女性外来と千葉県大規模コホート調査を基盤とした性差を考慮した生活習慣病対策の研究

文献情報

文献番号
201021020A
報告書区分
総括
研究課題名
女性外来と千葉県大規模コホート調査を基盤とした性差を考慮した生活習慣病対策の研究
課題番号
H20-循環器等(生習)・一般-024
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
天野 恵子(千葉県衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 上野 光一(千葉大学・大学院、薬学研究院)
  • 久野 譜也(筑波大学大学院人間科学研究科)
  • 嘉川 亜希子(鹿児島大学・大学院 医歯学総合研究科医学部)
  • 柳堀 朗子(千葉県衛生研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
8,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
性差に関する基礎・臨床研究を進め、新たな知見の集積を行い、特定健康診断・特定保健指導の現場に導入しうる資料作成を目指す。
研究方法
1.千葉県の「女性の健康疫学事業」より、平成17年(8000人)、19年(6000人)、21年(6000人)の「生活習慣に関するアンケート調査」データ、平成20年度に施行された特定検診受診者405,921名(男166,648名、女239,273名)、鴨川市における「おたっしゃ調査」追跡調査で平成19年、20年の両方に回答のあった4,209名(男1910名、女2299名)のデータを生活習慣病予防の視点で、性差を考慮し二次解析した。2.女性外来データファイリングシステムの改良・普及とデータの解析。3.生活習慣病と危険因子に関する日本人を対象とした疫学調査論文の読み込みとテキストの作成ならびにウエブサイトでの情報発信4.慢性腎臓病と虚血性心疾患寄与因子との関連について、連続2595名(男1763名、女832名)の冠動脈造影例での検討。
結果と考察
1.生活習慣に関するアンケート調査:平成17年から19年にかけて運動をする者の比率は上昇したが、朝食を週6日以上食べる者は減少し、女性の喫煙率に減少傾向がない、喫煙の健康に関する影響として脳卒中・心筋梗塞との関連を知っている割合が半数以下である、肥満者は食べる速さが速く、運動の頻度が低く、栄養成分表示への関心が低い。2.平成20年度特定検診データ:過去の心血管疾患既往とメタボリックシンドローム危険因子との関連を検討した。男性が女性に比しより強い関連性を持つ、高血圧が男女とも脳卒中既往の最大のリスクであることが明らかとなり、女性における喫煙、糖尿病のみのリスク保有、腹囲については関連性を認めなかった。3.おたっしゃ調査:食生活とBMI関連因子の検討をした。現在のBMIは男女とも、食べる速さと直近5年間にBMIが増加していることと関連していた。4.女性外来データファイリング:年々受診者における主訴として「心の問題」が増加し、糖尿病・高血圧治療に影響している。5.慢性腎臓病と虚血性心疾患寄与因子との関連では、女性におけるHDLコレステロールのCKD抑制が示唆された。6.文献レビューの冊子化を行った。
結論
肥満者における食べる速さの是正等、生活習慣病予防に対するさらなるポピュレーションアプローチが必要である。生活習慣病の陰に存在する心の問題への対策も必須である。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

文献情報

文献番号
201021020B
報告書区分
総合
研究課題名
女性外来と千葉県大規模コホート調査を基盤とした性差を考慮した生活習慣病対策の研究
課題番号
H20-循環器等(生習)・一般-024
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
天野 恵子(千葉県衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 上野 光一(千葉大学・大学院 薬学研究院)
  • 久野 譜也(筑波大学大学院 人間科学研究科)
  • 嘉川 亜希子(鹿児島大学・大学院 医歯学総合研究科・医学部)
  • 柳堀 朗子(千葉県衛生研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
性差に関する臨床研究を進め、特定健康診断・保健指導の現場に導入しうる資料作成をする。
研究方法
A.千葉県の「女性の健康疫学事業」から、1.おたっしゃ調査追跡調査で平成19年、20年の両方に回答のあった4,209名のデータから平成15年から20年にかけてのBMIの変化に関する要因を、2.平成17年(8000人)、19年(6000人)、21年(6000人)の生活習慣に関するアンケート調査データから生活習慣の変遷を、3.基本健康診査データ収集システム確立事業(平成14年度~18年度)のデータ(368,052件)から平成18年度時点で服薬のない18,371人について同一集団における5年間の検診測定値の変化を,また、平成19年度の特定検診データ(402,486件)から、BMIが25以上を内臓肥満該当者としたメタボリスクの集積の性差を、平成20年度特定検診データ(405,921件)から、過去の心血管疾患既往歴とメタボリスクとの関連を見た。B.女性外来データファイリングシステムの改良・普及とデータの解析。C.生活習慣病に関する日本人対象の疫学調査論文の収集と文献集の作成。D.医薬品男女別使用実態調査。E.CAG施行男女における冠動脈内皮機能寄与因子と慢性腎臓病の関連について検討。
結果と考察
A.おたっしゃ調査:現在のBMIは男女とも、食べる速さと直近5年間にBMIが増加していることと関連した。県民健康基礎調査:近年、運動をする者の比率は上昇したが、朝食を週6日以上摂る者が減り、女性の喫煙率が減っていない。喫煙と心血管疾患の関連を知る者は半数以下。肥満者は食べる速さが速く、運動頻度が低く、栄養成分表示への関心が低い。基本健康診査データ:検診測定値には明白な性差、年齢差が認められ、5年間の変化にも明白な性差・年齢差がある。H19年度特定検診:肥満者でメタボリスク保有数が多い。男女差は加齢とともに小となる。H20年度特定検診:脳卒中には高血圧が最大のリスクであり、心疾患にはリスクの保有数が関連し、ことに男性で明白。腹囲は女性の95cm以上でのみ脳卒中と関連あり。B.女性外来データファイリング:年々受診者における主訴として「心の問題」が増加し、生活習慣病の発症と治療の困難性をもたらしている。C.文献集を作成した。D.医薬品男女別使用実態:性差が明白で、男性では循環器用薬、女性では代謝性医薬品が一位。E.女性ではHDL-CのCKD抑制が示唆された。
結論
心血管疾患への危険因子の寄与の強さ、検診測定値には年齢差・性差が明白である。有効な保健指導には年齢差・性差を考慮する必要がある。参考資料として文献集を作成した。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2012-02-01
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201021020C

