リアルタイムモニター花粉数の情報のあり方の研究と舌下ペプチド・アジュバント療法の臨床研究

文献情報

文献番号
201023003A
報告書区分
総括
研究課題名
リアルタイムモニター花粉数の情報のあり方の研究と舌下ペプチド・アジュバント療法の臨床研究
課題番号
H20-免疫・一般-003
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
大久保 公裕(日本医科大学 耳鼻咽喉科)
研究分担者(所属機関)
  • 太田 伸男(山形大学 医学部)
  • 岡野 光博(岡山大学 医学部)
  • 岡本 美孝(千葉大学 医学部)
  • 後藤 穣(日本医科大学 医学部)
  • 永田 真(埼玉医科大学 医学部)
  • 藤枝 重治(福井大学 医学部)
  • 増山 敬祐(山梨大学 医学部)
  • 湯田 厚司(三重大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
スギ花粉症は小児の増加も多く、成人含めQOLが悪化し医療費の増加につながる。しかし正確なリアルタイムモニター(RTM)花粉飛散がセルフケアを向上させ、医療費の低下につながる。RTMでの問題点の解決が望まれる。新しい治療法は免疫療法のメカニズムの解明から生まれるものもあり、サイトカイン、制御性T細胞(T-reg)、スギ特異的Th2細胞クローン(T-clo)などより検討が必要である。舌下免疫療法(SLIT)は成人、小児での検討や、抗原をペプチドに置き換えた検討などを行った。
研究方法
RTMでの補正マトリックスを作成した。複数地域でRTM、ダーラム型花粉捕集器での花粉数の相関を検討した。飛散期に症状、NO、呼吸機能検査を施行した。ORMDL3遺伝子に関して、花粉症患者のSNP解析を行い、リスクアレルを同定し、コードする蛋白の機能解析を行った。SLITを含めた免疫療法の効果発現機序の研究をおこなった。SLITの成人、小児での臨床効果を検討した。ペプチドSLITの無作為化二重盲検試験を実施した。ペプチドの研究として反応するT-cloを検討した。またT-regの免疫療法における役割を検討した。
結果と考察
マトリックスでの補正値は0.84から0.92であり、実際の飛散花粉数に近づいた。同一市内のRTMとダーラム値はほぼ一致していた。飛散での呼気NO濃度は有意に上昇していたが、症状との相関は認められず、呼吸機能も変動なかった。ORMDL3ではSNP(rs7216389)で有意な相関を示し、リスクアレルはTTで、IL-10、 IL-17の産生が高く、スフィンゴシン1リン酸、Intelectin-1と共に花粉症関連遺伝子である事が示唆された。免疫療法ではCry j 2に対するIL-5産生は有意に抑制されていた。SLITでもIL-10産生T-regの経時的増加があった。臨床的には皮下免疫療法の効果が最も良く、次いでSLIT、初期療法の順であった。ペプチドSLITでは症状を抑制しなかった。T-cloサイズは飛散後には1.7倍の増加がみられ、スギ花粉特異的IgEと相関がみられた。花粉症でのnT-regの役割が確認され、治癒に向けた検討ができた。
結論
タイムモニターの精度の改善でセルフケアにつなげることが、患者の喘息のような慢性変化を防ぐことになる。また免疫療法ではSLIT、皮下とも高い効果を示し、特異的T細胞サイトカイン産生の変化、T-regの増加などによる事が示された。しかしペプチドは舌下では十分な効果は検証できなかった。基礎的検討からT-regやT-cloが花粉症治療バイオマーカーになる可能性を明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2011-09-20
更新日
-

