思春期・若年成人(AYA世代)患者におけるリウマチ医療体制に資する研究

文献情報

文献番号
202512005A
報告書区分
総括
研究課題名
思春期・若年成人(AYA世代)患者におけるリウマチ医療体制に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24FE1003
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
森 雅亮(国立大学法人東京科学大学 生涯免疫医療実装講座)
研究分担者(所属機関)
  • 井田 弘明(久留米大学 医学部 呼吸器・神経・膠原病内科)
  • 伊藤 秀一(横浜市立大学 大学院医学研究科発生成育小児医療学)
  • 梅林 宏明(宮城県立こども病院 リウマチ・感染症科)
  • 金子 佳代子(国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター母性内科)
  • 桐野 洋平(横浜市立大学 医学部)
  • 清水 正樹(東京科学大学 大学院 茨城県小児周産期地域医療学)
  • 楢崎 秀彦(日本医科大学大学院医学研究科小児・思春期医学)
  • 西山 進(一般財団法人倉敷成人病センター リウマチ科)
  • 松井 利浩(独立行政法人国立病院機構相模原病院臨床研究センター リウマチ性疾患研究部)
  • 持田 勇一(横浜市立大学附属市民総合医療センター リウマチ膠原病センター)
  • 矢嶋 宣幸(昭和医科大学 医学部内科学講座リウマチ膠原病内科学部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫・アレルギー疾患政策研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
5,163,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、AYA世代のリウマチ診療における診療科間および医療機関間の連携の現状を実態調査により明らかにし、そこに存在する課題を抽出する。さらに、抽出できた課題を構造化した上で、実践的かつ実装可能な提案を提示することを目的とする。
研究方法
本研究班では、本研究を日本リウマチ学会移行期医療検討小委員会との合同研究とし、日本リウマチ学会評議員(1,031名)および日本小児リウマチ学会評議員(110名)に対し、主に移行医療の実態、連携体制、支援ツールの認知と活用、多職種連携、プレコンセプションケア等について、Webアンケートを用いて調査を実施した。アンケート原案は、日本リウマチ学会移行期医療検討小委員会が作成・ブラッシュアップし、SurveyMonkey (https://jp.surveymonkey.com)を用いてアンケート文面を整え提示した。回答期間は、2025年2月19日より4月26日までであった。得られた結果を基に班内での議論を重ね、課題の整理および提案の構築を行った。それをもとに、診療支援ハンドブックを作成し、現場で活用可能な具体的手段を提示した。
結果と考察
アンケート期間は2025年2月19日より2025年4月26日に行い、回答総数は159、回答未完了・重複回答を除外した122件を解析対象とした。本実態調査では、移行期医療は一定程度実施されているものの、制度化された連携体制は未成熟であり、多くが個別対応に依存している実態が明らかとなった。加えて、課題として、診療科間連携の不足、医療機関間の情報共有の不備、地域格差、支援資材の認知不足、プレコンセプションケアのばらつきなどが抽出された。これらに対し、教育機会の拡充、連携体制の整備、地域支援体制の構築、産婦人科との連携強化、医療制度に関する情報提供体制の整備、患者自立支援の促進といった提案が「提案書」として整理された。また、これを基に、診療支援ハンドブックの作成により、現場での実践を支える具体的ツールが作成され提示された。
本研究により、AYA世代リウマチ医療における課題は、個別の医療者の努力に依存する属人的運用に起因する側面が大きいことが明らかとなった。これらの課題の解決には、標準化および制度化された連携体制の構築が重要であると考えられる。本研究で提示した提案は、現場の実情に即した実践的内容であり、医療体制整備に向けた基盤として機能することが期待される。その中で、リウマチ医療体制に関わる主な課題を以下に選定した。
・診療科間・医療機関間の連携の課題
成人移行症例の紹介・受け入れについて、3年前と比較すると概ね改善・前向きになっている事が明らかになった。しかし、依然として成人科の3割が受け入れを、小児科の1割が紹介を完遂できていないことが判明した。その理由については、自由記載の分析が必要である。また、既存研究による作成物の「成人リウマチ医のための移行支援ガイド」や「ミライトーク(移行支援資材)」の十分な有効利用がされていないことが明らかになった。
・移行支援体制整備の必要性
現在、日本全国で移行期医療支援センターは9施設設置されているが、その認知度が高くない事が明らかになった。今後は、小児科・成人科双方が共通の視点で移行支援を行えるような、地域連携パスや支援体制の標準化が求められる。
・プレコンセプションケアの未整備
プレコンセプションケア(妊孕性や妊娠に関連する説明・指導)は、近年その必要性/重要性が認識されるようになりつつあるが、成人科においても実施施設が8割に満たず、小児科では半数だけであった。女性への実施は100%であったが、男性への実施は2〜3割と低い状況が明らかになった。また、対象年齢・実施時期・内容についてもばらつきがみられた。さらに担い手についてもほとんどの施設において主に医師が行っていた。支援チームの組織作りや、指導内容など整備が喫緊の課題と考えられた。

