脳死下・心臓停止下臓器斡旋のコーディネートに関する研究

文献情報

文献番号
201023022A
報告書区分
総括
研究課題名
脳死下・心臓停止下臓器斡旋のコーディネートに関する研究
課題番号
H20-免疫・一般-023
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
小中 節子(社団法人日本臓器移植ネットワーク 医療本部)
研究分担者(所属機関)
  • 朝居 朋子(社団法人日本臓器移植ネットワーク 医療本部)
  • 芦刈 淳太郎(社団法人日本臓器移植ネットワーク コーディネーター部)
  • 岩田 誠司(財団法人福岡県メディカルセンター)
  • 重村 朋子(日本医科大学学生相談室)
  • 福嶌 教偉(大阪大学大学院医学研究科)
  • 横田 裕行(日本医科大学大学院医学研究科侵襲生体管理学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
3,772,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2010年7月17日より、本人意思が不明の場合は家族承諾で臓器提供可能とした「臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律(以下改正法と略す)」が施行となり、脳死下臓器提供数の増加が想定されている。①ドナー家族の心理過程・心理適応と家族支援に関する調査、②脳死判定・ドナー管理・摘出手術など臓器提供状況についての臓器提供施設調査、③レシピエントの意思確認、臓器搬送、移植にいたる状況に関する移植施設調査を行い、結果分析をもとに今後のより良いコーディネート活動を検討する。実際の移植コーディネーター(以下Coと略す)の業務・教育研修を本研究成果から検討し、わが国における移植Co教本概説を作成し、今後の移植Coの質の充実を目指す。
研究方法
①過去2年間の「脳死と思われる状態」と説明を受けた15遺族と脳死を経ずに予期せぬ死別体験した11家族への質問紙・ロングインタビュー法調査、入院時カルテ情報収集の基礎データから検証と探索と考察を行う。②3方向の研究結果に基づき脳死下臓器提供時のCo業務の研修用冊子と、移植Co教本概説を作成する。
結果と考察
①脳死患者家族、予期せぬ死別経験家族ともに思いもかけない突然の死別という点から心的外傷ストレス反応を示していることが見られた。脳死患者家族に未解決の悲嘆と葛藤の反応がより強くでており、周トラウマ期解離症状を表す患者が30%あり、脳死患者家族への臓器提供に関する説明に際しては心理的ケアの体制が必要と考えられた。②“脳死下臓器提供用移植Coのための研修用ポケットブック(7カテゴリーの業務ポイント解説と132業務項目の経験禄およびチエックリスト)”と、移植Co業務(死後の臓器提供・臓器提供者家族対応・臓器移植医療の普及啓発)に必要な知識や業務を、一般科目、基礎医学、臨床医学の3章・25項目の構成よりなる”移植コーディネーター教本概説”をまとめた。
結論
3年間に及ぶ本研究結果の織り込み、更に小児下臓器提供などを含めた改正法施行に対応した“移植コーディネーター教本概説”をまとめた。移植Coには役割と学ぶべき事項が明確になり、わかり易さに繋がり、この概説を用いた教育カリキュラムによる教育を行うことで我が国における移植Coの質の向上に繋がる。今後は必要とする移植Co等が幅広く活用できる方策が必要である。

公開日・更新日

公開日
2011-09-30
更新日
-

文献情報

文献番号
201023022B
報告書区分
総合
研究課題名
脳死下・心臓停止下臓器斡旋のコーディネートに関する研究
課題番号
H20-免疫・一般-023
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
小中 節子(社団法人日本臓器移植ネットワーク 医療本部)
研究分担者(所属機関)
  • 朝居 朋子(社団法人日本臓器移植ネットワーク)
  • 芦刈 淳太郎(社団法人日本臓器移植ネットワーク)
  • 岩田 誠司(財団法人福岡県メディカルセンター)
  • 重村 朋子(日本医科大学学生相談室)
  • 福嶌 教偉(大阪大学大学院医学研究科)
  • 横田 裕行(日本医科大学大学院医学研究科侵襲管理学)
  • 中西 健二(龍谷大学人間・科学・宗教オープン・リサーチ・センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2010年7月17日より、本人意思が不明の場合は家族承諾で臓器提供可能とした「臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律(以下改正法と略す)」が施行となり、脳死下臓器提供数の増加が想定されている。①ドナー家族の心理過程・心理適応と家族支援の調査、②脳死判定・ドナー管理・摘出手術などの臓器提供施設調査、③レシピエントの移植に至る状況の移植施設調査を行い、結果分析をもとに今後のより良いコーディネート活動を検討する。実際の移植コーディネーター(以下Coと略す)の業務・教育研修の検討、移植Co教本概説の作成等、今後の移植Coの質の充実を目指す。
研究方法
①ドナー家族の心理的適応と影響要因に関する海外文献(72本)、「脳死と思われる状態」と説明を受けた15遺族と脳死を経ずに予期せぬ死別体験した11家族の質問紙・インタビュー法調査・カルテ情報収集と、347心停止後腎提供ドナー家族の質問紙調査。②脳死臓器提供を経験した62施設のアンケート調査、脳死臓器提供80事例のCo派遣状況の調査、③51認定移植施設のうち移植実施状況調査。
結果と考察
①家族と死別した家族には約3割に心理的不適応反応が見られ、脳死患者家族に未解決の悲嘆・葛藤の反応がより強く、終末期には心理的ケア体制が必要と考える。心停止ドナー家族の79.3%が臓器提供に満足していたが、移植Coは家族の喪失感に配慮し、家族が後悔しないような関わりを持つ事が大切である。② 臓器提供病院は脳死判定などの負担があり、脳死臓器移植の経験は一部の移植施設に限局していた。臓器提供病院負担・臓器移植病院状況やドナー家族の心情に配慮した移植Co業務の確立と専門家の育成により、増加する臓器提供に適切に効率的に対応できると考える。研究成果として“移植Coのための研修用ポケットブック(脳死下用と心停止用)と”移植Co教本概説”をまとめた。
結論
“移植Co教本概説”用いた教育カリキュラム作成と研修体制による移植Co育成により、移植Coの質が向上され、臓器提供を考える患者と家族、そして関連する医療チームへの適切なコーディネーションに結びつくと確信している。又、臓器提供病院における終末期から臓器提供後における家族支援は、グリーフケアを意識した医療スタッフと移植Coが協働する体制の構築、及び社会を巻き込んだ家族支援体制の構築が今後の課題と考える。

