糖尿病・メタボリックシンドロームにおける内臓脂肪蓄積の評価に関する疫学研究

文献情報

文献番号
201021077A
報告書区分
総括
研究課題名
糖尿病・メタボリックシンドロームにおける内臓脂肪蓄積の評価に関する疫学研究
課題番号
H20-糖尿病等・若手-003
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
松下 由実(独立行政法人 国立国際医療研究センター 国際保健医療研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 溝上 哲也(独立行政法人 国立国際医療研究センター 国際保健医療研究部)
  • 野田 光彦(独立行政法人 国立国際医療研究センター 糖尿病・代謝症候群診療部)
  • 高橋 義彦(独立行政法人 国立国際医療研究センター 糖尿病・代謝症候群診療部)
  • 中川 徹(日立製作所 日立健康管理センター)
  • 山本修一郎(日立製作所 日立健康管理センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
12,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本のメタボリックシンドローム診断基準では、腹囲カットオフは男性85cm、女性90cmである。国際基準との整合性や疾病発症との関連性を含めいくつか課題も指摘されている。腹囲はメタボリックシンドロームの上流に位置づけられる内臓脂肪の簡易指標であることを考えると、まずは内臓脂肪蓄積と諸病態との関連を解明しておく必要がある。本研究は、糖尿病・メタボリックシンドローム、及び関連する病態における内臓脂肪蓄積の意義を明らかにすることを目的とする。このことによりメタボリックシンドローム診断基準を改訂する際に参考となる腹囲に関する知見を提供する。
研究方法
1. 人間ドックデータのデータベース化
コーディングマニュアルを作成した。元データを連結可能匿名化し、解析用データベースを完成した。糖尿病、高血圧、高脂血症、脳心血管疾患の既往歴、治療の有無は人間ドックの調査票および欠勤時の診断書より把握した。(ICD10コードによる分類を行った。)
2. 採血およびアディポネクチンの測定(同意書の得られた人のみ)
人間ドック受付時に研究用採血についての説明・依頼文書と同意書を渡し、書面で同意を得て、アディポネクチンを測定した(約9,000名の測定を終了した)。
結果と考察
横断解析により、内臓脂肪蓄積が多いほど、メタボリックシンドロームのリスク重積が高まることが明らかになった。また、腹囲測定はCT測定による内臓脂肪面積に比べ、メタボリックシンドロームのリスク重積を女性では5割、男性では7割しか検出することができず、内臓脂肪蓄積の簡易指標として腹囲を用いることに限界があることが明かになった。縦断解析では、内臓脂肪面積の3年間の増加を50 cm2未満に抑制することにより、メタボリックシンドロームのリスク重積の解消につながる可能性が示唆された。
アディポネクチンは脂肪細胞が出すホルモンの一つで動脈硬化を防いだり、脂肪酸の燃焼を促したりする働きがあることが動物実験で分かっているが、今回、ヒトで同じ内臓脂肪の付き方でもアディポネクチン量によりメタボリックシンドロームのリスク重積が異なる事が明らかになった。
また、現在喫煙者が、15年禁煙することにより、メタボリックシンドロームのリスク重積が、非喫煙者と同等まで減少することが明らかになった。
結論
今後は、内臓脂肪の蓄積をより鋭敏に反映する効果的、経済的で簡便に測れる評価モデル式を身体計測値とバイオマーカー、生活習慣要因からさらに検討し、推定能力の高いものに改訂する必要があると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2011-09-16
更新日
-

