成人期における歯科疾患のスクリーニング体制の構築に関する研究

文献情報

文献番号
201021052A
報告書区分
総括
研究課題名
成人期における歯科疾患のスクリーニング体制の構築に関する研究
課題番号
H20-循環器等(歯)・一般-003
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
森田 学(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科 予防歯科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 川浪雅光(北海道大学大学院歯学研究科 歯周・歯内療法学教室 )
  • 矢谷博文(大阪大学大学院歯学研究科 顎口腔咬合学分野)
  • 花田信弘(鶴見大学歯学部 探索歯学講座)
  • 高柴正悟(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科 歯周病態学分野)
  • 野村義明(鶴見大学歯学部 探索歯学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
4,410,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
歯科医師の介入を必要とせず,さらに非侵襲的に歯科疾患有病者をふるい分けするための質問調査票法,血液や唾液を使った検査方法の開発を目的とした。
研究方法
質問票を試作し, 歯周病有病者,抜去の適応となるような歯を1歯以上持っている者を効率よくスクリーニングする質問項目を抽出した。また,血液や唾液検査と臨床指標との関連を検討した。
さらに,試作した自己記入式質問票を用いて,静岡県,岡山県内の住民に質問調査票を配布した。それに対する回答結果をもとに,自分の口腔内を自己判定してもらい,その後の歯科保健行動の変化を調査した。
結果と考察
歯周病有病者(CPIコード4)のスクリーニングでは,「現在,かけた歯はありますか」,「歯ぐきがはれてブヨブヨしますか」,「自分は歯周病(または歯槽膿漏:しそうのうろう)だと思いますか」のいずれか1項目に該当する者について,敏感度0.94,特異度0.52という値を示した。抜歯の適用者のスクリーニングについては,「現在,お口の中で気になることはありますか」,「自分は歯周病だと思いますか」,「歯科医院で歯ぐきの治療が必要ですと言われたことがありますか」,そして学歴(短大以下),以上4項目のうちでどれか3項目に相当した場合,敏感度0.90,特異度0.88となった。 
抜歯が必要な者と必要で無い者との間で統計学的に有意な差が認められた臨床項目は健全歯数,喪失歯数,現在歯数,唾液検査の乳酸脱水素酵素,出血部位数,出血部位スコア,歯周ポケット平均値,歯周ポケット最大値,アッタチメントレベル平均値,アッタチメントレベル最大値の11項目であった。決定木分析による抜歯を予想するモデルを作製したところ91.6%の予想精度を持つモデルが作製された。
一方,岡山県で行った質問調査で「要治療」と自己判定した者のうち61.4%が歯科を受診し,「専門家の指導,歯科治療を受けた」,もしくは「受ける予定である」と答えていた。ところが,静岡県での調査では「要治療」と判定された者の僅か8.0%が歯科医療機関への通院を開始しており,地区によって結果が大きく異なっていた。
結論
歯周病有病者をふるい分けするための質問調査項目が抽出され,また,それを含む自己記入式判定表を用いることで,住民の歯科保健行動が変容できる可能性が示唆されたしかし,自己記入式質問表を用いて歯科治療の必要性を判定し受療行動に結びつけることを考慮した新たなスクリーニング体制を構築するにはさらなる改良が必要である。

