同種末梢血幹細胞移植を非血縁者間で行う場合等の医学、医療、社会的基盤に関する研究

文献情報

文献番号
201023017A
報告書区分
総括
研究課題名
同種末梢血幹細胞移植を非血縁者間で行う場合等の医学、医療、社会的基盤に関する研究
課題番号
H20-免疫・一般-017
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
宮村 耕一(名古屋第一赤十字病院 血液内科)
研究分担者(所属機関)
  • 小寺 良尚(愛知医科大学 医学部 造血細胞移植振興寄附講座)
  • 日野 雅之(大阪市立大学大学院 医学研究科 血液腫瘍制御学 血液内科学)
  • 岡本 真一郎(慶應義塾大学 医学部 内科)
  • 豊嶋 崇徳(九州大学病院 遺伝子・細胞療法部)
  • 田中 淳司(北海道大学大学院 医学研究科 血液内科学分野・血液内科学)
  • 長藤 宏司(久留米大学医学部内科学講座血液・腫瘍内科部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
13,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成22年度には1)ドナーの中長期有害事象を把握するドナーフォローアップシステムの確立、2)移植成績を前向きに検討する実施計画書の作成、3)ドナーコーディネートマニュアルの完成、4)施設監査の執行、5)末梢血幹細胞の採取・運搬・利用方法の決定、6)末梢血幹細胞移植の問題点である慢性GVHDに対する治療法の研究を行う。
研究方法
1)ドナーの短期の安全を確認する臨床研究について検討し、ドナーの一生にわたるフォローを可能とするドナー手帳を作成する。2)非血縁者間末梢血幹細胞移植開始にあたり移植後100日以内のドナーおよび患者の安全性を主要評価項目とする臨床研究を開始する。3)完成したドナー適格基準およびドナーコーディネートマニュアル、採取マニュアルを、日本骨髄バンクのドナー安全委員会、造血細胞移植学会ドナー委員会、輸血・細胞治療学会アフェレーシス委員会との共同で骨髄ドナーとの整合性をはかり、まとめあげる。4)平成21年度に完成した採取施設基準および移植施設基準をもとに、骨髄移植推進財団、関連学会、施設と調整し査察を行う。5)採取方法および運搬方法について、最終的な調整を行う。6)21年度の調査で必要と確認された体外紫外線治療を本邦へ導入する手続きを開始する。
結果と考察
1)ドナー安全を生涯にわたり補助するドナー手帳ができた。これにより中長期的のドナー安全のモニターが可能となる。QOLを含めた短期のドナー安全についての観察研究を作成した。2)非血縁者間末梢血幹細胞移植はドナーの免疫力により白血病の再発を抑える一方でGVHDの増加が懸念されるため、前向き観察研究を行い成績向上の礎とするとともに、体外紫外線治療を導入に向けて企業との交渉を開始した。3)安全にURPBSCTを開始できるように施設基準を作成し、平成22年度に20施設が認定された。これらの施設については「院内における血液細胞処理のための指針」などの品質基準・安全基準に基づいた運営が行われることを求めた。4)採取した細胞の保存、運搬についてのマニュアルを作成するとともに、DLIのための凍結を認め利便性を図ることができた。
結論
H21年度までに作成された各種マニュアル、基準を各学会、骨髄バンクとの協力により完成し、平成22年度にはドナー募集開始および第一例目の非血縁者間末梢血幹細胞移植を行うことができた。