結論
「AYA世代のリウマチ診療における診療科間および医療機関間連携の実態調査とその課題の抽出」アンケート結果解析にて、診療科間・医療機関間連携の課題、移行支援態勢整備の必要性、プレコンセプションケアの標準化の必要性が明らかになった。思春期・若年成人(AYA世代)患者におけるリウマチ医療体制の質向上を図るためには、医療者への教育強化、地域連携体制の整備、ガイドラインの普及、プレコンセプションケア体制の構築といった多面的な取り組みが必要不可欠である。本研究は、実態調査、課題整理、提案および実装支援を統合したアプローチにより、AYA世代リウマチ医療体制の改善に向けた実践的基盤を提示した。今後、本提案が多職種連携および医療体制整備の推進に寄与することが期待される。

公開日・更新日

公開日
2026-10-27
更新日
-

文献情報

文献番号
202512005B
報告書区分
総合
研究課題名
思春期・若年成人(AYA世代)患者におけるリウマチ医療体制に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24FE1003
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
森 雅亮(国立大学法人東京科学大学 生涯免疫医療実装講座)
研究分担者(所属機関)
  • 井田 弘明(久留米大学 医学部 呼吸器・神経・膠原病内科)
  • 伊藤 秀一(横浜市立大学 大学院医学研究科発生成育小児医療学)
  • 梅林 宏明(宮城県立こども病院 リウマチ・感染症科)
  • 金子 佳代子(国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター母性内科)
  • 桐野 洋平(横浜市立大学 医学部)
  • 清水 正樹(東京科学大学 大学院 茨城県小児周産期地域医療学)
  • 楢崎 秀彦(日本医科大学大学院医学研究科小児・思春期医学)
  • 西山 進(一般財団法人倉敷成人病センター リウマチ科)
  • 松井 利浩(独立行政法人国立病院機構相模原病院臨床研究センター リウマチ性疾患研究部)
  • 持田 勇一(横浜市立大学附属市民総合医療センター リウマチ膠原病センター)
  • 矢嶋 宣幸(昭和医科大学 医学部内科学講座リウマチ膠原病内科学部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫・アレルギー疾患政策研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
思春期・若年成人(AYA:Adolescent and Young Adult)世代のリウマチ診療は、小児期から成人期への移行を含む特有の課題を有することから、小児科・成人科間の円滑な連携が極めて重要となる。加えて、診療科をまたぐだけでなく、地域や施設を越えた医療機関間の連携も、継続的かつ包括的な診療を実現するうえで重要な課題である。
本研究では、AYA世代のリウマチ診療における診療科間および医療機関間連携の現状を実態調査により明らかにし、そこから抽出した課題の構造化と連携体制の強化・解決に向けた具体的な方策を提案して提示することを目的とした。
研究方法
本研究班では、日本リウマチ学会移行期医療検討小委員会との合同研究とし、日本リウマチ学会および日本小児リウマチ学会の評議員を対象にWebアンケート調査を実施した。アンケート原案は、本研究班と日本リウマチ学会移行期医療検討小委員会が協働して作成・ブラッシュアップし、アンケート文面を整えWeb上に提示した。アンケートの実施方法は、日本リウマチ学会と日本小児リウマチ学会事務局へ、それぞれの評議員(1031名、110名)に対しメールを依頼した。令和6年度は中間解析、令和7年度は最終解析を行い、得られた結果を基に班内議論を通じて課題整理および提案構築を行った。
結果と考察
結果として、以下の成果が得られた。
1)Webアンケートの結果から、(1)移行期医療は一定程度実施されているものの、制度化された連携体制は未成熟であること、(2)課題は多層的構造(連携不足、地域格差、支援資材認知不足など)を有すること等が明らかにされた。
2)これらに対し、教育機会の充実、連携体制整備、地域支援強化、プレコンセプションケア推進等の提案を整理した。具体的には、本研究班は「成人移行患者およびAYA世代患者におけるリウマチ医療体制の整備に関する提案」を、今後の国の政策医療に活かしていただきたく、以下の6つの柱をとりまとめた。
(1)移行期医療の普及と教育機会の強化
(2)診療科間・医療機関間の連携体制の整備と段階的移行支援の実現
(3)地域格差の是正に向けた移行期医療支援体制の構築
(4)プレコンセプションケアおよび産婦人科との連携強化
(5)切れ目のない医療費助成制度の充実と情報提供体制の整備
(6)移行期患者の自立支援と心理社会的サポートの強化
3)診療支援ハンドブックの作成により、以下の内容の実装可能な具体的支援ツールを提示した。
・Part Ⅰ 移行期医療:1. 移行期医療とは、2. 移行期医療支援ガイド① 医師向け、3. 移行期医療支援ガイド② メディカルスタッフ向け、4. 移行期医療支援ツール5. 医療費助成制度・社会保障制度、6. 移行期医療支援センター、7. 移行期医療がうまくいく場合、いかない場合
・Part Ⅱ プレコンセプションケア:1. プレコンセプションケアとは、2. プレコンセプション・チェックシート(医師・メディカルスタッフ向け)、3. 妊娠・授乳時の薬物使用、4. 里帰り出産支援チェックリスト、5. プレコンセプションケア実施施設、6. プレコンセプションケアがうまくいく場合、いかない場合
本研究の特徴は、実態調査にとどまらず、課題構造化および実装可能な提案まで到達した点にある。従来の属人的な移行期医療から、標準化された連携体制への転換が求められており、本研究成果はその基盤となり得る。また、教育・連携・制度・自立支援を包括する多面的アプローチの重要性が示された。
結論
本研究は、アンケ―ト調査から得られた課題抽出から提案および実装支援に至る統合的アプローチにより、AYA世代リウマチ医療体制の改善に向けた実践的基盤を提示した。
「AYA世代のリウマチ診療における診療科間および医療機関間連携の実態調査とその課題の抽出」アンケートの解析にて、診療科間・医療機関間連携の課題、移行支援態勢整備の必要性、プレコンセプションケアの標準化の必要性が明らかになった。
思春期・若年成人(AYA世代)患者におけるリウマチ医療体制の質向上を図るためには、医療者への教育強化、地域連携体制の整備、ガイドライン等の資材の普及、プレコンセプションケア体制の構築といった多面的な取り組みが必要不可欠である。

