学校・保育所等におけるアレルギー疾患を有するこどもの安心・安全・生き生きとした活動を保証する生活管理指導表の運用・管理体制向上をめざす研究

文献情報

文献番号
202512001A
報告書区分
総括
研究課題名
学校・保育所等におけるアレルギー疾患を有するこどもの安心・安全・生き生きとした活動を保証する生活管理指導表の運用・管理体制向上をめざす研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23FE1001
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
藤澤 隆夫(独立行政法人国立病院機構三重病院)
研究分担者(所属機関)
  • 海老澤 元宏(国立病院機構相模原病院 臨床研究センター)
  • 今井 孝成(昭和大学)
  • 福永 興壱(慶應義塾大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫・アレルギー疾患政策研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
5,855,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アレルギー疾患を有するこどもが長時間を過ごす学校や保育所等において、医学的に適切な管理体制を整備することは、安全の確保と教育・保育活動の継続のために極めて重要である。その基盤となる生活管理指導表(以下、指導表)は広く活用されているが、現状ではいくつかの課題が存在する。例えば、医師による記載不備や根拠の乏しい過剰な除去指示により、適切な管理が妨げられる場合がある。また、教育現場における運用体制が十分とはいえず、学校内でアナフィラキシーが発生した事例も報告されている。さらに、指導表の質や運用状況を継続的に評価・改善する仕組みも十分には整備されていない。
本研究では、生活管理指導表の作成および運用に関する課題を体系的に明らかにし、その改善に向けた実践的な支援ツールおよび運用システムを構築することを目的とした。具体的には、以下の4項目を主要課題として取り組んだ。(1)指導表の精度向上:実態調査により課題を明確化し、適切な作成・運用を支援するハンドブックを作成する。(2)連携体制の向上:先進地域の好事例を分析するとともに、研究班員の地域で医療・教育・行政の連携構築を実践し、運用体制の強化を図る。(3)生活管理指導表作成支援アプリの開発:非専門医による適切な指導表作成を支援し、専門医の負担軽減と診療の質の均てん化に資するツールを開発する。(4)デジタル指導表の開発:効率的な運用と継続的なモニタリングを可能とするデジタル基盤を構築し、情報共有および管理体制の強化を図る。
研究方法
生活管理指導表の精度向上を目的として、全国の自治体(教育委員会等)、日本栄養士会所属の栄養士・管理栄養士、および日本小児アレルギー学会会員医師を対象にアンケート調査を実施し、指導表の記載内容、運用体制、給食対応、医師の作成負担等に関する課題を分析した。調査結果をもとに「生活管理指導表運用ハンドブック(暫定版)」を作成し、関係機関からの意見を反映して最終版を作成した。
連携体制の向上については、全国6地域をモデル地域として選定し、行政、医療機関、教育機関等との連携推進活動を実施した。実態把握、連携体制の構築、地域課題に応じた改善活動を行い、その成果と課題を分析した。
生活管理指導表作成支援アプリについては、問診内容から適切な指導表記載例を自動生成するシステムを開発した。さらに、初期研修医および医学生を対象としたランダム化比較試験を実施し、アプリ使用群と非使用群における指導表作成精度および作成負担を比較評価した。
デジタル指導表については、医師、学校、教育委員会それぞれの立場から現行運用上の課題を整理し、要件定義を行ったうえでWebアプリケーションを開発した。モデル校において試験運用を行い、その有用性を検証した。
結果と考察
本研究では、学校・保育所におけるアレルギー疾患児の安全な生活を支えるため、生活管理指導表を軸とした連携体制の改善を目的に、実態調査、運用ハンドブック作成、作成支援アプリ開発、デジタル指導表開発の4つの課題に取り組んだ。
実態調査では、自治体の半数以上が根拠不十分な除去指示や記載不備のある指導表を経験しており、栄養士の約7割が記載内容や運用に困難を感じていた。また、医師の約4割が作成負担を感じており、指導表の質の向上と運用の効率化が重要な課題であることが明らかとなった。これらの結果を踏まえ、記載方法や緊急時対応、関係機関との連携方法を整理した「学校・保育所における生活管理指導表活用ハンドブック」を作成した。
全国6地域での連携推進活動では、行政ニーズに即した取り組みや医療・教育・行政の組織的連携が進展の鍵となる一方、行政の関与不足や様式の不統一が連携の障壁となることが示された。これらの知見はハンドブックへ反映し、全国展開可能な連携モデルの基盤を整備した。
生活管理指導表作成支援アプリについては、ランダム化比較試験において、病型や除去根拠、アナフィラキシー情報などの記載精度を有意に向上させ、その有用性が示された。また、デジタル指導表システムでは、保護者による事前入力、医師による確認・承認、学校・教育委員会との情報共有を可能とし、記載負担の軽減、情報検索性の向上、進学時の円滑な情報継承などの効果が確認された。
以上より、本研究は生活管理指導表の標準化と質向上、多機関連携の強化、ならびにデジタル化による運用効率化に資する具体的な方策を提示した。今後は複数自治体での実証を通じて有効性および費用対効果を検証し、全国的な普及と持続可能な運用体制の構築を目指す必要がある。
結論
本研究では、生活管理指導表の課題を明らかにし、ハンドブック、作成支援アプリ、デジタル指導表を開発した。これらは医療・教育・行政の連携強化と運用の標準化に有用であり、アレルギー疾患児の安全な学校生活を支える基盤となることが示された。

