関節リウマチ骨髄血中の疾患誘導因子解明と根治療法開発研究

文献情報

文献番号
201023002A
報告書区分
総括
研究課題名
関節リウマチ骨髄血中の疾患誘導因子解明と根治療法開発研究
課題番号
H20-免疫・一般-002
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
越智 隆弘(大阪警察病院 医務部)
研究分担者(所属機関)
  • 吉川 秀樹(国立大学法人大阪大学大学院医学系研科 整形外科学)
  • 下村 伊一郎(国立大学法人大阪大学大学院医学系研究科 内分泌・代謝内科学)
  • 西本 憲弘(和歌山県立医科大学 免疫制御学講座)
  • 大和谷 厚(国立大学法人大阪大学大学院医学系研究科・保健学専攻)
  • 鈴木 隆二(国立相模原病院 臨床研究センター)
  • 島岡 康則(行岡病院 リウマチ臨床研究センター)
  • 澤井 高志(岩手医科大学病理)
  • 山村 研一(熊本大学生命資源研究・支援センター)
  • 長田 重一(京都大学大学院医学研究科 分子生体統御学・生化学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
40,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「RA主病巣は骨髄」という仮説のもとに、未解明のRA病因解明と根治療法開発を進める。Ⅰ)RA骨髄病巣説に関して動物実験系を用いての裏づけ研究、Ⅱ)RAの病因・病態解明研究と抑制物質、疾患予後解明法開発研究、(Ⅲ)RA骨髄細胞からの病因解明研究。
研究方法
Ⅰ)動物実験系;1)GFPTgマウス由来骨髄細胞移植マウスの関節炎発症に伴う細胞病態解析。2)DNaseⅡ欠損Mφのマウス関節炎の病態解析研究。Ⅱ)RAの誘因・病態形成解明と抑制物質、疾患予後予測因子などの開発研究、1)免疫電顕によるナース様細胞病態解明研究、2) CD14+細胞の分化病態機能解明研究、3)アディポネクチン(Adipo)、4)オステオポンティン(OPN)、5)RA予後予測因子としてのC1q値、6)ヒスタミン(His)など、Ⅲ)RA骨髄細胞の1)新規遺伝子解析研究、2) RA患者骨髄遺伝子機能のネットワーク解析。
結果と考察
Ⅰ)動物実験;1)関節炎発症に伴ってGFP陽性細胞は骨髄から滑膜組織内、骨破壊病巣に移行し、骨髄病巣の重要性が示された。2)DNaseⅡ欠損マウスの主病態は骨髄におけるアポトーシス障害で、関節炎発症にはIL-6, TNFαは必須であり、リンパ球には関節炎抑制効果が示された。Ⅱ) ナース細胞抑制因子など;1)免疫電顕によりナース様細胞はCD14+細胞と判明した。2)CD14+細胞とナース様細胞との接触によりTRAP陽性単球、さらにRA特異的な(MMP12+)破骨細胞様細胞など多様な分化が認められた。3)Adipoはナース細胞機能を抑制した。4)RA特異な75kD OPNはナース細胞機能を抑制した。5)RA患者血清C1q値は関節破壊の予後と相関した。6)HisのもRA抑制効果が認められた。Ⅲ)RA骨髄細胞1)SHIPS、AREGなどの病態解明が進められた。2)遺伝子改変マウスの長期経過も含めて病態観察した。3)RA患者の骨髄に「免疫」機能ネットワーク活性増加などが示された。
結論
Ⅰ)多発関節炎モデル動物で示され、ヒトの腸骨遺伝子機能から示唆されたように、RAの主病巣は骨髄にあるという仮説が強く支持された。Ⅱ)RA骨髄や滑膜病巣に多数認められるナース様細胞、CD14(+)細胞ともに多彩な重要病態を形成する重要な病因細胞であることが明確になった。Ⅲ)Adipo, OPN, His、SHPS-1/SIRP-Aなどは有力な治療薬となり得る物質と判明した。

