NSAIDs不耐症の病態解明と診断治療指針作成に関する研究

文献情報

文献番号
201023005A
報告書区分
総括
研究課題名
NSAIDs不耐症の病態解明と診断治療指針作成に関する研究
課題番号
H20-免疫・一般-005
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
谷口 正実(独立行政法人国立病院機構相模原病院)
研究分担者(所属機関)
  • 池澤 善郎(横浜市立大学大学院医学研究科)
  • 榊原 博樹(藤田保健衛生大学医学部)
  • 長瀬 隆英(東京大学)
  • 春名 眞一(獨協医科大学)
  • 藤枝 重治(福井大学医学部感覚運動医学講座)
  • 玉利 真由美(理化学研究所 ゲノム医科学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
24,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
NSAIDs不耐症に関し多角的に検討し、国際的な成果をあげ、情報発信する。
研究方法
1)疫学解析;難治化因子してのアスピリン喘息の位置づけ
2)病因病態解明
3)in vitro診断方法
4)鼻茸病態からの検討
5)皮疹病態
6)診断治療指針
結果と考察
1.難治化因子:喘息難治化因子として、AIAは強い危険因子であることが初めて確認。またAIAの中では、LT過剰が難治化に関与することを発見(谷口、CEA 2011印刷中)。
2.診断:末梢血好酸球はアスピリン添加でCD11bの発現が増大し、PGE2の減少がトリガーとなる(榊原)。尿中LXs代謝産物とLTE4の比が、AIAの診断に有用。唾液中のLT/LXsがAIA診断に有用であることを発見(谷口、投稿中、およびAI2011)。
3.病因病態:
(1)CysLT2-R KOマウスが作成された。喘息モデルを用いた解析により、LTB4受容体とcysteinyl LT受容体は、異なる生理活性を示す(長瀬)。
(2)inflammasomeの構成分子であるNLRP3遺伝子多型(rs4612666)とAIAとの関連を発見(玉利)。
(3)LTとLX/15epi-LXの不均衡がAIAに関与(谷口、CEA 印刷中)。さらにPGE2の全身産生低下を認めた(JACI 2010)
(4)一般喘息では安定期でも好塩基球の活性化があり、発作時にはその活性化が有意に顕著だ(谷口JACI 2010)が、AIAでは好塩基球の活性化が少ない。
4.鼻茸病態:
(1)プロテオーム解析:AIAで発現が亢進し、同定しえた蛋白Eosinophil lysophospholipase とProtein-X を実際の鼻茸からの組織切片を用いて免疫組織化学を行った。鼻茸再発例では、Protein-Xが高値で鼻茸に形成に関与する特異的蛋白の可能性が示唆(藤枝)。
(2)鼻茸予後:AIAが最も再燃率が高かったが、黄ブ菌の検出は有意でなかった。難治性因子として肥満細胞や感染の検討をおこなったが知見なし(春名)。
5.NSAIDs蕁麻疹:NSAIDs摂取により蕁麻疹や血管浮腫を生じた例を解析し、血管浮腫ではCOX-2阻害薬と塩酸チアラミドが、蕁麻疹ではメロキシカムが安全(池澤、投稿中)。
結論
以上多角的にかつ国際的なレベルでの業績がNSAIDs不耐症に関して得ることができた。また、診断治療指針の概略は国立病院機構相模原病院臨床研究センターHP上に掲載し情報伝達した。

