組織適合性に基づく非血縁同種造血幹細胞移植の成績向上に関する研究

文献情報

文献番号
201023014A
報告書区分
総括
研究課題名
組織適合性に基づく非血縁同種造血幹細胞移植の成績向上に関する研究
課題番号
H20-免疫・一般-014
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
森島 泰雄(愛知県がんセンター中央病院 血液・細胞療法部)
研究分担者(所属機関)
  • 猪子 英俊(東海大学 医学部)
  • 笹月 健彦(九州大学 高等研究院)
  • 小川 誠司(東京大学 医学部)
  • 村田 誠(名古屋大学 医学部)
  • 屋部 登志雄(東京都赤十字血液センター)
  • 高見 昭良(金沢大学附属病院 輸血部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
23,433,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本骨髄バンク(JMDP)からの非血縁者間骨髄移植が18年間に約12000例、実施されているが、長期生存率は約60%に留まり満足すべきものではない。
 本研究は、JMDPを介した患者とドナーのペアーの同意が得られた検体を保存し、より精緻な細胞遺伝学的な手法(を用い、HLAとHLA以外の組織適合性抗原とその多型が移植免疫反応に与える影響を明らかにする。これら患者とドナーの組織学的な情報と臨床情報に基づき、適切なドナー選択の個別化アルゴリズム(基準)を構築することを目的とする。
研究方法
1.非血縁者間骨髄移植症例とそのドナーの検体保存。2.HLA 抗原座およびHLA抗原型の違いが移植免疫反応と生存に及ぼす影響の解析。3.HLAハプロタイプの均一性の検討。4.国際ワークショップにおける検討。5.HLA以外の組織適合性に関与する抗原と多型の移植成績に及ぼす影響の検討として、1)NK細胞受容体関連抗原の関与:KIR関連遺伝子とその多型の解析、2)HLA領域とその他の領域のマイクロサテライト解析、3)サイトカイン受容体多型等の解析、4)Whole genome SNPs解析6.統合解析:本研究で有意になった多数の組織適合性抗原多型の中で臨床的に有用な多型の重みづけ解析(統合解析)を行った。
結果と考察
解析結果はJMDPにおけるHLA検査法とドナー選択への適格で迅速な導入がなされてきた。計画的かつ継続的な保存事業による多数検体の保存と組織適合性研究者による最新の組織適合性研究手法の導入によりはじめて可能になるものである。本研究で得られる新しい精緻な組織適合性検索とドナー選定への応用により、今後いっそう移植成績の向上とバンクの効率的な運用に寄与するものと考えられる。また、人のGVHD発症機構を明らかにする上で、基礎的にも重要な知見を提供している。今後、非血縁さい帯血移植、非血縁末梢血幹細胞移植における同様な解析とこれらの結果にもとづく、移植法選択のアルゴリズムの確立が急務である。
結論
非血縁者間骨髄移植を受けた患者とドナーのHLA遺伝子型とその他の組織適合性抗原を精緻な細胞遺伝学的な手法(HLAとその分子解析、HLAハプロタイプ解析、HLA遺伝子以外の多型解析(Whole genome SNPs 、マイクロサテライト、サイトカイン受容体、NK細胞受容体)、In vitro解析)で解析することにより得られたGVHD、GVLに関与する組織適合性抗原の同定や新知見は、JMDPでのドナー選択HLA検査や移植の臨床に応用され、移植成績の向上をはかることができた。

公開日・更新日

公開日
2011-09-30
更新日
-

文献情報

文献番号
201023014B
報告書区分
総合
研究課題名
組織適合性に基づく非血縁同種造血幹細胞移植の成績向上に関する研究
課題番号
H20-免疫・一般-014
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
森島 泰雄(愛知県がんセンター中央病院 血液・細胞療法部)
研究分担者(所属機関)
  • 猪子 英俊(東海大学 医学部)
  • 笹月 健彦(九州大学 高等研究院)
  • 小川 誠司(東京大学 医学部)
  • 村田 誠(名古屋大学 医学部)
  • 屋部 登志雄(東京都赤十字血液センター)
  • 高見 昭良(金沢大学附属病院 輸血部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
非血縁移植の成績を悪化させる主な原因は同種移植に伴う重症移植片対宿主病(GVHD)の発症、移植片の拒絶と移植後の造血器腫瘍の再発であり、これら免疫反応と生存に関与するドナーと患者の組織適合性抗原の違いを明らかにする。さらに、これら患者とドナーの組織学的な情報と臨床情報に基づき、適切なドナー選択の個別化アルゴリズム(基準)を構築することを目的とする。
研究方法
HLAとその分子解析(許容できないHLA型の組み合わせ)、HLAハプロタイプ解析(HLA領域のGWAS解析)、HLA遺伝子以外の多型解析(Whole genome SNPs 、マイクロサテライト、サイトカイン受容体、NK細胞受容体)、In vitro解析
結果と考察
HLAとその分子解析:1.許容できない(許容できる)HLA型不適合組み合わせを同定した。2.国際組織適合性ワークショップにおける人種別GVHD頻度、生存率、白血病再発率の比較により、日本人間の非血縁移植は白人間移植よりも良好な成績が得られ、免疫遺伝学的な違いの重要性が示唆された。
HLAハプロタイプ解析(HLA領域のGWAS解析)により日本人における均一性とGVHDへの関与が明らかになった。
HLA遺伝子以外の多型解析(Whole genome SNPs 、マイクロサテライト、サイトカイン受容体、NK細胞受容体)により移植免疫反応に関与する多型が明らかになった。
GVHD等に関与するin vitroでの免疫反応が患者検体を用いて明らかになった。
結論
非血縁者間骨髄移植を受けた患者とドナーのHLA遺伝子型とその他の組織適合性抗原を精緻な細胞遺伝学的な手法(HLAとその分子解析、HLAハプロタイプ解析、HLA遺伝子以外の多型解析で解析することにより得られたGVHD、GVLに関与する組織適合性抗原の同定や新知見は、JMDPでのドナー選択HLA検査や移植の臨床に応用され、移植成績の向上をはかることができた。

