫学、発症機序および予防法に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
高島 郁夫(北海道大学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 新興・再興感染症研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
27,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、わが国で問題となっているダニ媒介性の新興感染症であるダニ脳炎、Q熱、ライム病およびつつが虫病について疫学調査を実施して汚染状況を明確にする。また病原性に関与する病原体の因子を同定する。さらに効果的なワクチンを開発する。
研究方法
国内の各地において家畜、野生動物の材料を採取するとともにダニ類を採集した。これらにつき血清疫学調査を実施し汚染地の特定を計り、病原体を分離した。分離した病原体の遺伝子学的、生化学的性状を調査し病原因子の同定を計った。
結果と考察
結果
ダニ脳炎については患者発生地区で採集したヤマトマダニ600匹から2株のウイルスを分離し、本種が流行地での媒介種であることを明らかにした。イヌとウマの血清抗体調査から汚染地が道南の4支庁のに分布することを示した。Q熱リケッチアをヒトの気管支炎、肺炎心内膜炎や肝炎の患者から分離した。家畜、伴侶動物、野生動物、鳥類にも本菌が広く浸潤していることを血清抗体調査と菌分離により示した。分離したQ熱リケッチアには病原性の異なる株の存在することが蛋白質とLPSの構造の違いから示唆された。ライム病ボレリアの病原因子の一つであるスフィンゴ糖脂質結合蛋白質がグリセルアルデヒド-3-リン酸ヒドロゲナーゼホモローグであることを明らかにした。ツツガ虫病患者の発生が5月と11月にピークががあり、しかも山地や農地での作業中に感染することが判明した。
考察
ダニ脳炎が北海道の道南を中心に定着していることが判明したため地域住民の感染予防のためワクチンの実用化が強く望まれる。Q熱リケッチアがわが国で各種疾患の原因となっていることが示されたので、今後サーベイランスによる実態調査と予防対策の構築が必要となった。ライム病ボレリアの病原因子が同定されたことから、これをワクチンとして使用する可能性が開けた。ツツガ虫病患者の発生状況が判明したため、患者多発地域住民の感染予防のための対策を効率的に実施可能となった。
結論
わが国でダニ脳炎、Q熱、ライム病、ツツガ虫病の汚染が広範におよぶことが判明した。さらにライムボレリアとQ熱リケッチアでは病原因子の一部が同定された。今後、さらにサーベイランスの強化とワクチンの実用化によりこれら感染症の予防対策の強化が望まれる。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-

研究報告書(紙媒体)