わが国における脳卒中再発予防のための急性期内科治療戦略の確立に関する研究

文献情報

文献番号
201021016A
報告書区分
総括
研究課題名
わが国における脳卒中再発予防のための急性期内科治療戦略の確立に関する研究
課題番号
H20-循環器等(生習)・一般-019
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
豊田 一則(独立行政法人国立循環器病研究センター 病院(脳血管内科))
研究分担者(所属機関)
  • 苅尾 七臣(自治医科大学附属病院 循環器内科)
  • 中川原 譲二(中村記念病院 脳神経外科)
  • 古井 英介(広南病院 脳血管内科)
  • 塩川 芳昭(杏林大学 脳神経外科)
  • 長谷川 泰弘(聖マリアンナ医科大学 神経内科)
  • 奥田 聡(国立病院機構名古屋医療センター 神経内科)
  • 山上 宏(神戸市立医療センター中央市民病院 脳卒中センター)
  • 木村 和美(川崎医科大学 脳卒中医学)
  • 岡田 靖(国立病院機構九州医療センター 脳血管センター)
  • 古賀 政利(独立行政法人国立循環器病研究センター 脳血管内科)
  • 永沼 雅基(熊本労災病院 神経内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
14,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「rt-PA患者登録研究」と「超急性期脳出血への降圧療法に関する研究」を主柱に、脳卒中超急性期からの危険因子管理・抗血栓療法の有効性と安全性を検証する。
研究方法
国内各地域を代表する10施設による、多施設共同観察研究。
結果と考察
(1) rt-PA患者登録研究:わが国独自の低用量rt-PA静注(0.6 mg/kg)治療を受けた急性期脳梗塞600例の背景危険因子として、MRIでの広範な早期虚血変化や軽微な腎機能障害、心房細動患者でのCHADS2スコア高値が転帰不良に関連する一方で、スタチンの発症前服用は転帰に有意に関連しなかった。他に脂質代謝異常、発症前抗血栓薬内服、透析歴、急性期血圧値とその変動、エダラボン治療の併用、rt-PA後早期の症候増悪や頭蓋内出血、閉塞血管部位など、多くの背景要因や急性期治療内容と慢性期治療成績との関連を解明した。研究成果を3つの国際学会に招聘されて講演し、研究班全体でも多数の国際・国内学会発表を行った。低用量治療の有効性に対して海外とくにアジアから反響が大きかった。
(2) 超急性期脳出血への降圧療法に関する研究:全国アンケート調査での多数意見であったニカルジピン静注を用いた収縮期血圧140?160 mmHgないしそれ以下への降圧の安全性・有効性を検討するため、前向き観察研究を行った。2010年度末までに188例が登録され、主要評価項目である72時間後の症状進行、24時間以内の降圧薬中止を要する副作用はともに既往文献から算出した予測値を大きく下回る好成績を示した。急性期の適切な降圧レベルを調べる国際試験ATACH-IIをミネソタ大学Qureshi教授らと企画した。
(3) 急性脳主幹動脈閉塞症の実態に関する研究:循委20公-2班と当班の合同でrt-PA治療国内認可後の主幹脳動脈閉塞を伴う脳梗塞患者1176例を登録・解析し、主幹動脈病変例への従来治療の限界を明らかにした。
(4) 急性期脳出血患者への抗凝固療法再開に関する研究:全国アンケート調査で、超急性期のワルファリン是正手段や抗凝固再開時期に施設間の差が大きいことを示した。治療方針の標準化の必要性が示唆された。この結果に基づき、脳出血発症後の抗凝固療法再開に関する前向き観察研究を始めた。
結論
上記4研究によって、脳卒中急性期治療における未解決の問題に一定の研究成果を得、論文発表をはじめとする情報発信を積極的に行った。

