文献情報
文献番号
201023018A
報告書区分
総括
研究課題名
新たな移植細胞療法に向けた造血幹細胞のex vivo増幅技術の開発と応用
課題番号
H20-免役・一般-018
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
中畑 龍俊(京都大学 iPS細胞研究所)
研究分担者(所属機関)
- 金倉 譲(大阪大学大学院医学系研究科 血液・腫瘍内科)
- 前川 平(京都大学医学部附属病院 輸血細胞治療部)
- 平家 俊男(京都大学大学院医学研究科 発達小児科学)
- 伊藤 仁也(神鋼病院 血液病センター 細胞治療室 )
- 田中 宏和(大阪大学大学院医学系研究科 血液・腫瘍内科)
- 清水 則夫(東京医科歯科大学 難治疾患研究所)
- 千葉 滋(筑波大学大学院 人間総合科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
21,120,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
臍帯血移植の問題点として、必要な数の造血幹細胞が得られない、移植後の造血回復が遅延するなどが指摘されている。したがって臍帯血造血幹細胞のex vivo増幅法の確立は急務である。すでに海外では臨床研究も進められているが、既存の方法によるex vivo増幅臍帯血移植では期待されたような造血回復の促進効果は得られていない。一方ex vivoで加工した細胞を用いた臨床研究を実施する場合、GMP (good manufacturing practice)に則った治療用細胞製剤の製造法、品質管理法の確立は重要な課題である。
研究方法
ex vivo増幅臍帯血を用いた臨床研究「急性白血病患者に対する同種臍帯血由来ex vivo増幅CD34陽性細胞移植に関する臨床第I相/前期第II相試験」の1例で実際にex vivo増幅臍帯血移植を行い、早期に生着しながら残念ながら拒絶された例についてその病態を詳細に検討した。
細胞治療を実現するために、アカデミアによるGMPに則った細胞治療製剤の製造、品質管理法の基盤づくりから、臨床応用へのトランスレーショナルリサーチとして、7つのテーマを設定し、研究を続けた。
細胞治療を実現するために、アカデミアによるGMPに則った細胞治療製剤の製造、品質管理法の基盤づくりから、臨床応用へのトランスレーショナルリサーチとして、7つのテーマを設定し、研究を続けた。
結果と考察
保存血清や細胞を用いた様々な検討の結果、移植後の感染を契機に上昇した炎症性サイトカインのうち、TNF-α、INF-γが造血幹/前駆細胞のApoptosisに関与している可能性が示唆された。本症例では拒絶後施行された同種末梢血幹細胞移植でも全く同様な経過で感染を契機に急速に拒絶に向かった反応がみられたことから、特殊な症例であった可能性も示唆され、今後症例の集積が必要と考えられた。
Clinical levelでの製造法の開発においては、完全無血清培地の開発、閉鎖系培養法の確立、デバイス開発を進めた。細胞治療製剤の品質管理においては、無菌試験やウイルス、マイコプラズマ否定試験を迅速かつ自動化を行い、品質管理の手順書を作成した。新たな免疫不全マウスを用いた細胞治療製剤の長期安全性や有効性を予測する方法を開発した。従来のサイトカインに加えて、可溶性Notch リガンドDelta1-Fcキメラ蛋白を固相化条件で造血幹細胞を増幅する有効な系が確立された。
Clinical levelでの製造法の開発においては、完全無血清培地の開発、閉鎖系培養法の確立、デバイス開発を進めた。細胞治療製剤の品質管理においては、無菌試験やウイルス、マイコプラズマ否定試験を迅速かつ自動化を行い、品質管理の手順書を作成した。新たな免疫不全マウスを用いた細胞治療製剤の長期安全性や有効性を予測する方法を開発した。従来のサイトカインに加えて、可溶性Notch リガンドDelta1-Fcキメラ蛋白を固相化条件で造血幹細胞を増幅する有効な系が確立された。
結論
今回の拒絶においてはTNF-α、INF-γが造血幹/前駆細胞のApoptosisに関与している可能性が示唆された。品質管理法の自動化、製造施設の基準づくり、閉鎖系、無血清培養法の確立など成果をあげた。真菌および細菌を網羅的・迅速に検出する系を確立した。これらの成果はこれから行われるさまざまな再生医療に応用されていくことが期待される。
公開日・更新日
公開日
2011-09-30
更新日
-