動脈硬化の多角的評価による脳卒中個別化治療開発に関する研究

文献情報

文献番号
201021043A
報告書区分
総括
研究課題名
動脈硬化の多角的評価による脳卒中個別化治療開発に関する研究
課題番号
H22-循環器等(生習)・一般-006
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
長束 一行(独立行政法人国立循環器病研究センター 脳神経内科)
研究分担者(所属機関)
  • 内山 真一郎(東京女子医科大学 神経内科)
  • 松本 昌泰(広島大学大学院 脳神経内科)
  • 藤代 健太郎(東邦大学医学部医学科 教育開発室)
  • 北川 一夫(大阪大学大学院医学系研究科 神経内科)
  • 小久保 喜弘(独立行政法人国立循環器病研究センター 予防健診部)
  • 竹川 英宏(獨協医科大学 神経内科)
  • 山村 修(福井大学医学部 地域医療推進講座)
  • 多賀谷 昌史(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 脳卒中内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
9,820,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究の目的は、多角的な動脈硬化の検査指標を組み合わせることで粥状硬化と細動脈硬化を分離して評価可能な指標の組み合わせを見いだし、より早期から個々の動脈硬化の特徴に合わせた治療介入が可能となるようなsurrogated endpointを確立することにある。
研究方法
1)後ろ向きデータベースの作成と解析
 過去2年間の脳卒中症例を8施設で後ろ向きに登録し、脳卒中病型および細動脈硬化を反映する病態と頸動脈エコー、血管の硬さの指標との関連について解析した。
2)前向きデータベースのプロトコール作成
 後ろ向き調査ではデータ欠損が多く、再現性や治療による変化を調査するために前向き調査を計画し、プロトコールを作成した。
3)都市部一般住民を対象とした動脈硬化の多角的評価による脳卒中予測因子に関する研究
 小久保班員が都市部一般住民3295名を対象に、健康審査に合わせて脈波伝搬速度を計測し、背景因子との検討を行った。
結果と考察
1)後ろ向きデータベースの作成と解析
 998例を対象に、脳卒中3病型(アテローム血栓性脳梗塞:ATBI、穿通枝梗塞、脳出血)と頸動脈エコー所見(maxIMT、プラークスコア、頸動脈のpulsatility index:PI)および血管の硬さの指標(baPWV、CAVI)との関連を解析したところ、maxIMT、プラークスコアはATBIで高値を示し、PIは脳出血で有意に高値を示した。また、細動脈硬化を反映すると考えられる頭部MRIでの白質病変、頭蓋内微小出血、アルブミン尿と頚動脈のPIは有意に関連していた。これらの結果から、maxIMTとプラークスコアは粥状硬化を反映するが、頚動脈のPIは細動脈硬化を評価する指標として有用であることが示唆された。血管の硬さを表す指標に関しては、実施症例数が少ないため有効な解析が不可能であったため、今後の前向き調査で検討を行う。
2)前向きデータベースのプロトコール作成
 後ろ向き調査で収集した項目と、計測可能な症例では経頭蓋ドプラーによる脳血管反応性の評価を加え、すでに登録を開始している。
3)都市部一般住民を対象とした動脈硬化の多角的評価による脳卒中予測因子に関する研究
 baPWVに年齢と血圧の寄与率が極めて高いために、baPWVを動脈硬化の指標とする場合には年齢と血圧の調整が必要であることが明らかとなった。
結論
 細動脈硬化を評価するための指標として、頚動脈のPIが有用なことが明らかにされた。今後、血管の硬さの指標や脳血管反応性についての評価を行う。

公開日・更新日

公開日
2011-09-07
更新日
-

収支報告書

文献番号
201021043Z