女性における生活習慣病戦略の確立---妊娠中のイベントにより生活習慣病ハイリスク群をいかに効果的に選定し予防するか。

文献情報

文献番号
201021025A
報告書区分
総括
研究課題名
女性における生活習慣病戦略の確立---妊娠中のイベントにより生活習慣病ハイリスク群をいかに効果的に選定し予防するか。
課題番号
H21-循環器等(生習)・一般-004
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
北川 道弘(独立行政法人国立成育医療研究センター 病院)
研究分担者(所属機関)
  • 今井 潤(東北大学大学院薬学研究科 医薬開発構想講座)
  • 関沢 明彦(昭和大学医学部)
  • 堀川 玲子(独立行政法人国立成育医療研究センター 病院)
  • 坂本 なほ子(独立行政法人国立成育医療研究センター 研究所)
  • 荒田 尚子(独立行政法人国立成育医療研究センター 病院)
  • 目時 弘仁(東北大学大学院医学系研究科 環境遺伝医学総合研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
8,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本人女性における妊娠中のイベントと高血圧、糖尿病、脂質代謝異常症などの生活習慣病やその後に発症する冠動脈疾患や脳動脈硬化症などの動脈硬化性疾患との関連性を明らかにすることを主な目的としている。
研究方法
東京と宮城でそれぞれ病院ベースに進行中である既存の2つの出生コホート研究データを中心に解析を行った。まず、妊婦自身の出生時の母子健康手帳から得られるデータや両親の高血圧歴の有無、妊娠前の体重や妊娠中の体重増加量と妊娠高血圧症候群発症との関連を調べ、次に、妊婦の母親を対象に妊婦自身の出生時の母子手帳データを用いて、妊婦の母親の健康状態を問診票で明らかになった高血圧や糖尿病との関連を調べた。さらに、出生後5年時の母児の検診が進められている成育コホート研究を用いて、妊娠高血圧症候群と5年後の高血圧発症、糖尿病発症、生活習慣病各指標との関連性を明らかにした。また、妊娠10-14週の妊娠早期の母体血細胞成分中RNAを分析し、妊娠高血圧症候群の発症との関連を調べた。
結果と考察
まず、両親の高血圧歴の有無、妊娠前の体重や妊娠中の体重増加量、妊婦自身の出生時の母子健康手帳から得られる母親の妊娠中血圧値と妊娠高血圧症候群発症との関連、妊婦の母親の高血圧や糖尿病の有病と妊婦自身の出生時母子健康手帳から得られる母親の妊娠時血圧値との相関を示した。いずれも、妊娠期間中の血圧レベルが高く、妊娠前体重が高く出産児の出生体重が小さいほど30~35年後の高血圧有病リスクは大であり、妊娠期間中の血圧レベルが高いほど糖尿病有病リスクが大であった。さらに、出生コホート研究における5歳児の母親健診の結果から、妊娠高血圧症候群発症者は分娩後5年時ですでに6人に1人の割合で高血圧をみとめ、その頻度は妊娠高血圧症候群非発症群に比較して約6.4倍であった。また、妊娠糖尿病のスクリーニング陽性率も非発症群の7.2%に対し50%と高率であり、既に5年後の時点で高率に高血圧や糖尿病を発症している可能性を示唆した。
妊娠早期の母体血細胞成分中RNAの分析により妊娠早期に妊娠高血圧症候群の発症予知が可能であった。
結論
妊娠高血圧症候群を中心に、その発症予測因子や短期または長期の女性の健康予後を明らかにした。今後は、妊娠高血圧症候群のみならず、胎児発育遅延、早産や妊娠糖尿病合併とその後の女性の健康予後を明らかにする。

公開日・更新日

公開日
2011-06-17
更新日
-

収支報告書

文献番号
201021025Z