文献情報

文献番号
201023003B
報告書区分
総合
研究課題名
リアルタイムモニター花粉数の情報のあり方の研究と舌下ペプチド・アジュバント療法の臨床研究
課題番号
H20-免疫・一般-003
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
大久保 公裕(日本医科大学 耳鼻咽喉科)
研究分担者(所属機関)
  • 太田 伸男(山形大学 医学部)
  • 岡野 光博(岡山大学 医学部)
  • 岡本 美孝(千葉大学 医学部)
  • 後藤 穣(日本医科大学 医学部)
  • 永田 真(埼玉医科大学 医学部)
  • 藤枝 重治(福井大学 医学部)
  • 増山 敬祐(山梨大学 医学部)
  • 湯田 厚司(三重大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
スギ花粉症は有病率が高くQOLが障害される。悪化・増加抑制にはセルフケアと根治的治療法が必須である。このためリアルタイムモニター(RTM)のより適切な情報発信が望まれる。根治的治療法は免疫療法(SCIT)メカニズムの解明から生まれ、サイトカイン、制御性T細胞(T-reg)、スギ特異的Th2細胞クローン(T-clo)などの検討が必要である。舌下免疫療法(SLIT)の成人、小児の検討や、ペプチドに置き換えた検討など今後の新しい治療法の開発の礎となるべきである。花粉症の患者のQOL向上、セルフケアと根治療法というキイワードを軸に研究を行う。
研究方法
花粉誤認率から補正式を作成しRTM精度検討をし各地で検証、花粉症のQOL、睡眠、下気道への影響を検討、候補遺伝子アプローチと全ゲノム解析を行った。またSLIT効果判定の目的で網羅的タンパク解析、その機能解析を行い、またSLITでのIL-10産生CD4T細胞、IL-10産生CD14陽性単球、サイトカインなど測定した。SLITの効果をSCIT、初期療法と経年的に検討、ペプチドSLITを行った。丸山ワクチンを動物実験でアジュバント効果を検証、T-cloサイズ変動を検討した。既知のスギ花粉ペプチド以外の分子検出を行い、反応性の検討を行った。
結果と考察
3年間とも補正式で飛散花粉数に近づいた。花粉症喘息合併の3割で喘息の悪化があり、花粉症治療により軽減し、呼気NOは飛散期に上昇し、睡眠障害があった。候補遺伝子はIFN-γ(rs2234711)、DAF(rs10746463)、ORMDL3(rs7216389)が見つかった。鼻粘膜Intelectin-1などの遺伝子変化もあった。SCITでは IL-5 産生が低下した。SLITの網羅的蛋白解析ではApolipoprotein A IV(アポA4)が臨床効果と相関し、臨床効果はSCIT、SLIT、初期療法の順であった。経年的SLITは初期より本格飛散以降で初回SLITより軽症となり、ペプチドSLITの効果は限定的だった。アジュバントとしての丸山ワクチンの可能性が示された。T-cloサイズは花粉飛散で増加しIgEと相関した。Cry j 1のp61-80など新規T細胞ペプチドがされた。SLITではnTregは変化ないが誘導性Tr1は正常人と同じく増加した。
結論
RTMの改善によりセルフケアは向上し、慢性への移行を防ぐ。SCIT、SLITは高い効果を示しT細胞サイトカイン産生の変化、T-regの増加が示されたがペプチドは舌下では十分な効果がなかった。T-reg、T-cloが治療バイオマーカーになる可能性がある。