公開日・更新日

公開日
2011-09-20
更新日
-

文献情報

文献番号
201023002B
報告書区分
総合
研究課題名
関節リウマチ骨髄血中の疾患誘導因子解明と根治療法開発研究
課題番号
H20-免疫・一般-002
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
越智 隆弘(大阪警察病院 医務部)
研究分担者(所属機関)
  • 吉川 秀樹(国立大学法人大阪大学大学院医学系研科 整形外科学)
  • 下村 伊一郎(国立大学法人大阪大学大学院医学系研究科 内分泌・代謝内科学 )
  • 西本 憲弘(和歌山県立医科大学 免疫制御学講座)
  • 大和谷 厚 (国立大学法人大阪大学大学院医学系研究科・保健学専攻)
  • 鈴木 隆二(国立相模原病院 臨床研究センター)
  • 島岡 康則(行岡病院 リウマチ臨床研究センター)
  • 澤井 高志(岩手医科大学 病理学講座 先進機能病理学分野)
  • 山村 研一(熊本大学 生命資源研究・支援センター)
  • 長田 重一(京都大学大学院医学研究科 分子生体統御学・生化学)
  • 宇月 美和(岩手医科大学医学部 病理学第一講座(20年))
  • 前田 朋子(塩野義製薬株式会社 医薬開発研究本部 創薬研究所(20年))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「RA主病巣は骨髄」という仮説のもとに、未解明のRA病因解明と根治療法開発を進める。Ⅰ)RA骨髄病巣説に関して動物実験系を用いての裏づけ研究、Ⅱ)RAの病因・病態解明研究と抑制物質、疾患予後解明法開発研究、(Ⅲ)RA骨髄細胞からの病因解明研究。
研究方法
Ⅰ)動物実験系;1)GFPTgマウス由来骨髄細胞移植マウスの関節炎発症に伴う細胞病態解析。2)DNaseⅡ欠損Mφのマウス関節炎の病態解析研究。Ⅱ)RAの誘因・病態形成解明と抑制物質、疾患予後予測因子などの開発研究、1)免疫電顕によるナース様細胞病態解明研究、2) CD14+細胞の分化病態機能解明研究、3)アディポネクチン(Adipo)、4)オステオポンティン(OPN)、5)RA予後予測因子としてのC1q値、6)ヒスタミン(His)など、Ⅲ)RA骨髄細胞の1)新規遺伝子解析研究、2) RA患者骨髄遺伝子機能のネットワーク解析。
結果と考察
Ⅰ)動物実験;1)関節炎発症に伴ってGFP陽性細胞は骨髄から滑膜組織内、骨破壊病巣に移行し、骨髄病巣の重要性が示された。2)DNaseⅡ欠損マウスの主病態は骨髄におけるアポトーシス障害で、関節炎発症にはIL-6, TNFαは必須であり、リンパ球には関節炎抑制効果が示された。Ⅱ) ナース細胞抑制因子など;1)免疫電顕によりナース様細胞はCD14+細胞と判明した。2)CD14+細胞とナース様細胞との接触によりTRAP陽性単球、さらにRA特異的な(MMP12+)破骨細胞様細胞など多様な分化が認められた。3)Adipoはナース細胞機能を抑制した。4)RA特異な75kD OPNはナース細胞機能を抑制した。5)RA患者血清C1q値は関節破壊の予後と相関した。6)HisのもRA抑制効果が認められた。Ⅲ)RA骨髄細胞1)SHIPS、AREGなどの病態解明が進められた。2)遺伝子改変マウスの長期経過も含めて病態観察した。3)RA患者の骨髄に「免疫」機能ネットワーク活性増加などが示された。
結論
Ⅰ)多発関節炎モデル動物で示され、ヒトの腸骨遺伝子機能から示唆されたように、RAの主病巣は骨髄にあるという仮説が強く支持された。Ⅱ)RA骨髄や滑膜病巣に多数認められるナース様細胞、CD14(+)細胞ともに多彩な重要病態を形成する重要な病因細胞であることが明確になった。Ⅲ)Adipo, OPN, His、SHPS-1/SIRP-Aなどは有力な治療薬となり得る物質と判明した。