公開日・更新日

公開日
2026-10-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-10-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202512005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
思春期・若年成人(AYA)世代のリウマチ性疾患患者における診療科間および医療機関間連携の現状を明らかにするために実態調査を実施し、その結果から課題整理および戦略提案および診療支援資材(ハンドブック)を発出した。この提案では教育機会の充実、連携体制の強化、地域支援体制の構築、産婦人科連携の推進、医療制度の連続性確保、患者自立支援の促進等が取り挙げられた。また、診療支援ハンドブックにより現場で活用可能な具体的手段を提示できるようになり、学術的および社会的意義が高いとの反響があった。
臨床的観点からの成果
日本リウマチ学会評議員および日本小児リウマチ学会評議員に対して実施した実態調査により、移行期医療は一定程度実施されているものの、制度化された連携体制は未成熟であり、多くが個別対応に依存している実態が明らかとなった。加えて、抽出された課題から診療科間・医療機関間連携の課題、移行支援態勢整備の必要性、プレコンセプションケアの標準化の必要性が明らかになったことから、AYA世代リウマチ医療体制の改善に向けた実践的基盤を提示することが出来たことは臨床的および社会的意義が高いとの評価を得た。
ガイドライン等の開発
上述した実態調査から抽出された喫緊の課題を集約し、臨床的に役立つ診療支援ハンドブックを作成することができた。これは、現場での実践を支える具体的ツールとなり得るため、現在関連学会で普及・啓発を図っていただけるように働きかけている。関連学会で承認された後は、国内および国際学会においても公表し国内外での本ハンドブックのより広い活用を目指していく。
その他行政的観点からの成果
上述した実態調査から、教育機会の拡充、連携体制の整備、地域支援体制の構築、産婦人科との連携強化、医療制度に関する情報提供体制の整備、患者自立支援の促進といった喫緊の課題を集約し「提案書」として整理することができ今回報告書の一つとして提出することができた。これらの成果は、AYA世代のリウマチ性疾患患者における診療科間および医療機関間連携のあり方について、今後の方向性を見出すことができたため、今後の資料として活用されることが期待される。
その他のインパクト
本研究は、実態調査、課題整理、提案および実装支援を統合したアプローチにより、AYA世代リウマチ医療体制の改善に向けた実践的基盤を提示した。今後、本提案が多職種連携および医療体制整備の推進に寄与することが期待される。パンフレット作成・講演・シンポジウム開催・ホームページの作成・新聞または雑誌などに成果を公表し、一般への普及・啓発活動等を随時図っていく予定である。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
39件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
30件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
成⼈移⾏患者およびAYA 世代患者に対する、 診療科間連携および医療機関間連携の実態調査の結果報告書 /成人移行患者およびAYA 世代患者における リウマチ医療体制の整備に関する提案
その他成果(普及・啓発活動)
1件
成人移行JIA およびAYA世代RA診療支援ハンドブック

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2026-10-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
202512005Z