公開日・更新日

公開日
2011-09-30
更新日
-

文献情報

文献番号
201023017B
報告書区分
総合
研究課題名
同種末梢血幹細胞移植を非血縁者間で行う場合等の医学、医療、社会的基盤に関する研究
課題番号
H20-免疫・一般-017
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
宮村 耕一(名古屋第一赤十字病院 血液内科)
研究分担者(所属機関)
  • 小寺 良尚(愛知医科大学 医学部 造血細胞移植振興寄附講座)
  • 日野 雅之(大阪市立大学大学院 医学研究科 血液腫瘍制御学 血液内科学)
  • 岡本 真一郎(慶應義塾大学 医学部 内科)
  • 豊嶋 崇徳(九州大学病院 遺伝子・細胞療法部)
  • 田中淳司(北海道大学大学院 医学研究科 血液内科学分野・血液内科学)
  • 長藤 宏司(久留米大学 医学部内科学講座 血液・腫瘍内科部門)
  • 神田 善伸(自治医科大附属さいたま医療センター 血液科)
  • 金 成元(国立がん研究センター中央病院 血液腫瘍科・造血幹細胞移植科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ほとんどの諸外国ですでに行われており、ドナーと患者双方に恩恵をもたらす非血縁者間末梢血幹細胞移植を本邦において速やかに実施することを最終目的として、その医学、医療、社会的基盤を作る。
研究方法
今まで蓄積された血縁者間のデータを再解析し、ドナーの意向と安全性に配慮したドナー適格基準、コーディネートマニュアル、ドナーの短期および中長期有害事象を把握するドナーフォローアップシステム、安全で効率的な末梢血幹細胞採取のための採取施設基準、採取マニュアルなどを海外の情報も参考に作成するとともに、これらを検証する臨床研究を計画する。また欧米では広く行われている慢性GVHDの治療法と「血液細胞の品質管理」について調査し導入する。
結果と考察
ドナーにおいて比較的重篤と考える早期の有害事象が0.6%発生しており、これに対応したドナー適格基準および採取マニュアルを作成した。また患者主治医、ドナー、ボランティアなど様々な層の意見を聞き、ドナーの意向に配慮するとともに、患者側の要望もドナーに伝わるコーディネートマニュアルを作成した。これらを検証する観察研究を作成した。また日本造血細胞移植学会と共同でドナー手帳を作成しこの配布を開始した。さらに長期の有害事象の収集を国際的な枠組みで行えるように現在構築中である。安全で効率的な末梢血幹細胞採取を保障する採取施設基準として、血縁者ドナーからの採取経験が豊富であることなど要件を定め、平成23年3月までに20施設が認定された。慢性GVHDに関しては体外紫外線照射治療の調査を行い、導入に向けて整備中である。欧米と比較して遅れている本邦の「血液細胞の品質管理」については学会が作成した「院内における血液細胞処理のための指針」が遵守されるようマニュアルに盛り込んだ。非血縁者間末梢血幹細胞移植の導入における整備を行う中で本邦における安全管理・品質管理の向上がなされるものと期待される。
結論
本研究班では国内外の調査を行い、日本骨髄バンク・関連学会・移植施設と協力して、非血縁者間末梢血幹細胞移植を安全に開始するための各種基準、マニュアルの作成を行ない、平成22年度に移植は開始された。欧米に遅れること10年であるが、ドナー安全の重視というわが国の特徴を堅持し、国内のみならず国際的な視野でドナーおよびレシピエントの安全を観察し、さらなる採取・移植方法の改善、開発に努力することが求められている。

公開日・更新日

公開日
2011-09-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201023017C

成果

専門的・学術的観点からの成果
平成12年から開始された「血縁者同種末梢血幹細胞ドナーの安全性に関わる5年間の調査」を解析し比較的重篤と考える採取早期の有害事象が0.6%発生していたことより、このことをドナーに情報開示し、その防止策をドナー適格基準、採取マニュアルに書き入れた。血縁における末梢血幹細胞移植の成績を解析し、GVHDが増えることを予想されたため、患者の安全を検討する観察研究を開始し、ECPの導入に反映させた。全国の移植施設の調査を行い、品質管理、安全管理の観点からの今後の問題点を明らかにした。
臨床的観点からの成果
末梢血幹細胞移植は骨髄移植と比較して血球回復が早く生着しやすいこと、抗白血病効果が強いことから、前処置を弱めたミニ移植および再発しやすい患者の移植に必要な治療法である。また自己血の保存や手術室の必要がなくコーディネート期間の短縮が期待される。さらに移植の適応となる放射線被ばく者へ最短10日で移植を行うことができ、危機管理の面からも本邦に必要な手段である。またドナーにおいては善意がかなえられやすい環境となり、今後ドナーの登録が増え、ひいてはより多くの患者が恩恵を受けるものと考えられる。
ガイドライン等の開発
日本造血細胞移植学会、日本輸血・細胞治療学会の「末梢血幹細胞採取マニュアル」「院内における血液細胞処理のための指針」作成に研究班員の豊嶋崇徳が学会ガイドライン委員長として作成に関わった。また財団の各種基準、マニュアルとして、「ドナー適格性判定基準」「コーディネート業務マニュアル」「非血縁者間末梢血幹細胞採取マニュアル(「採取施設基準」「移植施設基準」を含む)」を研究班と財団が協力して原案が作成され、平成22年8月5日に行われた厚生科学審議会 「造血幹細胞移植委員会」において承認された。
その他行政的観点からの成果
平成22年8月5日に行われた厚生科学審議会 「造血幹細胞移植委員会」では班員の小寺より、厚生労働科学研究「血縁者同種末梢血幹細胞ドナーの安全性に関わる5年間の調査」により結論された「末梢血幹細胞移植ドナーの安全性」について、また班長の宮村により医学的観点から非血縁者間末梢血幹細胞移植の導入が必要なことを説明し、開始について了承された。また体外紫外線照射について、その必要性を調査し学会と協力し「医療ニーズの高い医療機器等の早期導入」に申請を行い受理され、現在本邦へ導入の方向で準備が進められている。
その他のインパクト
平成21年から毎年1月に公開シンポジウムを開催し、非血縁者間末梢血幹細胞移植の必要性、有用性、問題点などを、広く人を集め公開し、議論した。平成20年度より各種マスコミで非血縁者間末梢血幹細胞移植開始準備について取り上げられてきたが、平成22年には、日本経済新聞の10月21日の夕刊 9面(生活・ひと)「らいふプラス」に
「白血病:骨髄以外の治療法:「末梢血」移植家族以外も解禁」と題され一面を取って本研究班の研究成果を含め詳しく紹介された。

