線維筋痛症の発症要因の解明及び治療システムの確立と評価に関する研究

文献情報

文献番号
201023009A
報告書区分
総括
研究課題名
線維筋痛症の発症要因の解明及び治療システムの確立と評価に関する研究
課題番号
H20-免疫・一般-009
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
岡 寛(聖マリアンナ医科大学 難病治療研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 植田 弘師(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科)
  • 浦野 房三(長野県厚生連篠ノ井総合病院リウマチ膠原病センター)
  • 武田 雅俊(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 松本 美富士(藤田保健衛生大学七栗サナトリウム内科)
  • 宮岡 等(北里大学医学部精神科)
  • 行岡 正雄(医療法人行岡医学研究会行岡病院)
  • 横田 俊平(横浜市立大学大学院医学研究科)
  • 長田 賢一(聖マリアンナ医科大学神経精神科)
  • 半田 宏(東京工業大学総合研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
18,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
基礎研究では、FMモデルマウス(ICSマウス)にて、抗うつ薬と実臨床で使用されている塩酸ピロカルピンの鎮痛効果を検討する。疫学調査では、FMのプラマリケア医の認識度の再検と受診者の実態調査を行う。臨床研究では、FMと精神疾患の差異、診療システムの構築を計る。また、若年性FM(J-FM)の臨床的特徴と性格傾向を検討する。またACR2010のFM新基準の妥当性を検討する。治療では、FM診療ガイドライン2009を改訂する。
研究方法
基礎研究は、前年度の同様にICSモデルマウスに抗うつ薬の腹腔内投与と脊髄腔内投与を行った。疫学調査では、プライマリーケア医の3637人にアンケート調査を行った。臨床研究では、それぞれの施設の症例で行った。ただし、ACR 2010新基準の妥当性は、3施設共同で、疾患対照群をおいて検討した。診療ガイドラインを分担執筆し、後に執筆者が合同でコンセンサスカンファレンスを行った。
結果と考察
①塩酸ピロカルピンは、腹腔内投与にて鎮痛効果を示した。抗うつ薬のミルタザピンは、脊髄腔内投与にて効果を示した。
②前回(2006年)の調査と比較して、プラマリケア医のFM疾患認識度は、32.8%から50.7%と30%近く上昇していた、受療推計患者数は、3900人から11000人に上昇していた。
③FM患者の20-35%がうつ病や不安障害の範疇の入る可能性が示唆され、精神科の経由した診療システムの構築が作られた。
④ J-FMでは、全身疼痛や関節痛と同程度に慢性疲労(89%)が認められた。性格分析では、凝り性、責任感が強いことが特徴的であった。
⑤ ACR2010の予備診断基準に対して本部のFM患者(68名)、対照群(49名)においてカットオフポイントとして13点で感度73.5 %、特異度90.0 %であり、新しい基準の有用性が示された。
⑥FM診療ガイドライン2009の発刊後、2010年度の改訂版が作成された。

結論
① FMモデルマウスで塩酸ピロカルピンと抗うつ薬の薬効が確認された。
② FMの疾患認識度と受療患者数が増加していた。
③ J-FMの臨床症状や性格傾向は成人と類似していた。
④ FMの精神神経科を経由する診療システムの1tが構築された。
⑤ ACR 2010のFM新診断基準は、米国の報告と同様にカットオフポイント13が妥当であった。
⑥ 改訂FM診療ガイドラインが発刊予定である。

公開日・更新日

公開日
2011-09-20
更新日
-

文献情報

文献番号
201023009B
報告書区分
総合
研究課題名
線維筋痛症の発症要因の解明及び治療システムの確立と評価に関する研究
課題番号
H20-免疫・一般-009
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
岡 寛(聖マリアンナ医科大学 難病治療研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 植田 弘師(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科)
  • 浦野 房三(長野県厚生連篠ノ井総合病院リウマチ膠原病センター)
  • 武田 雅俊(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 松本 美富士(藤田保健衛生大学七栗サナトリウム内科)
  • 宮岡 等(北里大学医学部精神科)
  • 行岡 正雄(医療法人行岡医学研究会行岡病院)
  • 横田 俊平(横浜市立大学大学院医学研究科)
  • 長田 賢一(聖マリアンナ医科大学神経精神科)
  • 半田 宏(東京工業大学総合研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
病因、疫学、評価法、診断基準、鑑別診断、ガイドラインに分担してFMの研究を進める。
研究方法
①2004年度に行った疾患認識度と診療実態調査の再検(2009年)。(松本、岡) 
②FMの疾患モデルマウスであるICSマウスを使用し、抗けいれん薬、ピロカルピン塩酸塩の効果を検討。(植田)。 FMの病系分類とそれを区別するマーカーを検索。(山野、岡)
③FM診療ガイドライン2009を2010版に改訂。(松本、岡、長田、宮岡、浦野、行岡) 小児についての診療ガイドライン作成。(横田)
④FMとの鑑別が問題となる精神科疾患との差異を検討、診療システムの構築。(武田、宮岡)

