大規模化する食中毒原因菌の疫学的指標としてのDNA型別、ファージ型別等の応用と新しい迅速型別の開発に関する研究

文献情報

文献番号
199700786A
報告書区分
総括
研究課題名
大規模化する食中毒原因菌の疫学的指標としてのDNA型別、ファージ型別等の応用と新しい迅速型別の開発に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
田村 和満(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 渡辺治雄(国立感染症研究所)
  • 竹田多恵(国立小児病院研究所)
  • 保科定頼(慈恵医大学医学部)
  • 宮本秀樹(静岡県環境衛生研究所)
  • 山井志朗(神奈川県衛生研究所)
  • 寺島淳(国立感染症研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 新興・再興感染症研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
平成10(1998)年度
研究費
27,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年のサルモネラ、腸炎ビブリオ、腸管出血性大腸菌等による食中毒は、大規模化と同時にグロウバル化してきている。特に、食材供給ルートの複雑化に伴い、離れた地域や時間的経過が異なる食中毒事例においても共通の食材や食品が汚染原因であるというが多くみられる。それらの因果関係を調査する場合に、菌の持つマーカーを一つの目印に追跡する手法が有効である。しかし、各方法の優位性、適応性に関するデータに乏しくかつ標準化に関する研究もなされていない。さらに、より簡便、迅速でより信頼性の高い疫学的指標の開発が求められている。本研究の目的は、既存の方法の比較検討を行いその適応事項を明確にするとともに新しい分子疫学指標を開発し、グローバル化してきている食中毒の迅速かつ正確な汚染源調査に役立てることにある。
研究方法
本研究事業は3年間で上述の目的を達成するために企画されたものである。したがって、基礎および応用に分けて分担研究者を設け、その分担者を中心に長期的データー蓄積をし、研究を進めていく方法を取った。その内訳はつぎのとおりである。
(基礎研究班)
1)腸管出血性大腸菌(O157以外の血清型)およびサルモネラの生化学的および血清型別による疫学的研究ー田村和満
2))腸管出血性大腸菌およびサルモネラの分子疫学的研究ー渡辺治雄
3)腸管出血性大腸菌(O157以外の血清型)およびサルモネラのファージ型別を用いての疫学的研究ー寺島淳
4)フィンガープリント法を用いての各種食中毒原因菌の型別ー保科定頼
(応用研究班)
5)環境中の食中毒原因菌の疫学的調査研究および解析ー山井志朗
6)腸管出血性大腸菌(O157以外の血清型)の環境および動物由来株のファージ型別法を用ての疫学的調査および解析ー宮本秀樹
7)病院由来腸管出血性大腸菌の疫学的解析ー竹田多恵
結果と考察
1年目の研究結果としては、1996年および1997年の2年間に全国で分離された腸管出血性大腸菌(O157以外の血清型)は302株でそれらの血清型は58種類におよんだ。特に1997年度はO157以外ではO26,O111およびO103の順でO群の分離事例が多かったのが特長である。また、腸管出血性大腸菌の迅速型別法の開発として腸管出血性大腸菌O157を用い、パルスフィールドゲル電気泳動法 (PFGE) とファージ型別法との相関関係について研究した結果、ファージ型別法もPFGE と同様に有効であることが明らかになった。
現在、我が国の大型食中毒および胃腸炎から分離されるサルモネラの大半はSalmonella Enteritidis (SE) である。 全国から分離され、国立感染症研究所に送菌されたSE株についてその迅速型別法の開発として、ファージ型別法と PFGE法との相関的研究解析をおこなつた結果、ファージ型別はPT1とPT4が主要な型であり、それらの結果はPFGEの成績よく合致することが明らかになった。
フィンガープリント法を用いての各種食中毒原因菌の型別研究では各種のプラスミドを用い比較研究を続行している。 病院、環境および各種動物からの腸管出血性大腸菌および食中毒原因菌の疫学的調査研究は地域を限定して、続行中である。
結論
本研究はその研究テーマが非常に大きくまた1年目であるため、各研究目的ごとの結論を出すには時期昇進と思われる。しかしながら、結果と考察の進行状況から推測かぎりでは、腸管出血性大腸菌やサルモネラの迅速型別法の開発研究はさらなる事例を重ねることによって、疫学マ-カーとして利用できると確信している。また、今後の環境調査の結果、主要な食中毒原因菌の意義付けも明快になるものと思われる。新しい分子疫学的手法の開発研究については現在、その情報を内外で収集中で、特に分子疫学の画像解析の検討は、国立感研の研究員をCDC(アメリアカ合衆国)に派遣し共同研究を行っているところである。
さらに、ここ数年来先進国では動物、食品のSalmonella Typhimurium DT104菌の汚染が大きな問題になつており、カナダおよびアメリカ合衆国では患者発生の報告もされている。この問題に対しては、今年度は、寺島、田村研究班で本菌を同定するための、ファージセットの常備を完了し、感研の同定以来株の一部を用い検討した結果、本菌を3株検出しているが、はたして我が国での本菌の汚染率がどれくれいあるかいまのところはきりしない。したがつてこの問題については2年以後の調査研究に組み入む予定である。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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研究報告書(紙媒体)