公開日・更新日

公開日
2011-09-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2012-02-15
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201023002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
従来、RAの原因病巣は関節滑膜に在り、リンパ球が主病態形成細胞として諸研究が進められてきたが病因解明には到らなかった。本研究により、造血系骨髄で産生されるCD14+系細胞が病因であり、免疫機能亢進および骨関節破壊を誘導するものと分かった。リンパ球系細胞機能亢進によると考えられてきたRAにおいて、実はCD14+細胞機能亢進により諸病態が説明できることが判明した。RAの病因・病態解明に直結するとともに、生体の免疫学解明の面からも重要な進歩である。

臨床的観点からの成果
従来から、RAの原因病巣は関節滑膜に在り、リンパ球機能亢進により諸病態が形成されるものとして治療薬が開発されてきたが、根治には到っていない。本研究に基づき、CD14+系の未分化細胞を治療標的とすることにより、免疫機能亢進、骨関節破壊、骨粗鬆症を一元的に説明でき、根治療法開発への的が確定できたことは臨床的に重要な進歩である。
ガイドライン等の開発
ガイドライン開発などの特記事項なし。
その他行政的観点からの成果
病因未解明、根治治療薬がないという状態から、大きく進める開発指針ができたことは重要である。また、RA患者団体から、病因解明を求められてきたが、説明できる段階に到った。
その他のインパクト
・RAのNLCに関する本研究発表に続き、海外研究者からRAだけでなく、白血病患者、更に癌患者にもNLC様細胞の報告が続いている。
・本研究は2010年度で終了したが、その成果に基づく詳細解明目的に、2011年度から新たな研究班が立ち上がり、血液学者を加える、またiPS細胞を用いるなどの新たな手法によりRA骨髄細胞の詳細な研究を進める研究班が活動を続けている。「関節リウマチにおける骨髄・骨格形成細胞間ネットワークの解明と根治療法の開発」研究代表者の西本憲弘氏は平成25年度で終了。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
76件
その他論文(和文)
34件
その他論文(英文等)
3件
学会発表(国内学会)
96件
学会発表(国際学会等)
54件
その他成果(特許の出願)
1件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
1件
国名:米国 出願日:2010年9月1日発明の名称: Method of screening a blood coagulation modulator出願人:京都大学
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
平成22年10月26日 日本経済新聞、読売新聞、京都新聞 他「関節リウマチ 子供発症 仕組み解明」

