各種禁煙対策の経済影響に関する研究-医療費分析と費用効果分析

文献情報

文献番号
201021049A
報告書区分
総括
研究課題名
各種禁煙対策の経済影響に関する研究-医療費分析と費用効果分析
課題番号
H22-循環器等(生習)・一般-012
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
辻 一郎(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 岡村智教(慶應義塾大学 医学部)
  • 今中雄一(京都大学 大学院医学系研究科)
  • 田中英夫(愛知県がんセンター 研究所)
  • 谷原真一(福岡大学 医学部)
  • 中村幸志(金沢医科大学 医学部)
  • 三浦克之(滋賀医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
10,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
第1に喫煙が医療費に及ぼす影響を解明すること、第2に禁煙プログラムの費用対効果について実証的なデータを提示すること。これに基づいて、効果的で効率的な禁煙対策のあり方を提言する。
研究方法
喫煙が医療費に及ぼす影響に関する研究:全国各地のコホート研究データ(宮城県の国保加入者5万人、滋賀県全市町の健診受診者4.4万人など)をもとに、喫煙習慣と医療費との関連を検討した。
禁煙プログラムの費用効果分析:全国6ヵ所の禁煙外来を受診した患者525名を対象に、禁煙治療に要した費用(医師・看護師の人件費、医療機関でのその他の費用、保険薬局での薬代を含めた費用)を計算した。この値と禁煙成功率より、禁煙治療の費用効果比(禁煙成功者一人を生み出すのに要した費用)を求めた。
結果と考察
喫煙が医療費に及ぼす影響に関する研究:脳血管障害と虚血性心疾患に対する国民医療費(平成20年度・45?74歳)の総計1兆781億円のうち1733億円(16%)が喫煙関連によるものと推定された。医療費に対する影響は喫煙の方がメタボリックシンドロームより大きく、集団全体の循環器疾患予防や医療費という観点からは、喫煙単独群への介入も重要であることが示唆された。喫煙者が他のリスク(高血圧など)を併せ持つ場合、医療費は個々のリスクによる相乗効果のレベル以上に増大した。喫煙者における医療費の増加程度は観察期間とともに強まった。喫煙習慣と医療費との関連は性・年齢階級で異なり、とくに40歳代、50歳代の女性で喫煙のグレード上昇にともなう平均医療費の著明な増加が観察された。禁煙者では喫煙者・非喫煙者よりも医療費が高額であったが、病気のために禁煙した者も多い状況から、その解釈は慎重でなければならない。
禁煙プログラムの費用効果分析:一人あたりの禁煙治療費用は59,593円で、禁煙成功率(治療終了後6ヵ月後の郵送調査で「禁煙できた」と返信した者の割合)は23%であり、禁煙治療の費用効果比は259,799円と算出された。喫煙継続による医療費の増加程度を考えると、この値は十分価値あるものと考えられる。
結論
喫煙が医療費に及ぼす影響の度合いは、メタボリックシンドロームのそれより大きい。禁煙治療の費用効果比は妥当な範囲にあった。今後さらに禁煙対策を強化することは、国民の健康の増進と医療費の適正化に寄与するものと思われる。

公開日・更新日

公開日
2011-09-07
更新日
-

収支報告書

文献番号
201021049Z