発表件数

原著論文(和文)
83件
原著論文(英文等)
146件
その他論文(和文)
46件
その他論文(英文等)
13件
学会発表(国内学会)
68件
学会発表(国際学会等)
18件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
その他成果(普及・啓発活動)
3件
公開シンポジウムを毎年行った。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Shigematsu A,Kondo T, Tanaka J,et al
Excellent outcome of allogeneic hematopoietic stem cell transplantation using a conditioning regimen with medium-dose VP-16,cyclophosphamide and total body irradiation for adult patients with acute lymphoblastic leukemia
Biol Blood Marrow Transplant , 14 , 568-575  (2008)
原著論文2
Nakane T, Nakamae H, Hino M,et al
Heart rate variability during and after peripheral blood stem cell leukapheresis in autulogous transplant patients and allogeneic transplant donors.
International Journal of Hematology , 91 , 478-484  (2010)
原著論文3
Hishizawa M, Kanda J, Nagafuji K, et al
Transplantation of allogeneic hematopoietic stem cells for adult T-cell leukemia: a nationwide retrospective study.
Blood , 116 , 1369-1376  (2010)
原著論文4
Atsuta Y, Suzuki R, Kodera Y,et al
Disease-specific analyses of unrelated cord blood transplantation compared with unrelated bone marrow transplantation in adult patients with acute leukemia
Blood , 113 (8) , 1631-1638  (2009)
原著論文5
Nishiwaki S, Terakura S,Miyamura K,et al
Impact of macrophage infiltration of skin lesions on survival after allogeneic stem cell transplantation: a clue to refractory graft-versus-host disease.
Blood , 114 , 3113-3116  (2009)
原著論文6
Kuwatsuka Y, Miyamura K, Miyamura K,
Hematopoietic stem cell transplantation for core binding factor acute myeloid leukemia: t(8;21) and inv(16) represent different clinical outcomes
Blood , 113 , 2096-2103  (2009)
原著論文7
Nishiwaki S, Inamoto Y, Miyamura K,et al
Allogeneic stem cell transplantation for adult Philadelphia chromosome-negative acute lymphocytic leukemia: comparable survival rates but different risk factors between related and unrelated transplantation in first complete remission.
Blood , 116 , 4368-4375  (2010)
原著論文8
Kim SW, Matsuo K, Fukuda T,et al
Reduced-intensity unrelated donor bone marrow transplantation for hematologic malignancies.
International Journal of Hematology , 88 , 324-330  (2008)
原著論文9
Asakura S, Hashimoto D, Teshima T,et al
Alloantigen expression on non-hematopoietic cells reduces graft-versus-leukemia effects in mice
J Clin Invest , 120 , 2370-2378  (2010)
原著論文10
Oh I, Ozaki K, Teshima T,et al
Altered effector CD4+ T cell function in IL-21R-/- CD4+ T cell-mediated graft-versus-host disease
J Immunol , 185 , 1441-1444  (2010)
原著論文11
Gratwohl A,Baldomero H, Aljurf M, Kodera Y,et al
Hematopoietic stem cell transplantation: a global perspective.Worldwide Network of Blood and Marrow Transplantation
JAMA , 303 (16) , 1617-1624  (2010)
原著論文12
Nagafuji K, Matsuo K, Teshima T,et al
Peripheral blood stem cell versus bone marrow transplantation from HLA-identical sibling donors in patients with leukemia: a propensity score-based comparison from the Japan Society for Hematopoietic Stem Cell Transplantation registry.
Int J Hematol , 91 (5) , 855-864  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-04-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201023017Z