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yoshida W, Uzuki M, Nishida J, etal.
Examination of in vivo gelatinolytic activity in rheumatoid arthritis synovial tissue using newly developed in situ zymography and image analyzer.
Clin Exp Rheumatol. , 27 , 587-593  (2009)
原著論文2
Kurose R, Ichinohe S, Tajima G, etal.
Characterization of human synovial fluid cells of 26 patients with osteoarthritis knee for cartilage repair therapy.
Int J Rheum Dis. , 13 (1) , 68-74  (2010)
原著論文3
Takamiya M, Fujita S, Niitsu H, etal.
A Case of Takayasu arteritis complicated by right atrium perforation and injuries of the right common iliac artery and vein caused by cannulation for percutaneous cardiopulmonary support.
Am J Forensic Med Pathol. , 31 (1) , 72-76  (2010)
原著論文4
Kawane K, Tanaka H, Kitahara Y,etal.
Cytokine-dependent but acquired immunity-independent arthritis caused by DNA escaped from degradation.
Proc Natl Acad Sci USA , 107 , 19432-19437  (2010)
原著論文5
Nagata S, Hanayama R & Kawane K
Autoimmunity and the Clearance of Dead Cells.
Cell , 140 , 619-630  (2010)
原著論文6
Nagata, S.
Apoptosis and Autoimmune Diseases.
Ann NY Acad Sci. , 1209 , 10-16  (2010)
原著論文7
Kitahara Y, Kawane K & Nagata S
Interferon-induced TRAIL-independent cell death in DNase II-/- embryos.
Eur J Immnol , 40 , 2590-2598  (2010)
原著論文8
Nomura, K., Kuroda, S., Yoshikawa, H.,
Inflammatory osteoclastogenesis can be induced by GM-CSF and activated undes TNF immunity.
Biochem Biophys Res Commun, , 367 , 881-887  (2008)
原著論文9
Ebina, K., Oshima, K., Matsuda, M.etal.
Adenovirus-mediated gene transfer of adiponectin reduces the severity of collagen-induced arthritis in mice
Biochem Biophys Res Commun , 378 (2) , 186-191  (2009)
原著論文10
Ebina, K., Fukuhara, A., Ando, W.etal.
Serum adiponectin concentrations correlate with severity of rheumatoid arthritis evaluated by extent of joint destruction
Clin Rheumatol , 28 (4) , 445-451  (2009)
原著論文11
Hirao, M., Hashimoto, J., Tsuboi, H.,etal.
Laboratory and febrile features after joint surgery in rheumatoid arthritis patients treated with tocilizumab.
Annals of the Rheumatic Diseases , 68 , 654-657  (2009)
原著論文12
Hirohata, S., Yanagida, T., Tomita, T., etal.
Differential influences of bucillamine and methotrexate on the generation of fibroblast-like cells from bone marrow CD34+ cells of rheumatoid arthritis patients,
International Immunopharmacology, , 9 , 86-90  (2009)
原著論文13
Take, Y., Nakata, K., Hashimoto, J., etal.
Specifically modified osteopontin in rheumatoid arthritis fibroblast-like synoviocytes supports interaction with B cells and enhances production of interleukin-6.
Arthritis Rheumatism , 60 , 3591-3601  (2009)
原著論文14
Ishida S, Yamane S, Nakano S, etal.
The interaction of monocytes with rheumatoid synovial cells is a key step in LIGHT-mediated inflammatory bone destruction.
Immunology , 19 , 315-324  (2009)
原著論文15
Ishida S, Yamane S, Ochi T,etal.
LIGHT induces cell proliferation and inflammatory responses of rheumatoid arthritis synovial fibroblasts via lymphotoxin beta receptor.
J Rheumatol. , 35 (6) , 960-968  (2008)
原著論文16
Araki, K., Takeda, T., Yoshiki, A., etal.
Establishment of germline-competent embryonic stem cell lines from the MSM/Ms strain.
Mammal. Genome , 20 , 14-20  (2009)
原著論文17
Araki, M., Araki, K. and Yamamura, K.
International gene trap project: towards gene-driven saturation mutagenesis in mice.
Current Pharmaceutical Biothechnology , 10 , 221-229  (2009)
原著論文18
Ishikawa S, Mima T, Aoki C,etal.
Abnormal expression of the genes involved in cytokine networks and mitochondrial function in systemic juvenile idiopathic arthritis identified by DNA maicroarray analysis.
Ann Rheum Dis. , 68 , 264-272  (2009)
原著論文19
Nishimoto N, Miyasaka N, Yamamoto K,etal.
Study of active controlled tocilizumab monotherapy for rheumatoid arthritis patients with an inadequate response to methotrexate SATORI significant reduction in disease activity and serum vascular endothelial growth factor by IL-6 receptor ...
Mod Rheumatol , 19 , 12-19  (2009)
原著論文20
11. Hashimoto J, Garnero P, van der Heijde D, etal.
A Combination of Biochemical Markers of Cartilage and Bone Turnover, Radiographic Damage and Body Mass Index to Predict Progression of Joint Destruction in Patients with Rheumatoid Arthritis treated with Disease Modifying Anti-Rheumatic Drugs.
Mod Rheumatol , 19 , 273-282  (2009)

公開日・更新日

公開日
2014-05-21
更新日
2015-06-30

収支報告書

文献番号
201023002Z