訪問看護サービスの安全管理に係る多角的・科学的エビデンス構築

文献情報

文献番号
202515004A
報告書区分
総括
研究課題名
訪問看護サービスの安全管理に係る多角的・科学的エビデンス構築
研究課題名(英字)
-
課題番号
24GA1002
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
山本 則子(東京大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 吉岡 京子(東京大学 大学院医学系研究科)
  • 角川 由香(東京大学 大学院医学系研究科)
  • 矢坂 泰介(東京大学 大学院医学系研究科)
  • 辻村 真由子(滋賀医科大学 医学部看護学科)
  • 柏原 康佑(東京大学 医学部附属病院)
  • 沼田 華子(東京大学 大学院医学系研究科)
  • ELTAYBANI SAMEH(エルタイバニ サメハ)(東京大学 大学院医学系研究科)
  • 内山 瑛美子(東京大学 大学院工学系研究科)
  • 五十嵐 歩(千葉大学大学院 看護学研究院)
  • 高岡 茉奈美(千葉大学大学院 看護学研究院)
  • 山名 隼人(自治医科大学 データサイエンスセンター)
  • 平原 優美(日本訪問看護財団)
  • 山本 なつ紀(滝口 なつ紀)(慶應義塾大学 看護医療学部)
  • 弓野 大(医療法人社団ゆみの)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
5,539,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、訪問看護の質と安全性の向上を目的として、訪問看護利用者における自宅内発生事故の実態把握と予防・対応策の検証を行うものである。具体的には、①訪問看護事業所における安全管理体制と事故内容の実態把握、②自治体による事故報告の把握・活用状況の解明、③レセプトデータを用いた事故の実態分析、④高齢心不全患者を対象とした事故予防効果の検証を通じて、訪問看護における包括的な安全管理体制の構築に資する知見を得ることを目指した。
研究方法
本研究は4つの研究課題から構成された。
研究1では、全国の訪問看護事業所を対象とし、訪問看護事業所における安全管理体制と事故内容の実態把握を目的とした横断調査ならびに、訪問看護事業所における安全管理体制構築に関するインタビュー調査を実施した。
研究2では、被災3県を除く全国の自治体を対象に、訪問看護利用者の事故報告に関する横断的Web調査を行った。この結果を踏まえ、訪問看護事業所における事故情報の分析または活用に取り組んでいる自治体を対象にインタビュー調査を実施した。
研究3では、2県(A県、B県)の国民健康保険および後期高齢者医療制度の医療レセプトデータならびに介護レセプトデータを入手し、個人レベルで連結したデータベースを構築し、このうちA県のデータを用いて分析を行った。
研究4では、東京都内のクリニック3拠点で65歳以上の心不全患者を対象とした前向き縦断調査と、訪問看護利用者および家族へのインタビュー調査を実施した。
結果と考察
研究1の全国調査(回答855事業所、回収率12.7%)では、過去1年間の事故類型として薬剤関連(22.2%)、訪問スケジュール関連(18.9%)、交通事故関連(17.7%)の順に多く、訪問看護特有の事故類型が明らかになった。安全管理体制については、担当者配置(92.2%)や対応手順の文書化(89.9%)など形式的な整備は進んでいる一方、安全文化の醸成(50.2%)、基本理念の定期的明示(44.6%)など組織文化や日常的実践に関わる項目は50〜60%程度にとどまり、設置主体間で有意差が認められた。インタビュー調査からは、事故報告に伴う現場負担や心理的要因、判断基準の不明確さが課題として示された一方、他事業所との比較や具体的予防策のフィードバックが得られる仕組みがあれば、報告への動機づけにつながるとの意見が得られた。研究2では、昨年度の全国自治体調査の結果を踏まえ事故情報の分析または活用に取り組んでいる6自治体へのインタビュー調査を実施した結果、分析・活用まで一貫して実施できている自治体は限定的であり、業務負担の軽減や専門職体制の整備が課題として明らかになった。これらの結果を踏まえ、既存システムとの連動や広域的なデータ集積・分析体制、事業所へのフィードバック機能を盛り込んだ改訂版システムモデル案を提示した。研究3では、2県の医療・介護レセプトデータを連結したデータベースを構築し、A県の2020〜2022年度に訪問看護(介護保険)を利用した10,389名を対象とした分析から、外傷入院の発生率は4.74件/100人年であることが明らかになった。研究4では、高齢心不全患者を対象とした前向き縦断調査(訪問看護利用群35名、非利用群40名)において、最も発生率が高いのは転倒/転落であり、外傷の有無を含めると全体で44%(訪問看護利用群45.7%、非利用群42.5%)であった。事故の要因としては心不全症状の悪化のみならず、加齢に伴う判断力のゆらぎ、独居時間帯、事故が発生しやすい環境など複合して起きている場合が多く見られた。
結論
4つの研究結果を統合し、訪問看護における安全管理体制構築の指針案として、「事業所単位の安全管理体制整備(6分野9項目)」と「事故情報等の集積・共有システムの構築」という2つの柱を提示した。9項目は「基本的要件」と「推奨事項」に整理し、事業所の規模や資源に応じた段階的な体制整備を促す枠組みとした。事故情報等集積・共有システムのモデル案は、まず介護保険利用者を対象としたシステムの構築・運用を優先しつつ、将来的には医療保険利用者への拡張、インシデント情報も含めた包括的な情報収集・分析体制への発展が期待される。訪問看護における安全管理体制の構築は、利用者の安全確保のみならず、訪問看護職の安全な労働環境の整備、ひいては訪問看護サービスの質向上に寄与するものである。本研究で提示した指針案が、今後の訪問看護における安全管理体制の発展に貢献することを期待する。

公開日・更新日

公開日
2026-05-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-05-29
更新日
-

文献情報

文献番号
202515004B
報告書区分
総合
研究課題名
訪問看護サービスの安全管理に係る多角的・科学的エビデンス構築
研究課題名(英字)
-
課題番号
24GA1002
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
山本 則子(東京大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
-
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
202515004C

収支報告書

文献番号
202515004Z