糖尿病における失明、歯周病、腎症、大血管合併症などの実態把握とその治療に関するデータベース構築による大規模前向き研究

文献情報

文献番号
201021074A
報告書区分
総括
研究課題名
糖尿病における失明、歯周病、腎症、大血管合併症などの実態把握とその治療に関するデータベース構築による大規模前向き研究
課題番号
H21-糖尿病等・指定-005
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
田嶼 尚子(東京慈恵会医科大学 名誉教授として引き続き同大にて 研究実施)
研究分担者(所属機関)
  • 野田 光彦(国立国際医療研究センター)
  • 植木 浩二郎(東京大学)
  • 吉岡 成人(NTT東日本札幌病院)
  • 島野 仁(筑波大学)
  • 中村 二郎(名古屋大学)
  • 稲垣 暢也(京都大学)
  • 谷澤 幸生(山口大学)
  • 荒木 栄一(熊本大学)
  • 槇野 博史(岡山大学)
  • 北野 滋彦(東京女子医科大学)
  • 野口 俊英(愛知学院大学)
  • 西村 理明(東京慈恵会医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
22,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国の糖尿病患者数は、生活習慣の変化に伴って増加の一途をたどっている。糖尿病の早期発見・早期治療とともに、全国規模における糖尿病性合併症の実態を把握し、その発症・進展に関連する因子を同定することは重要である。本研究では、1)日本における糖尿病患者の合併症の実態を調査し、2)糖尿病管理・治療の合併症抑制への効果を判定し、3)糖尿病治療ガイドラインへの提言を行うこと、を目的とした。
研究方法
対象は、全国の大学病院、基幹病院および診療所、計444施設に通院中の40歳-75歳未満の1型および2型糖尿病患者6,398名で、登録期間は2007年6月-2009年11月である。登録時には患者基本情報、その後毎年1回、追跡情報(身体所見・血液検査・心電図・腎症指標・網膜症指標・神経障害指標・歯周病・糖尿病治療情報)の報告を依頼した。食事(BDHQ;簡易型自記式食事歴法質問票)、運動(国際身体活動調査票)、歯周病(口腔検査報告書、オルソパントモ)調査を一部施行した。イベント発生に関する評価項目は、腎症:連続2回アルブミン尿あるいは顕性蛋白尿の出現・血清Cr値2倍以上の上昇・透析導入、網膜症:単純・増殖前網膜症から増殖網膜症への進展・失明・光凝固・硝子体手術、神経障害:下肢切断術(末梢神経障害を伴う)・潰瘍あるいは壊疽の出現、大血管障害:心筋梗塞・狭心症・心不全・ASO・下肢切断術・脳卒中・TIA・血管再建術、悪性腫瘍の発生、歯周病:歯の喪失など、死亡とした。
結果と考察
症例報告書の回収率は追跡1年目が80.5%、追跡2年目が53.4%であった。対象とした患者背景は、2型糖尿病93.4%、男性59.0%、年齢60.8歳、糖尿病罹病期間10.8年、BMI 25、血圧130/75mmHg、HbA1c (JDS値)7.1%、LDL-C 112mg/dl、網膜症なし65%、腎症Ⅰ期61%、インスリン治療ありは28%であった。登録時および追跡1年後の患者の平均的な糖尿病管理状態は糖尿病診療ガイドラインが提唱するレベルに達していたが、HbA1c(JDS値)6.5%未満の到達目標を満足していたのは約3割であった。大血管障害のイベントは102件発生し、冠動脈疾患が58%を占めた。死亡は20名で、死因は悪性腫瘍、心血管イベントの順であった。
結論
今後も、このコホートを高い追跡率で長期にわたって追跡することにより、糖尿病性合併症の発症と進展に及ぼす危険因子を解析し、糖尿病診療ガイドラインへの提言を行う。
日本糖尿病学会が日本腎臓学会・日本糖尿病眼学会・日本歯周病学会と協力して本研究を遂行する意義は大きい。