公開日・更新日

公開日
2011-09-20
更新日
-

文献情報

文献番号
201023005B
報告書区分
総合
研究課題名
NSAIDs不耐症の病態解明と診断治療指針作成に関する研究
課題番号
H20-免疫・一般-005
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
谷口 正実(独立行政法人国立病院機構相模原病院)
研究分担者(所属機関)
  • 池澤 善郎(横浜市立大学大学院医学研究科)
  • 榊原 博樹(藤田保健衛生大学医学部)
  • 長瀬 隆英(東京大学)
  • 春名 眞一(獨協医科大学)
  • 藤枝 重治(福井大学医学部感覚運動医学講座)
  • 玉利 真由美(理化学研究所 ゲノム医科学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本症を多角的に検討し、国際的な成果をあげる。
1)頻度と難治化因子
2)病因病態解明
3)in vitro診断方法
4)鼻茸病態からの検討
5)皮疹病態
6)診断治療指針
研究方法
1.難治化因子としてAIAの関与と鼻茸患者での頻度
2.病因病態解明:
(1)CysLT2-Rを標的としたノックアウトマウスを新規に作成・解析
(2)遺伝子解析
(3)AIAにおけるPGE2、LXs、2,3-dinor-911PGF2を測定。
(4)炎症細胞からの解析:末梢血好塩基球活性化をflow cytometryを用いて解析。
(5)AIA患者例のアデノシン感受性
3.末梢血球からの診断方法をアスピリン添加時のCD11b発現から検討
4.鼻茸の検討:
(1)鼻茸組織をプロテオーム解析し蛋白レベルでの発現変化同定。
(2)好酸球性鼻茸の予後とその関与因子
(3)鼻茸がU-LTE4やアスピリン感受性に及ぼす影響
5.皮疹患者の COX-1およびCOX-2阻害薬などに対する反応性。
6.診断治療指針の作成: HPにその概略を掲載し情報伝達。
結果と考察
1.疫学での新規成果
(1)難治化とリモデリングの危険因子であること初めて証明(CEA 2011 in press)。またCys-LTs過剰産生が最も強いAIAの難治化因子と証明。
(2)AIAの正確な頻度(9%)が前向き調査で判明。
(3)副鼻腔炎のうちでのAIAの頻度は5.8%。
2.病因病態解明でも新規国際的成果
(1)cysLT2受容体とLTB4受容体KOマウスの作成に成功。
(2)NLRP3の遺伝子多型rs4612666とAIA発症が関連(JACI 2009 AJCCR 2009)。
(3)AIAの基礎病態にPGE2低下(JACI2010)と抗炎症性Lx(CEA 2011)の関与と酸化ストレスの否定(JACI 2010)。
(4)好塩基球活性化について初めて証明(JACI 2010)。
(5)新規好酸球活性化メディエーターeoxin C4の関与(CEA 2009)。
(6)唾液で測定可能(AI 2010)。
3.鼻茸病態からの検討:(1)プロテオーム解析中で多因子が関与(特許申請)。(2)AIAが再燃しやすい。(3)鼻茸がCys-LTs過剰産生とアスピリン感受性に関与。
4.皮疹の多種病態を証明(アレルギー 2011)
結論
上記のように多くの国際的な成果を挙げ、海外一流誌に発表した。本症の頻度や難治化への関与を初めて明らかにした。診断治療の手引きをHP上に公開した。

公開日・更新日

公開日
2011-09-20
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201023005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
1)疫学:喘息難治因子(CEA2011)LTが難治因子、喘息の9%(谷口)、副鼻腔炎の6%(藤枝)。2)病態:cysLT2、LTB4受容体KOM作成解析(長瀬)、遺伝子(玉利JACI2009 AJCCR2009)、PGE2(JACI2010)Lx(CEA2011)酸化ストレス(JACI2010)、好塩基球活性(JACI2010)Eoxin(CEA 2009)唾液診断(AI2010)(谷口)。3)鼻茸:プロテオーム解析でX因子(特許申請 藤枝)、難治(春名)、LT過剰(谷口)。4)皮疹病態(池澤)
臨床的観点からの成果
1)疫学:AIAが喘息難治化因子であり、LT過剰産生がAIAの難治化因子であることを発見。さらに日本人でのAIA頻度が明らかできた。2)病因:基礎病態にPGE2低下と抗炎症性Lxの低下がり、酸化ストレス関与は否定された。また唾液で測定可能で新規診断の可能性を見出した。過敏にはマスト細胞活性AIAが主役であることを発見。いずれも今後の病因解明の一助となる貴重な成績である。3)鼻茸:鼻茸が再燃しやすいことと、AIAの本質的病態であることを示した。4)NSAIDs皮疹はNSAIDs反応性が一様でない。
ガイドライン等の開発
1)HP上での医師向け、患者向けのNSAIDs不耐症の診断治療手引きの情報発信:
国立病院機構相模原病院 臨床研究センターのHP上に医師向けと患者向けの情報発信を行った。今後はさらに改定を続け、書物化する予定である。
2)日本人における初めての疫学成績:今回明らかとなったAIAが日本人成人喘息での最も強い難治化因子であること(CEA 2011)、さらに日本人成人喘息や副鼻腔炎におけるAIA頻度は、今後のJGLガイドライン記載されるであろう貴重な初めての成績である。
その他行政的観点からの成果
特になし
その他のインパクト
1)専門医向け啓蒙
(ア)日本アレルギー学会、日本呼吸器学会における教育講演、セミナー開催ここ3年でNSAIDs不耐症関連で合計8回講演
(イ)相模原臨床アレルギーセミナー(参加Dr280名)で毎年講義=ここ3年で3回
2)一般医師向け講演 NSAIDs不耐症関連講演がここ3年で30回以上
3)薬剤師向け講演 NSAIDs不耐症関連講演がここ3年で4回
4)マスコミ:2009年テレビ朝日でアスピリン喘息に関連する啓蒙

発表件数

原著論文(和文)
10件
原著論文(英文等)
19件
その他論文(和文)
64件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
114件
学会発表(国際学会等)
26件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計2件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Noritaka Higashi, Haruhisa Mita, Emiko Ono et al.
Profile of eicosanoid generation in aspirin-intolerant asthma and anaphylaxis assessed by new biomarkers
J Allergy Clin Immunol 2010 , 125 (5) , 1084-1091  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
201023005Z