公開日・更新日

公開日
2011-09-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201023014C

成果

専門的・学術的観点からの成果
非血縁者間骨髄移植を受けた患者とドナーのHLA遺伝子型とその他の組織適合性抗原を精緻な細胞遺伝学的な手法(HLAとその分子解析、HLAハプロタイプ解析、HLA遺伝子以外の多型解析(Whole genome SNPs 、マイクロサテライト、サイトカイン受容体、NK細胞受容体)、In vitro解析)で解析することにより得られたGVHD、GVLに関与する組織適合性抗原の同定や新知見は、ヒトの急性移植片対宿主病(GVHD)の発症機構やHLA領域の免疫遺伝学的研究の基盤となっている。
臨床的観点からの成果
本研究で得られたGVHD、GVLに関与する組織適合性抗原の同定や新知見は、日本骨髄バンクにおける患者とドナーのHLAに基づくドナー選択基準に導入されている。さらに、ドナー登録時のHLA検査としてHLA-C型のDNA検査が実施されるようになり、迅速な移植までの患者とドナーのコーディネート期間の短縮や、組織適合性の適合度の良いドナーの選択により移植成績の向上をはかることができた。
ガイドライン等の開発
日本造血細胞移植学会の移植適応ガイドラインにおいて、本研究班で得られたドナーと患者のHLA適合度に基づく知見が適応基準として用いられている。
その他行政的観点からの成果
本研究班で得られた非血縁者間骨髄移植に関する成果は、非血縁者間末梢血造血幹細胞移植や非血縁者間さい帯血移植における研究に応用可能であり、これら移植成績の向上も期待できる。
その他のインパクト
海外における非血縁者間移植とわが国における日本人間の移植成績を同じデータベースで比較した報告は他になく、今後の世界的な移植成績の評価や国際間移植の適応を考えるうえで貴重である。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文はすべて英文で国際誌に報告した。
原著論文(英文等)
10件
組織適合性抗原と非血縁者間移植に関する原著論文
その他論文(和文)
5件
造血幹細胞移植と組織適合性に関する総説
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
15件
日本血液学会、日本組織適合性学会、日本造血細胞移植学会
学会発表(国際学会等)
8件
米国血液学会、欧州BMT学会、米国BMT学会など
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
日本骨髄バンクにおけるドナー選択基準への導入、ドナー登録時HLA-CDNA検査の導入
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Morishima S, Ogawa S, Morihsima Y, et al.
Impact of highly conserved HLA haplotype on acute graft-versus-host disease.
Blood , 115 (23) , 4664-4670  (2010)
原著論文2
Yabe T, Matsuo K, Morihsima Y, et al.
killer immunoglobulin-like receptor genotype-patient cognate KIR ligand combination and ATG preadministration are critical factors in outcome of HLA-C-KIR ligand-mismatched T cell-replete unrelated BMT.
Biol Blood Marrow Transplant. , 14 (1) , 75-87  (2008)
原著論文3
Espinoza JL, Takami A, Onizuka M, et al.
NKG2D gene polymorphism has a significant impact on transplant outcomes after HLA-fully-matched unrelated bone marrow transplantation for standard risk hematologic malignancies.
Haematologica. , 94 (10) , 1427-1434  (2009)
原著論文4
Atsuta Y, Suzuki R, Morishima Y, et al.
Disease-specific analyses of unrelated cord blood transplantation compared with unrelated bone marrow transplantation in adult patients with acute leukemia.
Blood , 113 (8) , 1631-1638  (2009)
原著論文5
Kawase T, Matsuo K, Morishima Y, et al.
HLA mismatch combinations associated with decreased risk of relapse: implications for the molecular mechanism.
Blood , 113 (12) , 2851-2858  (2009)
原著論文6
Sugimoto K, Murata M, Terakura S, et al.
CTL clones isolated from an HLA-Cw-mismatched bone marrow transplant recipient with acute graft-versus-host disease.
J. Immunol. , 183 (9) , 5991-5998  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-04-27
更新日
2015-06-29

収支報告書

文献番号
201023014Z