日本人2型糖尿病患者における生活習慣介入の長期予後効果並びに死亡率とその危険因子に関する前向き研究(JDCS)

文献情報

文献番号
201021048A
報告書区分
総括
研究課題名
日本人2型糖尿病患者における生活習慣介入の長期予後効果並びに死亡率とその危険因子に関する前向き研究(JDCS)
課題番号
H22-循環器等(生習)・一般-011
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
曽根 博仁(筑波大学 人間総合科学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 大橋 靖雄(東京大学 医学系研究科)
  • 山下 英俊(山形大学 医学部眼科)
  • 石橋 俊(自治医科大学 医学部内科)
  • 片山 茂裕(埼玉医科大学 内科)
  • 及川 眞一(日本医科大学 内科学第三)
  • 吉村 幸雄(四国大学 生活科学部)
  • 荒木 厚(東京都健康長寿医療センター 糖尿病・代謝・内分泌科)
  • 山田 信博(筑波大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
14,920,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2型糖尿病は世界中でみられるが、その病態や合併症には人種差・民族差がある。本研究の目的は、日本人糖尿病患者の診療に役立つ臨床エビデンスを確立することであり、欧米以外では世界初の糖尿病患者の大規模臨床介入研究として、これまで数多くの成果を輩出してきた。
研究方法
研究班は専門分野ごとに分かれ、全国の専門医の意見を取り入れつつ、各合併症の発症率とリスクファクターを始めとする、特にわが国の各種ガイドライン作成に貢献できるような解析および論文作成を精力的に進行させている。同時に、世界的な糖尿病研究の動向を把握し解析に活かすために、世界の研究を統合したメタアナリシスや、他の人間ドックコホートによる結果のvalidationなども実施している。
結果と考察
本年度は、腎症、網膜症、大血管障害に関する主論文が、欧米の主要学会誌に受理され、日本人のエビデンスを世界に発信することができた。これまで、日本人は民族的に腎症に罹患しやすく進行もしやすいと考えられてきた。しかし今年度、本解析データでは、その罹患率は、英国人糖尿病患者よりかなり低かった。さらに腎症の緩解が3割もの患者にみられていたことも判明し、糖尿病専門施設でフォローされている患者では、腎症の発症・進展がかなり抑制されている可能性が示唆された。さらに喫煙が、糖尿病患者においてタンパク尿発症のリスクになるということも新たに判明するなど、現場の診療や指導に役立つデータが得られている。網膜症についても発症のリスクファクターとともに、世界的にも貴重な進展・増悪のリスクファクターが明らかになり、血糖コントロールの重要性が改めて浮き彫りになった。大血管合併症についても、TGが冠動脈疾患の予測因子になるという意外な欧米人患者との相違点が明らかになった。これらの結果は、欧米では一般的なガイドラインの(そして日本のガイドラインにも採用されている)推奨治療が必ずしも日本人患者にはベストではない可能性を示唆しており、現在引き続き詳細な検討を継続している。
結論
本研究は様々な側面において日本人糖尿病患者の診療、予防施策に貢献する新しいデータを生み出し続けている。わが国の生活習慣病分野の大規模コホート研究の先駆けである本事業によって得られた貴重な経験は、その後に開始された多くのわが国のコホート研究の進行に活かされ、わが国の臨床疫学研究の進歩にも貢献している。

公開日・更新日

公開日
2011-06-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201021048Z