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-

文献情報

文献番号
201021052B
報告書区分
総合
研究課題名
成人期における歯科疾患のスクリーニング体制の構築に関する研究
課題番号
H20-循環器等(歯)・一般-003
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
森田 学(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科 予防歯科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 川浪雅光(北海道大学大学院歯学研究科 歯周・歯内療法学教室)
  • 矢谷博文(大阪大学大学院歯学研究科 顎口腔咬合学分野)
  • 花田信弘(鶴見大学歯学部 探索歯学講座)
  • 高柴正悟(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科 歯周病態学分野 )
  • 野村義明(鶴見大学歯学部 探索歯学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
歯科医師の介入が無くても,効率よく歯科疾患有病者を抽出する手法として,質問調査,唾液・血液検査に注目し,その可能性を検討した。
研究方法
平成20年度は文献レビューで,歯の喪失を予測できる質問項目,口腔内の指標,唾液・血液検査方法を抽出した。平成21年度,22年度は,質問調査票を試作し,唾液・血液検査とともに,その有効性を検討した。岡山大学病院および開業歯科医院の患者を被験者に,抜歯の適応となる歯を保有している者(症例群)と,保有していない者(対照群)との間で,質問調査,口腔内検査結果の差を統計学的に分析した。また,試作した自己記入式質問票を地域住民に配布し,それに対する回答結果をもとに,自己判定してもらい,さらにその後の歯科保健行動の変化を調査した。
結果と考察
「現在,お口の中で気になることはありますか」,「自分は歯周病だと思いますか」,「歯科医院で歯ぐきの治療が必要ですと言われたことがありますか」,そして学歴(短大以下),以上4項目のうちでどれか3項目以上に相当した場合,敏感度0.90,特異度0.88となり,最も効率よく症例群と対照群をスクリーニングできることが示された。臨床指標と唾液検査を共に用いで歯の喪失の予測モデルを決定木分析により作製した結果,感度 0.95,特異度0.87という値が得られた。Aaに対するIgG抗体価と出血部位スコア,平均歯周ポケット深さ,および平均アタッチメントロスととの間に,有意な相関関係が認められた。
岡山県内の地域で質問調査票を配布し,歯科保健行動の変化を追跡した。その結果,要治療と自己判定した者のうち61.4%が「専門家の指導,歯科治療を受けた」,もしくは「受ける予定である」と答えていた。また,これら一連の作業を市町村で実施する場合のマニュアル(背景,実施方法,質問項目の根拠,住民説明用資料)を作製し,主任研究者の教室のHPから自由にダウンロードできるように整備した。一方,静岡県での調査では「要治療」と判定された者の僅か8.0%が歯科医療機関への通院を開始しており,地区によって結果が大きく異なっていた。
結論
歯周病有病者をふるい分けするための質問調査項目が抽出され,また,それを含む自己記入式判定表を用いることで,住民の歯科保健行動が変容できる可能性が示唆されたしかし,自己記入式質問表を用いて歯科治療の必要性を判定し受療行動に結びつけることを考慮した新たなスクリーニング体制を構築するにはさらなる改良が必要である。

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201021052C

成果

専門的・学術的観点からの成果
従来の成人を対象とした歯科健診における質問調査では,科学的根拠を確認しないまま質問調査項目が決定されていた。これに対して,本研究課題では,ROC曲線,敏感度,特異度等の算出により,科学的な分析方法を経て質問項目を抽出している。また,痛みや出血を伴う従来型の健診方法では受診者率が少ないことが市町村保健事業の現場で指摘されており,本課題で開発した質問調査は,公衆衛生学的にも応用可能である。
臨床的観点からの成果
抜歯の適応歯を持つ者や重度の歯周病罹患者では,咀嚼機能の低下はもとより,それに伴う栄養不良を招きやすい。さらには,虚血性心疾患や糖尿病など全身にも影響することが明らかになっている。本研究課題の成果をもとに,公衆衛生レベルで歯科疾患有病者をスクリーニングすることで,地域レベルでの口腔内局所の疾患予防のみならず,他臓器疾患の発重症化予防,ひいては高齢者におけるQOL低下の予防のもつながる研究である。
ガイドライン等の開発
該当なし。
その他行政的観点からの成果
市町村での歯科保健事業において,歯科疾患有病者をスクリーニングするためのマニュアルを開発した。また,市町村に歯科専門職が配置されていない場合で,他職種の保健担当者が使用可能な保健指導マニュアルを作成した。そして,これらのマニュアルはインターネットのホームページから無料でダウンロードできるサービスを提供した。
その他のインパクト
該当なし。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
市町村歯科保健事業で実施した。
その他成果(普及・啓発活動)
1件
市町村での保健指導マニュアルを作成した。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
該当なし
該当なし
該当なし  (2008)
原著論文2
該当なし
該当なし
該当なし  (2009)
原著論文3
該当なし
該当なし
該当なし  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-

収支報告書

文献番号
201021052Z