結果と考察
(a)病因・病態
(1)植田により、ICSモデルマウスの検討では、抗痙攣薬(プレガバリン、ガバペンチン)とピロカルピン塩酸塩)の疼痛閥値の改善効果が確認された。
(2)前班長の西岡らが、FMを3つの臨床的クラスターに分類し、それぞれの推奨薬物をまとめた。
(3) 山野、岡らにより、電位依存性K+チャネル(VGKC)に対する抗体(抗VGKC抗体)の陽性例がうつ症状のないFMの16例中5例存在し、今後のFMマーカーとなる可能性が示唆された。
(b)疫学
松本により、2004年にFM認識度は32.8%であったが、2009年では50.7%まで上昇していた。
(c)評価法
岡・西岡により、J・FIQスコア・Pain visionの有用性が示された。
(d)診断基準
ACR2010の診断基準に対して本部のFM患者(68名)、対照群(49名)で感度・特異度を検討し、カットオフポイントとして13点で感度73.5 %、特異度90.0 %であった。
(e)精神科疾患との鑑別診断FMの診断時点でのうつ病が不安障害の合併が20-35%と高率に存在した。 (武田ら)
(f)診療ガイドライン2009が発刊された。その後プレガバリンの適応拡大などもあり、2010年に改訂を進めた。

結論
①基礎研究において、抗けいれん薬の痛みに対する効果が再確認された。
②うつ症状のないFMにおいて、特異的なマーカー(抗VGKC抗体)の存在が示唆された。
③診療ガイドラインにより、本邦患者の一定の診療指針が示された。
④整形外科疾患や精神科疾患の鑑別には、診療システムの構築が必要であった。
⑤ACR(2010)の基準の妥当性と疾患活動性評価に応用できるか検討が必要である。

公開日・更新日

公開日
2011-09-20
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201023009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
①植田によるICSモデルマウスの検討では抗痙攣薬(プレガバリン、ガバペンチン)と唾液分泌亢進剤(ピロカルピン塩酸塩)の疼痛閥値の改善効果が確認された。
②山野、岡らにより電位依存性K+チャネル(voltage-gated potassium channel : VGKC)に対する抗体(抗VGKC抗体)の陽性例がうつ症状のないFMの16例中5例存在し、今後のFMマーカーとなる可能性が示唆された。
③半田によりガバペンチンの結合蛋白が固定されフィラメント状と考えられるアクチンが同定された。
臨床的観点からの成果
① 松本により、2004年にFM認識度は32.8%であったが、2009年では50.7%まで上昇しており、班研究の成果が明らかになった。
② 岡・西岡によるPain visionの検討では、FMの女性では痛みの閾値低下が確認された。
③ACR2010の診断基準に対してカットオフポイントとして13点で感度73.5 %、特異度90.0 %であり、新しい基準の有用性が示された。
④ FMの診断時点でのうつ病や不安障害の合併が20-35%と高率に存在し、精神医学的評価を含む診療システムが示された。
ガイドライン等の開発
① 診療ガイドライン2009が2010年に発刊され、抗けいれん薬や抗うつ薬などを含めた治療のフローチャートが示された。
② その後プレガバリンの適応拡大などもあり、2010年に改訂板が発行される。

その他行政的観点からの成果
これまでの線維筋痛症研究会の実績と学会員の確保により、日本線維筋痛症学会に変革された。
その他のインパクト
① 平成20年10月 第2回線維筋痛症研究会  開催
② 平成21年 4月 日本線維筋痛症学会  名称変更
③ 平成21年10月 第1回 日本線維筋痛症学会 開催(参加人数416名)
④ 平成22年11月 第2回 日本線維筋痛症学会 開催(参加人数197名)
※ 日本線維筋痛症学会 会員数200名、法人会員7社(2011年5月現在)
⑤ 日本線維筋痛症学会 診療ネットワーク(登録医療機関136名)
学会のホームページ:http://jcfi.jp/からリンク可能である。

発表件数

原著論文(和文)
26件
原著論文(英文等)
65件
その他論文(和文)
63件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
162件
学会発表(国際学会等)
36件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計6件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
6件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Nishiyori M, Ueda H
Prolonged gabapentinanalgesia in an experimental mouse model offibromyalgia.
Mol pain , 6 (4) , 52-  (2008)
原著論文2
Ito T, Ando H, Suzuki T, et ai.
Identification of a primary target of thalidomide teratogenicity .
Science , 327 , 1345-1350  (2010)
原著論文3
Osada K, Oka H, Isomura T, et al.
Development of the Japanese version of the Fibromyalgia Impact Questionnaire(JFIQ) : The Psychometric assessments of reliability, and validity, Int.
J.Rheumatol Dis , 14 , 74-80  (2011)

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
201023009Z