公開日・更新日

公開日
2026-10-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-10-27
更新日
-

文献情報

文献番号
202512001B
報告書区分
総合
研究課題名
学校・保育所等におけるアレルギー疾患を有するこどもの安心・安全・生き生きとした活動を保証する生活管理指導表の運用・管理体制向上をめざす研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23FE1001
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
藤澤 隆夫(独立行政法人国立病院機構三重病院)
研究分担者(所属機関)
  • 海老澤 元宏(国立病院機構相模原病院 臨床研究センター)
  • 今井 孝成(昭和医科大学)
  • 福永 興壱(慶應義塾大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫・アレルギー疾患政策研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アレルギー疾患を有するこどもの安全な学校・保育所生活を支えるためには、生活管理指導表の適切な作成と運用が不可欠である。しかし、記載内容の不備や根拠の乏しい除去指示、教育現場における運用体制の不十分さ、継続的な評価・改善体制の欠如などの課題が指摘されている。本研究では、生活管理指導表の運用上の課題を体系的に明らかにし、その改善に向けた実践的な支援体制を構築することを目的とした。具体的には、実態調査に基づくハンドブックの作成、医療・教育・行政の連携体制の強化、指導表作成支援アプリの開発、ならびにデジタル指導表システムの構築を行い、安全で効率的なアレルギー管理体制の確立を目指した。
研究方法
1)生活管理指導表の精度向上
 全国の自治体(教育委員会等)、日本栄養士会所属の栄養士・管理栄養士、および日本小児アレルギー学会会員医師を対象にアンケート調査を実施した。指導表の記載内容、運用体制、給食対応、医師の作成負担等に関する課題を分析し、その結果に基づいて「生活管理指導表運用ハンドブック(暫定版)」を作成した。さらに、関係機関からの意見を反映して改訂し、「学校・保育所における生活管理指導表活用ハンドブック(アレルギー疾患用)」を完成させた。
2)連携体制の向上
 全国6地域をモデル地域として選定し、行政、医療機関、教育機関等との連携推進活動を実施した。現状把握、連携体制の構築、地域課題に応じた改善活動を行い、その成果と課題を評価するとともに、連携の成功要因および阻害要因を分析し、得られた知見をハンドブックへ反映した。
3)生活管理指導表作成支援アプリ
 問診内容から適切な指導表記載例を自動生成するシステムを開発した。さらに、初期研修医および医学生を対象としたランダム化比較試験を実施し、アプリ使用群と非使用群における指導表作成精度および作成負担を比較評価した。
4)デジタル指導表
医師、学校、教育委員会の立場から現行運用上の課題を整理し、要件定義に基づくWebアプリケーションを開発した。モデル校で試験運用を行い、その有用性を検証した。
結果と考察
1)生活管理指導表の精度向上
 実態調査では、24自治体の半数以上が根拠不十分な除去指示や記載不備を含む生活管理指導表を経験しており、精度管理委員会を整備している自治体は29%にとどまった。栄養士・管理栄養士168名のうち74.4%が指導表の内容や運用に困難を感じ、医師514名でも約4割が作成負担を感じていた。これらの結果から、指導表の記載精度向上、標準化、運用支援の必要性が明らかとなり、実務に即した「学校・保育所における生活管理指導表活用ハンドブック」を作成した。
2)連携体制の向上
 全国6地域での連携推進活動では、行政や現場の具体的ニーズに即した取り組み、医師会・教育委員会等の組織的連携、実践的な合同研修が連携促進に重要であることが示された。一方、行政側の位置づけが不明確な地域や様式が統一されていない地域では、連携の進展が困難であり、情報と様式の標準化、持続可能な組織体制の整備が課題であった。
3)生活管理指導表作成支援アプリ
 アレルギー専門医が、指導表作成に必要な問診項目および回答選択肢を体系的に整理し、それらに基づく問診フローおよび臨床判断アルゴリズムを構築した。また、問診回答から管理の不十分さ(例:経口負荷試験未実施、血液検査の長期未施行、アナフィラキシー既往にもかかわらずエピペン未処方など)が推察される場合には、状況に応じた助言を自動表示する仕組みとした。具体的には、「経口負荷試験の実施検討」「専門医への紹介」「エピペン処方の必要性」などのコメントを付与し、作成支援の実用性を高めた。
このアプリの妥当性をランダム化比較試験で検証した。初期研修医・医学生50名を対象に検証し、全シナリオでアプリ使用群が非使用群より専門医模範回答との一致度が有意に高かった。作成時間に差はなく、アプリは記載精度向上に有用であることが示された。
4)デジタル指導表
 保護者入力、医師の確認・承認、学校・教育委員会との情報共有を可能とするWebシステムを構築した。試験運用により、問診・記載時間の短縮、記載の標準化、緊急時の閲覧性向上、進学時の情報継承、自治体単位での状況把握に有用であることが示唆された。
結論
本研究では、生活管理指導表の課題を明らかにし、ハンドブック、作成支援アプリ、デジタル指導表を開発した。これらは指導表の標準化、情報共有の効率化、緊急時対応の向上に寄与し、医療・教育・行政の連携強化を支える基盤となることが示された。今後は有効性および費用対効果を検証し、持続可能な運用モデルの構築と全国的な普及を目指す必要がある。

