文献情報
文献番号
202512007A
報告書区分
総括
研究課題名
アナフィラキシー発症予防および初動対応の質向上に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
25FE1002
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 さくら(国立病院機構相模原病院 臨床研究センター)
研究分担者(所属機関)
- 海老澤 元宏(国立病院機構相模原病院 臨床研究センター)
- 近藤 康人(藤田医科大学 医学部小児科)
- 高澤 知規(富山大学 医学部麻酔科学講座)
- 田邉 晴山(財団法人救急振興財団救急救命東京研修所 )
- 平田 博国(獨協医科大学 内科学(呼吸器・アレルギー))
- 福冨 友馬(国立病院機構相模原病院 臨床研究センター)
- 山口 正雄(東京大学医学部附属病院 アレルギー・リウマチ内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫・アレルギー疾患政策研究
研究開始年度
令和7(2025)年度
研究終了予定年度
令和9(2027)年度
研究費
3,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
アナフィラキシーは重篤な全身性の過敏反応で急速に発現し、時には致死的転帰をたどる病態である。発症予防および重症化防止には、誘因の把握、適切な初期対応、アドレナリン投与率の向上が重要であるが、医療機関内アナフィラキシーやハチ毒等の職業アレルギー的側面に関する対応を含め、依然として課題は多い。本研究では、免疫アレルギー疾患研究10か年戦略で掲げられた「防ぎ得る死の根絶」を目指し、アレルギー専門医以外の救急救命士を含めた医療従事者を対象としたニーズ調査を行うとともに、既存の知見を整理して、アナフィラキシーの発症予防に関する知識の普及および関係者・関係機関の連携の方法を提案し、その普及啓発のための資材を作成することを目的とする。
研究方法
本研究は3つの研究課題を連携させて実施する3年計画の研究である。研究課題1「アナフィラキシー症例全国調査および悉皆的な疫学調査体制の構築」では、アナフィラキシーの誘因・治療・管理の状況を明らかにし、その変化をモニタリング可能な疫学調査体制を構築することを目指し、調査協力依頼施設の選定、調査方法・内容を検討した。並行して薬物アナフィラキシーの予備検討として医薬品副作用データベース(JADER)を用いた解析を実施した。研究課題2「アナフィラキシー死を削減するための普及啓発活動」では、食物、ハチ毒、薬物、周術期、救急・プレホスピタルの5領域における現状把握と課題整理を実施するとともに、全国の都道府県アレルギー疾患医療拠点病院を対象としてハチ毒アナフィラキシー対策実態調査を行った。研究課題3「アナフィラキシー対策用の資材作成」では、日本アレルギー学会Anaphylaxis対策委員会と共同で啓発資材作成を進めた。
結果と考察
研究課題1では、院外発症では食物・ハチ毒、院内発症では薬物が主要誘因となる二極性を踏まえ、既存の疫学資源(食物アレルギーモニタリング調査、PMDA有害事象データベース、死亡例解析)と相補的に機能する全国調査体制を設計した。アレルギー疾患医療拠点病院およびアレルギー専門医教育研修施設から460施設を選定し、研究班内で協議を重ねて患者調査票最終版(ver.5)を確定した。調査票には、原因抗原、症状、アドレナリン使用、二相性反応、退院後フォロー等を含め、診療実態を包括的に把握できる項目を盛り込んだ。データ収集は郵送およびWebフォームで実施可能とし、2027年1月開始予定の第1回全国調査および以降3年毎の継続調査体制の準備を整えた。JADER解析では2018~2024年の医薬品関連アナフィラキシー12,266例を解析した結果、報告数および死亡例数に大きな変化は認めなかった一方、X線造影剤や抗生物質製剤が依然として重篤例との関連が強いことを明らかにし、院内発症アナフィラキシー対策の重要性を示した。研究課題2では、食物、ハチ毒、薬物、周術期、救急・プレホスピタルの5領域について現状と課題を整理した。食物領域で小児のエピペン処方率は約80%と比較的高い一方で実際の使用率には課題があること、ハチ毒領域では職業曝露者における高い感作率と低いエピペン処方率・携帯率・使用率、薬物領域ではアドレナリン早期投与後も救命困難な症例の存在、周術期領域では皮膚症状を欠く症例の存在、救急・プレホスピタル領域では救急救命士の高い診断精度およびエピペン投与実証事業の進展等が、領域別の主な課題および動向として整理された。また、都道府県アレルギー疾患医療拠点病院を対象としたハチ毒対策実態調査では51施設から回答を得て、救急対応から長期管理への院内連携や、職業団体・行政との連携体制が十分ではない実態が明らかとなった。研究課題3では、日本アレルギー学会Anaphylaxis対策委員会と共同で、ハチ毒アナフィラキシー啓発パンフレットを完成させ、食物アナフィラキシー啓発資材については11セクションからなる内容案を確定、薬物アナフィラキシー資材については2026年度作成に向けた構成検討を開始した。
結論
本年度は、アナフィラキシー症例全国調査体制の構築準備、拠点病院51施設を対象とするハチ毒アナフィラキシー対策実態調査の実施、ハチ毒啓発パンフレットの完成および食物・薬物資材の作成準備を達成し、わが国のアナフィラキシー対策を体系的に推進する基盤を形成した。次年度は、第1回全国調査を開始するとともに、日本アレルギー学会と共同した啓発活動および職業団体への啓発活動を展開し、食物・薬物資材の作成および医療従事者向け「アナフィラキシー対策の手引き」の作成に着手する。
公開日・更新日
公開日
2026-10-27
更新日
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