公開日・更新日

公開日
2011-09-20
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201023003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
網羅的蛋白解析からApolipoprotein A IV(apo-A4)が舌下免疫療法(SLIT)の臨床マーカーである結果を得、apo-A4はCryJ1刺激のヒスタミン遊離を抑制、誘導性制御性T細胞、Tr1がSLIT群で有意に増加することを見出し、花粉症の候補遺伝子としてIFN-γ(rs2234711)DAF(rs10746463)ORMDL3(rs7216389)を見つけた。既存以外のスギ花粉エピトープが判明、反応するT細胞クローンを樹立した。スギ特異的T細胞クローンは季節後に増加した。
臨床的観点からの成果
リアルタイムモニターの精度を向上させるべく、補正式を組み込み、ダーラムでの飛散花粉数との相関を向上させた。花粉症ではQOL、睡眠、喘息の悪化が認められた。3年間、薬物での初期療法、皮下免疫療法(SCIT)、SLITを比較し、SCIT、SLIT、初期療法の群で症状抑制が認められた。またSLITでは初回のSLITより2年以上に渡るSLITの効果が高いことが検証された。舌下ペプチド免疫療法では限定的な効果しか得られなかった。またアジュバントとしての丸山ワクチンの可能性が示唆された。
ガイドライン等の開発
ガイドラインはアレルギー疾患・治療ガイドラインは日本アレルギー学会、鼻アレルギー診療ガイドラインは編集委員会により作成されているが、どちらのアレルギー性鼻炎部門主任編集者として厚生労働省科学研究費補助金事業の研究成果を盛り込んでいる。
その他行政的観点からの成果
3年間の研究から厚生労働省ホームページ「花粉症特集」に
「はじめに-花粉症の疫学と治療そしてセルフケア-」http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/ookubo.html 
「的確な花粉症治療のために」
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/dl/kafun_chiryo.pdf
をアップロードした。
その他のインパクト
花粉症市民講演会はこの研究班の平成20年12月、平成21年12月、平成22年12月すべてに主催として行い、厚生労働省の後援を受けている。またこれらの講演会の記事は朝日新聞に掲載されている。舌下免疫療法SLITに関しては多くのマスコミに取り上げられ、この後押しもあり、スギ花粉症に対する舌下免疫療法の臨床治験が平成22年10月より始まった。

発表件数

原著論文(和文)
8件
原著論文(英文等)
43件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
32件
学会発表(国内学会)
19件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
3件
「出願」「取得」計3件
その他成果(特許の取得)
3件
「アレルギー疾患の治療薬かつ治療効果のマーカー」、「減感作療法における治療効果を予測するバイオマーカー」、「減感作療法における治療効果を予測するバイオマーカー」
その他成果(施策への反映)
1件
厚生労働省HP「花粉症特集」の「はじめに-花粉症の疫学と治療そしてセルフケア-」に 「的確な花粉症治療のために」掲載
その他成果(普及・啓発活動)
4件
花粉症市民講演会(H20.21.22の3回実施) アレルギー市民講演会(H22.3月実施)