文献情報

文献番号
201021077B
報告書区分
総合
研究課題名
糖尿病・メタボリックシンドロームにおける内臓脂肪蓄積の評価に関する疫学研究
課題番号
H20-糖尿病等・若手-003
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
松下 由実(独立行政法人 国立国際医療研究センター 国際保健医療研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 溝上 哲也(独立行政法人 国立国際医療研究センター 国際保健医療研究部)
  • 野田 光彦(独立行政法人 国立国際医療研究センター 糖尿病・代謝症候群診療部)
  • 高橋 義彦(独立行政法人 国立国際医療研究センター 糖尿病・代謝症候群診療部 )
  • 中川 徹(日立製作所 日立健康管理センター)
  • 山本修一郎(日立製作所 日立健康管理センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本のメタボリックシンドローム診断基準では、腹囲カットオフは男性85cm、女性90cmである。国際基準との整合性や疾病発症との関連性を含めいくつか課題も指摘されている。腹囲はメタボリックシンドロームの上流に位置づけられる内臓脂肪の簡易指標であることを考えると、まずは内臓脂肪蓄積と諸病態との関連を解明しておく必要がある。本研究は、糖尿病・メタボリックシンドローム、及び関連する病態における内臓脂肪蓄積の意義を明らかにすることを目的とする。このことによりメタボリックシンドローム診断基準を改訂する際に参考となる腹囲に関する知見を提供する。
研究方法
1. 既存の人間ドックデータのデータベース化
コーディングマニュアルを作成した。元データを連結可能匿名化し、解析用データベースを完成した。糖尿病、高血圧、高脂血症、脳心血管疾患の既往歴、治療の有無は人間ドックの調査票および欠勤時の診断書より把握した。(ICD10コードによる分類を行った。)
2. 採血およびアディポネクチンの測定(同意書の得られた人のみ)
人間ドック受付時に研究用採血についての説明・依頼文書と同意書を渡し、書面で同意を得た後、アディポネクチンを測定した(約9,000名の測定を終了した)。
結果と考察
横断解析により、内臓脂肪蓄積が多いほど、メタボリックシンドロームのリスク重積が高まることが明らかになった。また、腹囲測定はCT測定による内臓脂肪面積に比べ、メタボリックシンドロームのリスク重積を女性では5割、男性では7割しか検出することができず、内臓脂肪蓄積の簡易指標として腹囲を用いることに限界があることが明かになった。
縦断解析では、内臓脂肪面積の3年間の増加を50 cm2未満に抑制することにより、メタボリックシンドロームのリスク重積の解消につながる可能性が示唆された。
アディポネクチンは脂肪細胞が出すホルモンの一つで動脈硬化を防いだり、脂肪酸の燃焼を促したりする働きがあることが動物実験で分かっているが、今回、ヒトで同じ内臓脂肪の付き方でもアディポネクチン量によりメタボリックシンドロームのリスク重積が異なる事が明らかになった。
また、現在喫煙者が、15年禁煙することにより、メタボリックシンドロームのリスク重積が、非喫煙者と同等まで減少することが明らかになった。
結論
横断解析、縦断解析により、内臓脂肪面積の重要性が明らかになり、また、同じ内臓脂肪面積でもアディポネクチンの量により、メタボリックシンドロームのリスクが大きく異なることが明らかになった。  

