介護・福祉・在宅医療現場における関節リウマチ患者支援に関する研究

文献情報

文献番号
202512002A
報告書区分
総括
研究課題名
介護・福祉・在宅医療現場における関節リウマチ患者支援に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23FE1002
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
松井 利浩(独立行政法人国立病院機構相模原病院 臨床研究センター リウマチ性疾患研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 酒井 良子(明治薬科大学 薬学部)
  • 杉原 毅彦(東邦大学 医学部)
  • 矢嶋 宣幸(昭和医科大学 医学部内科学講座リウマチ・膠原病内科学部門)
  • 川畑 仁人(聖マリアンナ医科大学 医学部)
  • 川人 豊(京都府立医科大学 大学院医学研究科)
  • 小嶋 雅代(名古屋市立大学 医薬学総合研究院(医学))
  • 房間 美恵(関西国際大学 保健医療学部)
  • 松下 功(金沢医科大学 リハビリテーション医学科)
  • 辻村 美保(独立行政法人国立病院機構相模原病院 臨床研究センター リウマチ性疾患研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫・アレルギー疾患政策研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
6,352,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
関節リウマチ(RA)患者の高齢化に伴い、身体機能低下、フレイル、併存症増加、介護ニーズ増大、在宅医療への移行などが重要な課題となっている。近年、メトトレキサート(MTX)や生物学的製剤を中心とした治療進歩により、RA患者の生命予後や疾患活動性は大きく改善した一方、高齢患者では疾患管理のみならず、介護・福祉・在宅医療を含めた包括的支援体制の整備が求められている。しかし、高齢RA患者における診療実態、医療・介護・福祉サービスとの連携、現場での支援課題、多職種連携の実態は十分に明らかではない。本研究では、高齢RA患者支援の充実を目指し、RA診療実態の把握、介護・福祉・在宅医療現場におけるアンメットニーズに基づく支援資材の作成・普及、高齢RA患者における併存症・身体機能低下・悪性腫瘍合併例の治療実態について検討を行った。
研究方法
2023年NDBを用いて、RA患者数、抗リウマチ薬および関連薬の処方割合を年齢階層別、都道府県別、RA専門施設受診有無別に解析した。前年度に実施した介護・福祉職およびリウマチ医を対象としたアンケート調査結果を基盤として、介護・福祉職向けおよびリウマチ医向け啓発資材を作成し、既存のライフステージ別RA患者支援ガイドを改訂した。また、作成資材の普及を目的としてWeb講演会を開催し、講演会および資材に関するアンケート調査を実施した。さらに、NinJa、ATOMMコホート、KURAMAコホートを用いて、悪性腫瘍既往RA患者における抗リウマチ薬治療の安全性、高齢RA患者における併存症蓄積、身体機能低下、性差について解析した。
結果と考察
NDB解析では、RA定義に合致した患者数は98.6万人であり、2017年度調査時の82.5万人から増加していた。高齢患者ではMTX処方割合が低下し、80歳以上では43.4%であった一方、生物学的製剤は70歳以上でも20%以上で使用されており、高齢患者に対しても積極的な抗リウマチ治療が行われている実態が示された。また、グルココルチコイド(GC)処方割合は全年齢層で30~40%台と依然高値であり、高齢RA診療における課題と考えられた。さらに、抗リウマチ薬処方割合には地域差を認め、専門施設受診の有無によっても治療内容が異なっていた。
前年度のアンケート調査では、介護・福祉・在宅医療現場におけるRA患者支援に関する知識不足、医療機関との情報共有不足、要介護認定に関する課題、在宅医療連携の脆弱性など、多くのアンメットニーズが明らかとなった。また、リウマチ医においても社会保険・福祉制度や在宅医療に関する理解不足が示された。これらの結果を踏まえ、『介護・福祉スタッフのための関節リウマチQ&A ~すぐわかる患者支援ガイド~』、『リウマチ医が知っておきたい社会保険・福祉制度、在宅医療の基礎知識』、『メディカルスタッフのためのライフステージに応じた関節リウマチ患者支援ガイド 2025改訂版』を作成・公開した。作成にあたっては、多職種および患者会・関連団体と連携し、日本リウマチ学会等のパブリックコメントを踏まえて内容修正を行った。Web講演会には全国から多職種が参加し、高い満足度を得た。さらに、アンケート調査結果について2編の論文を発表し、学術的成果として公表した。
NinJa解析では、悪性リンパ腫既往RA患者において、抗IL-6受容体抗体使用による明らかな再発リスク増加は認めなかった。ATOMM/KURAMA解析では、高齢RA患者において多疾患併存が高頻度に認められ、年齢、関節破壊、MTX未使用、GC使用、HAQ-DIが併存症蓄積と関連していた。また、NinJa解析では、HAQ-DIは疾患活動性等で調整後も女性で高値であり、身体機能低下には性差が存在する可能性が示された。
結論
令和7年度は、NDB解析により本邦RA患者数の増加と高齢RA診療の実態を明らかにするとともに、現場ニーズに基づく支援資材を完成・公開し、多職種を対象とした普及活動を実施した。また、高齢RA患者における併存症、身体機能低下、悪性腫瘍既往例の治療安全性に関する知見を得た。本研究成果は、高齢化時代におけるRA患者支援の課題と実態を明らかにするとともに、医療・介護・福祉・在宅医療連携体制整備および多職種連携を基盤とした支援体制構築に資する基盤的資料となる。