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yamanaka K, Yuta A, Kakeda M, Kitagawa H, Ogihara H, Okubo K et al.
SLIT improves cedar pollinosis by restoring IL-10 production form Tr1 and monocyte –IL-10 productivity is critical for becoming allergic-
AllergolInt , 60 , 45-51  (2011)
原著論文2
Yamanaka KI, Yuta A, Kakeda M,Okubo K et al.
Induction of IL-10-producing regulatory T cells with TCR diversity by epitope-specific immunotherapy in pollinosis.
J Allergy Clin. Immunol. , 124 , 842-845  (2009)
原著論文3
Okubo K, Gotoh M, Fujieda S, Okano M, et al.
A randomized double-blind comparative study of sublingual immunotherapy for cedar pollinosis.
Allergology International , 57 , 265-275  (2008)
原著論文4
Sakashita M, Yasuda1 K, Hirota Ohkubo K et al.
Association of serum IL-33 level and the IL-33 genetic variant withJapanese cedar pollinosis.
Clin. Exp. Allergy , 38 , 1875-1881  (2008)
原著論文5
Okano M,Fujiwara T, Okubo K et al.
Allergen-specific immunotherapy alters the expression of BTLA, a co-inhibitory molecule, in allergic rhinitis.
Clin. Exp. Allergy , 38 , 1891-1900  (2008)
原著論文6
Makino Y, Noguchi E, Takahashi N, Okubo K, et al.
Apolipoprotein A-IV is a candidate target molecule for the treatment of seasonal allergic rhinitis.
J Allergy ClinImmunol , 126 (6) , 1163-1169  (2010)
原著論文7
Masuyama K,Yamamoto T, and Endo S. et al.
Analysis of heoper T cell responses to Cry j 1-derived peptides in patients with nasal allegy: camdidate for peptide-based immunotherapy of Japanese cedar pollinosis.
AllergolInt , 58 , 63-70  (2009)
原著論文8
Nomiya R, Okano M, Fujiwara T, Maeda M, et al.
CRTH2 plays an essential role in the pathophysiology of Cry j 1-induced pollinosis in mice.
Journal of Immunology , 180 , 5680-5688  (2008)
原著論文9
Okano M, Fujiwara T, Higaki T, Makihara Set al.
Characterization of pollen antigen-induced IL-31 production by peripheral blood mononuclear cells in allergic rhinitis.
Journal of Allergy and Clinical Immunology , 127 , 277-279  (2011)
原著論文10
Hosoya K, Satoh T,Saeki K, Igawa K, Okano M et al.
Gene silencing of STAT6 with siRNA ameliorates contact hypersensitivity and allergic rhinitis.
Allergy , 66 , 124-131  (2011)
原著論文11
Muradil M, Okamoto Y, Yonekura S et al.
Reevaluation of pollen quantitation by an automatic pollen counter.
Allergy Asthma Proc .2010;31:422-427et , 31 , 422-427  (2010)
原著論文12
Takaku Y, Nakagome K, Kobayashi T, Yamaguchi T et al.
Changes in airway inflammation and hyperresponsiveness after inhaled corticosteroid cessation in allergic asthma.
Int Arch Allergy Immunol. Suppl , 1 , 41-46  (2010)
原著論文13
Ahikiro Ishida, Nobuo Ohta, Shuji Koike et al.
Overexpression of glucocorticoid receptor-beta in severe allergic rhinitis.
AurisNasus Larynx , 37 , 584-588  (2010)
原著論文14
Imoto Y et al.
S2554X mutation in the filaggrin gene is associated with allergen sensitization in the Japanese population.
J Allergy ClinImmunol. , 125 , 498-500  (2010)
原著論文15
Yamada T, et al
Poly(I:C) induces BLyS- expression of airway fibroblasts through phosphatidylinositol 3-kinase.
Cytokine. , 50 , 163-169  (2010)
原著論文16
Takahashi Y, Aoyama M, Abe T,Ohta N et al.
Development of electron spin resonance radical immunoassay for measurement of airborne orchard grass (Dactylisglomerata) pollen antigens.
Aerobiologia, , 24 , 53-59  (2008)
原著論文17
Ouyang Y, Miyata M, Masuyama K,et al.
TGF-b signaling may play a role in the development of goblet cell hyperplasia in a mouse model of allergic rhinitis.
AllergolInt , 59 , 313-319  (2010)
原著論文18
Masuyama K, Chikamatsu K, Ikagawa S, Matsuoka T et al.
Analysis of heoper T cell responses to Cry j 1-derived peptides in patients with nasal allegy: camdidate for peptide-based immunotherapy of Japanese cedar pollinosis.
AllergolInt , 58 , 63-70  (2009)
原著論文19
Chikamatsu K, Sakakura K, Matsuoka T, Endo S, et al.
Analysis of T-helper responses and FOXP3 gene expression in patients with Japanese cedar pollinosis.
Am J Rhinol , 22 , 582-588  (2008)
原著論文20
Takahashi G, Matsuzaki Z, Nakayama T et al.
Patterns of drug prescription for Japanese cedar pollinosis using a clinical vignette questionnaire.
AllergolInt , 57 , 405-411  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
201023003Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,000,000円
(2)補助金確定額
8,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 0円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 0円
間接経費 0円
合計 0円

備考

備考
消耗品代が予定より上回ったため、差異が生じました。この差異の6225円は自己負担金です。

公開日・更新日

公開日
2015-06-29
更新日
-