公開日・更新日

公開日
2026-10-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202512001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
全国調査により生活管理指導表の運用上の課題を明らかにし、その結果に基づくハンドブックを作成した。さらに、医療・教育・行政の連携モデルを構築するとともに、指導表作成支援アプリおよびデジタル指導表システムを開発し、有用性を検証した。
特に、支援アプリの有効性をランダム化比較試験で示したことは新たなエビデンスとなる。医療・教育・行政の連携強化や地域格差の縮小を通じて、アレルギー疾患児の安全確保への貢献が期待される。
臨床的観点からの成果
生活管理指導表運用上の課題を明らかにし、実践的なハンドブックを作成した。さらに、指導表作成支援アプリおよびデジタル指導表システムを開発し、記載精度の向上、情報共有の効率化、医療・教育・行政の連携強化に有用であることを示した。
これら成果は学校におけるアレルギー管理の質向上とアナフィラキシー事故予防に資する臨床基盤となる。ICTを活用した管理支援は国際的にも先進的な取り組みであり、医療資源の均てん化や地域格差の縮小を通じて、アレルギー疾患児の安全な学校生活の実現に貢献することが期待される。
ガイドライン等の開発
全国調査および地域連携活動の成果を踏まえ、「学校・保育所における生活管理指導表活用ハンドブック(アレルギー疾患用)」を作成した。本ハンドブックは、生活管理指導表の適切な記載・運用方法、緊急時対応、医療・教育・行政の連携体制を示した実践的指針である。今後、アレルギーポータル等を通じて広く公開し、学校・保育所におけるアレルギー対応の標準化と質向上に活用されることが期待される。なお、現時点で国のガイドライン改訂や審議会での正式な審議実績はない。
その他行政的観点からの成果
本研究では、生活管理指導表の全国的な運用実態を調査し、記載内容の不備や運用上の課題を明らかにした。その成果として、運用ハンドブック、指導表作成支援アプリ、デジタル指導表システムを開発した。これらは学校・保育所におけるアレルギー対応の標準化、医療・教育・行政の連携強化、アナフィラキシー事故予防に資するものである。さらに、学校保健分野のDX推進や、今後の施策立案・体制整備の基礎資料として活用されることが期待される。
その他のインパクト
全国調査に基づき「学校・保育所における生活管理指導表活用ハンドブック(アレルギー疾患用)」を作成した。本ハンドブックは、学校・保育所、教育委員会、医療機関等における実務や研修に活用可能であり、アレルギー対策の質向上に寄与すると期待される。また、指導表作成支援アプリおよびデジタル指導表システムを開発し、ICTを活用した学校アレルギー管理の効率化と標準化の可能性を示した。今後、学会発表や論文公表、アレルギーポータル等を通じた普及・啓発を進める予定である。なお、特許の出願・取得はない。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
論文は現在査読中
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2026-10-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
202512001Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,608,000円
(2)補助金確定額
6,608,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,000,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 233,909円
人件費・謝金 2,761,421円
旅費 57,540円
その他 2,032,130円
間接経費 1,523,000円
合計 6,608,000円

備考

備考
分担研究者の今井孝成は全国6地域での連携体制向上にかかる取り組みはすべてウエブ会議で実施するとともに、研究協力者による地元における関係機関への訪問、会議等をすべて自己資金で賄ったため、補助金からの支出をしなかった。直接経費の支出がないため、間接経費も支出しなかった。

公開日・更新日

公開日
2026-10-27
更新日
-