成果

専門的・学術的観点からの成果
1検査値の標準化を行い、匿名化した千葉県民基本健康診査データ(平成14~18年度)368,052件の解析より、検診測定値における性差・年齢差が明らかになった。この事実は、5年間すべての健診測定値が得られた受診者での解析でも全く同じ結果であった。保健指導においては受診者の性差・年齢差を考慮することが必須である。2平成20年度のデータでは、腹囲は女性の95cm以上でのみ、心血管疾患の既往と有意な関連があったが、男性では関連性を認めなかった。今後は地域別の解析・検討を行う予定である。
臨床的観点からの成果
1.女性外来では、年齢を問わず、受診者の2~3割をメンタルヘルスが占めるが、その治療結果は極めて良好である。微小血管狭心症、線維筋痛症等の病態解明と治療をも進めることができた。また、女性の機能性病態には漢方治療の効果が大であることが明らかとなった。2.薬物動態に性差があり、医薬品の使用実態、副作用にも性差があった。治療においては性差の考慮が必要である。3.「女性外来」は確実に全国に浸透し、医学部のカリキュラムへの性差医学の採用も進んでいる。
ガイドライン等の開発
1.日本循環器学会「循環病の診断と治療に関するガイドライン」の一つとして「循環器領域における性差医療に関するガイドライン(2008-2009年度行動研究班報告)」が出版され、性差の視点が組み込まれ、微小血管狭心症が記載された。2.日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」2012年度改定作業に対し、「女性」の章へ女性の年齢、男性とのリスクの差を考慮した脂質異常対策が組み込まれるよう提言を行った。
その他行政的観点からの成果
1.千葉県「健康増進および疫学調査のための基本健康診査データ収集システム確立事業」は、平成20年度には「特定健診・特定保健指導に係るデータ収集、評価・分析事業」として、千葉県の56全市町村からのデータを解析可能となった。2.第3次男女共同参画基本計画、第10分野「生涯を通じた女性の健康支援」に、男女の性差に応じた健康を支援するための総合的な取り組みを推進すると明記された。3.厚生労働省女性の健康づくり推進懇談会での提言は平成21年度女性の健康支援対策事業として実施された。
その他のインパクト
平成20、21年度厚生労働省「女性の健康週間イベント」。NHKあさイチ(2011.5見のがされる女性の病気),NHK名医にQ(2009,6,女と男の更年期障害)、朝日放送(2008,6女性ホルモンの異変から起こる病スペシャル)。日本テレビ(2008,1性差医療)、NHKスペシャル(2009,1,最新科学が読み解く性:女と男)。朝日新聞社説(2009,4),公明新聞(2010,8ウイメンズナウ),公明新聞(2010,9~12女性の健康ライフ連載)

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
26件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
38件
学会発表(国際学会等)
14件
2008年第3回国際性差医療学会にて嘉川が優秀賞を受賞。2008年第52回日本薬学会関東支部大会にて上野が2部門にて優秀発表症を受賞
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
厚生労働省:女性の健康支援対策事業 内閣府:第3次男女共同参画基本計画
その他成果(普及・啓発活動)
150件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-07-03
更新日
2015-10-07

収支報告書

文献番号
201021020Z