公開日・更新日

公開日
2011-09-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201023022C

成果

専門的・学術的観点からの成果
臓器の移植に関する法律施行から13年後の2010年7月17日に臓器移植法の一部改正が公布、1年後に施行となった。これまでの67臓器提供事例のドナー家族の心情と、実際に臓器提供を経験した提供施設主治医や移植を実施した移植施設状況、そして臓器提供時のコーディネーションを担った移植コーディネーターの派遣状況の調査分析を初めて行った。このことは今後のわが国の臓器移植医療を充実するうえでの基礎データとして大きな意義がある。家族対応を担う移植コーディネーターの業務を確立・専門家育成するために必須である。
臨床的観点からの成果
改正法施行により、本人意思が不明な場合は家族の承諾により臓器提供が可能となる、つまり小児からの臓器提供が可能となり、臓器提供数の増加が想定された。本人意思が存在しない故の家族負担の増加、臓器提供数は年平均5例から80例に増加などの意見が聞かれ、臓器提供時のコーディネーションを担う移植Coには質と効率性の両面からの改善が必要である。今回の研究結果を生かし“移植Coの為の研修用ポケットブック(脳死下用と心停止用)と”移植Co教本概説”を作成したことは、臓器提供における臨床上の成果と考える。
ガイドライン等の開発
改正臓器移植法(案)の審議時からドナー家族対応の重要性とドナー家族対応を行う移植コーディネーターの質・量の確保が急務であるとの議論がされた。親族優先提供、小児からの提供などに関する移植Coの家族説明内容、意思確認方法、家族面談時の姿勢などがガイソラインに定めている。法改正後の移植Co研修、脳死患者対応セミナーには、本研究結果である家族の心理過程、心理適応に基づいたドナー家族対応の研修を行った。今後の移植Co教育に用いるCo研修用冊子と移植Co教本概説を作成した。
その他行政的観点からの成果
改正臓器移植法が施行され、臓器提供する、臓器提供しない、臓器移植をうける、臓器移植をうけないという国民の意思は公平に扱われることが提案者の趣旨である。行政的にはこの法を遵守して臓器移植医療が公平・公正・適切に遂行されることが重要である。本研究(わが国の臓器移植医療における客観的データ)結果を基礎とした“Co教本”は、今後の教育研修、適切で効率的なCo体制を構築するうえでなくてはならないものであり、有効となりうる。ひいては、臓器提供を考える国民一人一人への利益に繋がることから社会的意義は大きい。
その他のインパクト
研究結果である心停止後の腎提供を経験したドナー家族調査結果とわが国の15歳未満からの心臓停止後腎臓提供29例の分析結果を学会において発表した。研究内容に対して、報道から取材を受けた。

発表件数

原著論文(和文)
24件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
25件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
小中節子
脳死臓器提供者の家族と家族支援の実際
四国医学雑誌 , 104-109  (2009)
原著論文2
小中節子、芦刈淳太郎、野本亀久雄
日本臓器移植ネットワークからの報告
移植 , 44 , 108-116  (2009)
原著論文3
小中節子
臓器移植コーディネーターの仕事―看護のキャリアを活かして
現代のエスプリ , 510 , 69-78  (2010)
原著論文4
小中節子
解説「改正臓器移植法の概要」
看護 , 62 (2) , 66-69  (2010)
原著論文5
小中節子
移植医療の現状と課題
学生のための医学概論 , 183-192  (2010)
原著論文6
小中節子
わが国の小児臓器移植医療をいかに発展させるか「ドナー家族への説明と臓器提供後のフォロー」
小児科 , 893-902  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-04-27
更新日
2015-06-29

収支報告書

文献番号
201023022Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,772,000円
(2)補助金確定額
3,772,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 0円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 0円
間接経費 0円
合計 0円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-