公開日・更新日

公開日
2026-10-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2026-10-27
更新日
-

文献情報

文献番号
202512002B
報告書区分
総合
研究課題名
介護・福祉・在宅医療現場における関節リウマチ患者支援に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23FE1002
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
松井 利浩(独立行政法人国立病院機構相模原病院 臨床研究センター リウマチ性疾患研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 酒井 良子(明治薬科大学 薬学部)
  • 杉原 毅彦(東邦大学 医学部)
  • 矢嶋 宣幸(昭和医科大学 医学部内科学講座リウマチ・膠原病内科学部門)
  • 川畑 仁人(聖マリアンナ医科大学 医学部)
  • 川人 豊(京都府立医科大学 大学院医学研究科)
  • 小嶋 雅代(名古屋市立大学 医薬学総合研究院(医学))
  • 房間 美恵(関西国際大学 保健医療学部)
  • 松下 功(金沢医科大学 リハビリテーション医学科)
  • 辻村 美保(独立行政法人国立病院機構相模原病院 臨床研究センター リウマチ性疾患研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫・アレルギー疾患政策研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、関節リウマチ(RA)患者の高齢化および高齢発症RA患者の増加が進行している。治療進歩により生命予後や疾患活動性は改善している一方、高齢RA患者では身体機能低下、フレイル、併存症増加、介護ニーズ増大、在宅医療への移行など新たな課題が顕在化している。しかし、医療・介護・福祉・在宅医療現場におけるRA患者支援の実態や、多職種連携の課題は十分に明らかではなく、介護・福祉職やリウマチ医が活用可能な実践的支援資材も十分に整備されていない。
本研究では、高齢RA患者支援の充実を目的として、①NDB等を用いたRA診療実態の把握、②介護・福祉・在宅医療現場におけるアンメットニーズの抽出、③多職種の知識向上と連携を促進する支援資材の作成・普及、④高齢RA患者における併存症、身体機能低下、悪性腫瘍合併例の検討を行った。
研究方法
匿名医療保険等関連情報データベース(NDB)を用いて、本邦RA患者における抗リウマチ薬処方実態を年齢階層別、地域別、RA専門施設受診有無別に解析した。また、介護支援専門員、社会福祉士、リウマチ医を対象としたアンケート調査を実施し、RA患者支援に関する課題やアンメットニーズを抽出した。
これらの結果を基盤として、多職種および患者会・関連団体と協働し、介護・福祉職向けおよびリウマチ医向け支援資材を作成した。さらに、Web講演会、冊子配布、学会活動等を通じて普及活動を実施した。
加えて、NinJa、ATOMMコホート、KURAMAコホートを用いて、高齢RA患者における併存症蓄積、身体機能低下、性差、悪性腫瘍既往例に対する抗リウマチ薬治療の安全性について検討した。
結果と考察
NDB解析では、RA定義に合致した患者数は2017年度の82.5万人から2023年には98.6万人へ増加していた。高齢患者ではMTX使用率が低く、グルココルチコイド(GC)使用率が高かったが、生物学的製剤は70歳以上でも20%以上で使用されており、高齢患者に対しても積極的な抗リウマチ治療が行われている実態が示された。また、分子標的薬処方割合には地域差を認め、専門施設受診の有無によって治療内容に差異を認めた。さらに、介護DBとの連結データを用いた要介護度や介護サービス利用実態の解析も進めており、現在、公表審査中である。
介護・福祉職を対象としたアンケートでは、RA患者支援に関する知識不足、医療機関との情報共有不足、要介護認定に関する課題、在宅医療連携の脆弱性など、多くのアンメットニーズが明らかとなった。また、リウマチ医向け調査では、社会保険・福祉制度に関する知識不足が認められ、とくに若手医師にその傾向が認められた。また、RA患者の在宅診療については、RA診療に不慣れな在宅診療医による診療継続に対する不安の声が聞かれた。
これらの結果を踏まえ、『介護・福祉スタッフのための関節リウマチQ&A ~すぐわかる患者支援ガイド~』、『リウマチ医が知っておきたい社会保険・福祉制度、在宅医療の基礎知識』、『メディカルスタッフのためのライフステージに応じた関節リウマチ患者支援ガイド 2025改訂版』を作成し、日本リウマチ学会Webサイト上で無償公開した。Web講演会には全国から看護師、介護支援専門員、社会福祉士、リハビリテーションスタッフ、薬剤師など多職種が参加し、高い満足度を得た。特にオンデマンド配信の利用が多く、時間的・地理的制約を超えた教育機会提供の有用性が示唆された。また、各資材は公開後に多数のアクセスを集め、冊子配布やQRコード活用などを通じて現場導入を進めた。さらに、アンケート結果については2編の英文論文として公表し、学術的成果として発信した。