公開日・更新日

公開日
2011-06-15
更新日
-

文献情報

文献番号
201021074B
報告書区分
総合
研究課題名
糖尿病における失明、歯周病、腎症、大血管合併症などの実態把握とその治療に関するデータベース構築による大規模前向き研究
課題番号
H21-糖尿病等・指定-005
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
田嶼 尚子(東京慈恵会医科大学 名誉教授として引き続き同大にて 研究実施)
研究分担者(所属機関)
  • 野田 光彦(国立国際医療研究センター)
  • 植木 浩二郎(東京大学)
  • 吉岡 成人(NTT東日本札幌病院)
  • 島野 仁(筑波大学)
  • 中村 二郎(名古屋大学)
  • 稲垣 暢也(京都大学)
  • 谷澤 幸生(山口大学)
  • 荒木 栄一 (熊本大学)
  • 槇野 博史(岡山大学)
  • 北野 滋彦(東京女子医科大学)
  • 野口 俊英(愛知学院大学)
  • 西村 理明(東京慈恵会医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国の糖尿病とその合併症の急増は、個人レベルのみならず医療経済面でも問題となっている。「健康日本21」では糖尿病を対象疾患とし医療環境向上を図ってきたが、合併症リスクや推移に関する全国的な大規模観察研究はない。本研究は糖尿病性合併症の実態調査と糖尿病管理・治療による合併症抑制効果を判定し、その成果を基に糖尿病診療ガイドラインへ提言することを目的とした。
研究方法
対象は、全国の大学病院、基幹病院及び診療所 計444施設に通院中の40-75歳未満の1型及び2型糖尿病患者6,398名で、登録期間は2007年6月-2009年11月である。登録時には患者基本情報、以降1回/年、追跡情報(身体所見・血液検査・心電図・腎症指標・網膜症指標・神経障害指標・歯周病・糖尿病治療情報)の報告を依頼した。食事(BDHQ;簡易型自記式食事歴法質問票)、運動(国際身体活動調査票)、歯周病(口腔検査報告書、オルソパントモ)調査を一部施行した。イベント発生に関する評価項目は、腎症:連続2回アルブミン尿あるいは顕性蛋白尿の出現・血清Cr値2倍以上の上昇・透析導入、網膜症:単純・増殖前網膜症から増殖網膜症への進展・失明・光凝固・硝子体手術、神経障害:下肢切断術(末梢神経障害を伴う)・潰瘍あるいは壊疽の出現、大血管障害:心筋梗塞・狭心症・心不全・ASO・下肢切断術・脳卒中・TIA・血管再建術、悪性腫瘍の発生、歯周病:歯の喪失など、死亡とした。
結果と考察
症例報告書回収率は追跡1年目80.5%、追跡2年目53.4%であった。登録時患者背景は、2型糖尿病93.4%、男性59.0%、年齢60.8歳、罹病期間10.8年、網膜症なし65%、腎症Ⅰ期61%であった。追跡1年後と登録時で差異はなかった。大血管障害のイベントは102件発生し、冠動脈疾患が58%を占めた。死亡は20名に認め、死因は悪性腫瘍、心血管イベントの順であった。2型糖尿病の登録時及び追跡1年後の治療内容は、食事療法のみ10.4→12.6%、経口血糖降下薬61.6→59.2%、インスリン治療28.0→28.1%(経口薬併用55%)であった。経口血糖降下薬(複数回答)は、登録時 SU薬41%、ビグアナイド薬32%、α-GI薬30%、TZD薬19%が使用されていた。
結論
わが国の糖尿病性合併症の実態把握とリスク因子検討の基礎となる糖尿病患者データベースの構築ができた。高い追跡率を継続し、適切な糖尿病治療の根拠となるデータを集積し、糖尿病治療ガイドラインへの提言を行う。
日本糖尿病学会が日本腎臓学会・日本糖尿病眼学会・日本歯周病学会と協力して本研究を遂行する意義は大きい。

公開日・更新日

公開日
2011-06-15
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201021074C

成果

専門的・学術的観点からの成果
糖尿病患者の合併症の実態を正確に把握することにより、糖尿病患者の標準的な病態・経過および予後の基礎データを提供しうる。
臨床的観点からの成果
日本全国で糖尿病専門医の診察を受けている患者の糖尿病管理状況と合併症の実態を明らかにした。今後、イベント発生とそれに関連するリスク因子を同定することにより、有効かつ効率的な介入戦略を示すことができる。日常臨床におけるHbA1c(JDS値)の平均値は7.1%で、目標値(6.5%未満)に到達していたのは34%であった。厳格血糖管理の「恩恵」は大きいが、それに伴う低血糖、体重増加、副作用、コスト、患者の不安などの「害」の軽減も考慮すべきであろう。
ガイドライン等の開発
「科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン」(2004年初版)は2010年に改訂第3版を発行したが、日本人を対象にしたエビデンスが少なかった。本研究の研究成果は、血糖コントロールの目標、2型糖尿病の治療アルゴリズムをアップデートする際、参考になる。またコンセンサスによる推奨がなされていた食事、運動、歯周病についてはエビデンスを提示することができる。
その他行政的観点からの成果
平成12年厚労省は「健康日本21」を策定し、9分野4疾患の一つとして糖尿病を選出した。本研究は「健康日本21」の数値目標のうち、特定健診や糖尿病実態調査では実態が把握しづらい糖尿病性合併症(腎症、失明)関するデータを、継続して提供することが出来る。また、日本人糖尿病の合併症の変更可能なリスク因子を明確に出来れば、有効かつ効率的な介入戦略が示され、糖尿病に起因する医療コストの削減に寄与しうる。
その他のインパクト
JDCPコホートを高い追跡率で長期にわたって追跡することにより、糖尿病性合併症の発症と進展に及ぼす危険因子を解析し、糖尿病ガイドラインへの提言をしえれば、社会的波及は大きい。

発表件数

原著論文(和文)
1件
JDCP study 編集 門脇孝 糖尿病ナビゲーター(第2版)p318-319、メディカルレビュー社 2010年
原著論文(英文等)
1件
準備中
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
シンポジウム11 JDOIT 1, 2, 3 JDCPからのメッセージ 第54回日本糖尿病学会年次学術集会、2011年5月、札幌
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
10件
JDCP studyの研究代表者、研究分担者は、国内外の学会や研究会で本研究の意義と経過を紹介し、日本人糖尿病における合併症の実態とリスク因子解明の重要性を話した。症例報告書の回収率向上にも寄与した。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-

収支報告書

文献番号
201021074Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
22,000,000円
(2)補助金確定額
22,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 0円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 0円
間接経費 0円
合計 0円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-