公開日・更新日

公開日
2011-09-16
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201021077C

成果

専門的・学術的観点からの成果
内臓脂肪蓄積が多いほど、メタボリックシンドロームのリスク重積が高まることが明らかになった。また、腹囲測定はCT測定による内臓脂肪面積に比べ、メタボリックシンドロームのリスク重積を女性では5割、男性では7割しか検出することができないことが明らかになった。さらに、年齢別にみると、内臓脂肪面積とBMI、腹囲の動きは必ずしも一致しないことがわかり、現在、メタボリックシンドロームの腹囲カットオフは年齢別には示されていないが、年齢も考慮する必要があると考えられる。
臨床的観点からの成果
横断解析では、内臓脂肪面積の重要性が明らかになり、また、同じ内臓脂肪面積でもアディポネクチンの量により、メタボリックシンドロームのリスクが大きく異なることが明らかになった。縦断解析では、内臓脂肪面積の3年間の増加を50 cm2未満に抑制することにより、メタボリックシンドロームのリスク重積の解消につながる可能性が示唆された。 さらに、年齢別にみると、内臓脂肪面積のカットオフ値は異なり、特に40歳未満の人には小さなカットオフ値を用いた方が良いと考えられる。
ガイドライン等の開発
今後、内臓脂肪の蓄積をより鋭敏に反映する効果的、効率的、経済的で簡便に測れる評価モデル式を開発し、その式が循環器疾患リスクを予測できるかどうかについて追跡調査により明らかにし、ガイドライン等に反映させる予定である。
その他行政的観点からの成果
日本のメタボリックシンドローム診断基準では、腹囲カットオフは男性85cm、女性90cmである。国際基準との整合性や疾病発症との関連性を含めいくつか課題も指摘されている。腹囲測定はCT測定による内臓脂肪面積に比べ、メタボリックシンドロームのリスク重積を女性では5割、男性では7割しか検出することができず、内臓脂肪蓄積の簡易指標として腹囲を用いることに限界があることを明かにした。今後は内臓脂肪の蓄積をより鋭敏に反映する効果的、経済的で簡便に測れる評価モデル式の作成が必要である。
その他のインパクト
東京国際フォーラムにおいて、2009年8月に厚生労働科学研究費・研究成果等普及啓発事業の研究成果発表としてシンポジウムを開催した。肥満、メタボリックシンドロームの現状、予防法などの最新の治験を一般市民に広めた。2010年2月にはNHKニュースに取り上げられ、また、医学新聞のMedical Tribuneにも2度日立研究掲載していただき、さらに、三重県の招待講演で一般市民や専門家へも本研究から明らかになった研究成果を発表した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
22件
その他論文(和文)
9件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
25件
学会発表(国際学会等)
10件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
シンポジウム開催 「おなかによく効く市民公開講座 メタボ退治にどう立ち向かうか?! -目からウロコの“はらいい”ばなし」 (東京国際フォーラム 2009年8月) 

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Matsushita Y, Nakagawa T, Shinohara M, et al.
How can waist circumference predict the body composition?
Diabetology & Metabolic Syndrome. , 6 (1) , 11-  (2014)
10.1186
原著論文2
Matsushita Y, Nakagawa T, Yamamoto S, et al.
Adiponectin and visceral fat associate with cardiovascular risk factors
Obesity (Silver Spring). , 22 (1) , 287-291  (2014)
10.1002
原著論文3
Matsushita Y, Nakagawa T, Yamamoto S, et al.
Effect of longitudinal changes in visceral fat area on incidence of metabolic risk factors: the Hitachi Health Study
Obesity (Silver Spring). , 21 (10) , 2126-2129  (2013)
10.1002
原著論文4
Matsushita Y, Nakagawa T, Yamamoto S, et al.
Effect of longitudinal changes in visceral fat area and other anthropometric indices to the changes in metabolic risk factors in Japanese men: The Hitachi Health Study
Diabetes Care. , 35 (5) , 1139-1143  (2012)
10.2337
原著論文5
Matsushita Y, Nakagawa T, Yamamoto S, et al.
Visceral fat area cutoff for the detection of multiple risk factors of metabolic syndrome in Japanese: The Hitachi Health Study
Obesity. , 20 (8) , 1744-1749  (2012)
10.1038
原著論文6
Matsushita Y, Nakagawa T, Yamamoto S, et al.
Associations of smoking cessation with visceral fat area and prevalence of metabolic syndrome in men: the Hitachi Health Study
Obesity. , 19 (3) , 647-651  (2011)
10.1038
原著論文7
Matsushita Y, Nakagawa T, Yamamoto S, et al.
Associations of visceral and subcutaneous fat areas with the prevalence of metabolic risk factor clustering in 6292 Japanese individuals: the Hitachi Health Study
Diabetes Care. , 33 (9) , 2117-2119  (2010)
10.2337

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-

収支報告書

文献番号
201021077Z