また、NinJa、ATOMMコホート、KURAMAコホート解析では、高齢RA患者において多疾患併存が高頻度に認められ、年齢、関節破壊、MTX未使用、GC使用、身体機能低下が併存症蓄積と関連していた。さらに、HAQ-DIには性差が存在し、女性で身体機能低下が強い可能性が示唆された。悪性リンパ腫既往RA患者に対する解析では、抗IL-6受容体抗体使用による明らかな再発リスク増加は認められなかった。
結論
本研究では、高齢化時代におけるRA患者支援の実態と課題を多面的に明らかにするとともに、多職種連携を基盤とした支援資材の作成・普及を行った。さらに、高齢RA患者における診療実態、併存症、身体機能低下、悪性腫瘍既往例に関する基盤的知見を得た。
本研究成果は、医療・介護・福祉・在宅医療連携体制の整備および高齢RA患者に対する包括的支援体制構築に資する基盤資料となることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2026-10-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-10-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202512002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
NDB、NinJa、ATOMM/KURAMAコホート等を用い、本邦RA患者数の増加、高齢RA患者の治療実態、併存症蓄積、身体機能低下、悪性腫瘍既往例の治療安全性に関する知見を得た。また、介護・福祉職およびリウマチ医を対象とした調査結果を論文化し、RA患者支援に関する学術的基盤を構築した。
臨床的観点からの成果
介護・福祉・在宅医療現場におけるRA患者支援の課題を明らかにし、多職種および患者会・関連団体と連携して支援資材を作成・公開した。これにより、介護・福祉職、メディカルスタッフ、リウマチ医がRA患者支援に活用できる実践的ツールを提供し、医療・介護・福祉連携の推進に資する成果を得た。
ガイドライン等の開発
介護・福祉職向け資材『介護・福祉スタッフのための関節リウマチQ&A ~すぐわかる患者支援ガイド~』、リウマチ医向け資材『リウマチ医が知っておきたい社会保険・福祉制度、在宅医療の基礎知識』を新たに作成した。また、『メディカルスタッフのためのライフステージに応じた関節リウマチ患者支援ガイド』を改訂し、多職種連携によるRA患者支援の標準化と普及に資する実践的資材を整備した。
その他行政的観点からの成果
本研究により、高齢RA患者における医療・介護・福祉・在宅医療の連携上の課題やアンメットニーズが明らかとなった。得られた知見は、高齢RA患者に対する地域包括ケア体制や在宅医療連携体制の整備、多職種協働の推進、および今後のリウマチ対策や高齢者医療政策の検討に資する基礎資料となる。
その他のインパクト
作成した資材を日本リウマチ学会Webサイト上で無償公開するとともに、Web講演会や冊子配布を通じて全国へ普及した。講演会には看護師、介護支援専門員、社会福祉士、薬剤師、リハビリテーションスタッフなど多職種が参加し、高い評価を得た。本研究は、医療・介護・福祉関係者のRAに対する理解向上と、多職種連携による患者支援体制の強化に寄与することが期待される。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
44件
その他論文(和文)
26件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
18件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
7件
講演7件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Matsui T, Fusama M, Kawahata K, et al.
Support for patients with rheumatoid arthritis provided by care and welfare professionals in Japan: a cross-sectional study
Mod Rheumatol , 36 (2) , 218-226  (2026)
10.1093/mr/roaf080
原著論文2
Matsui T, Fusama M, Kawahata K, et al.
Awareness of social insurance, welfare systems, and home medical care among rheumatologists in Japan: a cross-sectional study
Mod Rheumatol , 36 (2) , 282-289  (2026)
10.1093/mr/roaf085.

公開日・更新日

公開日
2026-10-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
202512002Z