公開日・更新日

公開日
2011-09-07
更新日
-

文献情報

文献番号
201021016B
報告書区分
総合
研究課題名
わが国における脳卒中再発予防のための急性期内科治療戦略の確立に関する研究
課題番号
H20-循環器等(生習)・一般-019
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
豊田 一則(独立行政法人国立循環器病研究センター 病院(脳血管内科))
研究分担者(所属機関)
  • 苅尾 七臣(自治医科大学附属病院 循環器内科)
  • 中川原 譲二(中村記念病院 脳神経外科)
  • 古井 英介(広南病院 脳血管内科)
  • 塩川 芳昭(杏林大学 脳神経外科)
  • 長谷川 泰弘(聖マリアンナ医科大学 神経内科)
  • 奥田 聡(国立病院機構名古屋医療センター 神経内科)
  • 山上 宏(神戸市立医療センター中央市民病院 脳卒中センター)
  • 木村 和美(川崎医科大学 脳卒中医学)
  • 岡田 靖(国立病院機構九州医療センター 脳血管センター)
  • 古賀 政利(独立行政法人国立循環器病研究センター 脳血管内科)
  • 永沼 雅基(熊本労災病院 神経内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「rt-PA患者登録研究」と「超急性期脳出血への降圧療法に関する研究」を主柱に、脳卒中超急性期からの危険因子管理・抗血栓療法の有効性と安全性を検証する。
研究方法
国内各地域を代表する10施設による、多施設共同観察研究。
結果と考察
(1) rt-PA患者登録研究:わが国独自の低用量rt-PA静注(0.6 mg/kg)治療を受けた急性期脳梗塞600例の治療成績は、海外の成績と同等以上であった。背景危険因子として、MRIでの広範な早期虚血変化や軽微な腎機能障害、心房細動患者でのCHADS2スコア高値が転帰不良に関連する一方で、スタチンの発症前服用は転帰に有意に関連しなかった。他に脂質代謝異常、発症前抗血栓薬内服、透析歴、急性期血圧値とその変動、エダラボン治療の併用、rt-PA後早期の症候増悪や頭蓋内出血、閉塞血管部位など、多くの背景要因や急性期治療内容と慢性期治療成績との関連を解明した。
(2) 超急性期脳出血への降圧療法に関する研究:現状把握を目的に全国アンケート調査を行った。添付文書上で使用が制限されているニカルジピンが84%の施設で使われている現状を明らかにし、関連学会を介して添付文書改定意見を厚生労働省に提出した。アンケートでの多数意見であったニカルジピン静注を用いた収縮期血圧140?160 mmHgないしそれ以下への降圧の安全性・有効性を検討するため、前向き観察研究を行った。2010年度末までに188例が登録され、主要評価項目である72時間後の症状進行、24時間以内の降圧薬中止を要する副作用はともに既往文献から算出した予測値を大きく下回る好成績を示した。
(3) 急性脳主幹動脈閉塞症の実態に関する研究:循委20公-2班と当班の合同でrt-PA治療国内認可後の主幹脳動脈閉塞を伴う脳梗塞患者1176例を登録・解析し、主幹動脈病変例への従来治療の限界を明らかにした。
(4) 急性期脳出血患者への抗凝固療法再開に関する研究:全国アンケート調査で、超急性期のワルファリン是正手段や抗凝固再開時期に施設間の差が大きいことを示した。治療方針の標準化の必要性が示唆された。この結果に基づき、脳出血発症後の抗凝固療法再開に関する前向き観察研究を始めた。
結論
上記4研究によって、脳卒中急性期治療における未解決の問題に一定の研究成果を得、論文発表をはじめとする情報発信を積極的に行った。

公開日・更新日

公開日
2011-09-07
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201021016C

成果

専門的・学術的観点からの成果
わが国独自の低用量rt-PA静注療法(0.6 mg/kg)の適正性を証明した。本治療成績を予測し得る拝啓危険因子や画像所見を同定した。低用量治療の有効性に加え、その安全性や経済性に対して海外とくにアジアから反響が大きかった。超急性期脳出血患者への降圧治療の安全性を証明した。抗凝固療法中に発症した脳卒中患者への、超急性期のワルファリン是正手段や抗凝固再開時期に施設間の差が大きいことを示し、治療方針の標準化の必要性を示した。
臨床的観点からの成果
研究成果の情報発信に努め、3つの国際学会に招聘されて講演し、また研究班全体でも多数の国際学会・国内学会発表を行った。脳出血急性期の適切な降圧レベルを調べる国際試験ATACH-IIをミネソタ大学Qureshi教授らと企画し、平成23年度より日米多施設で患者登録を始める予定である。同じく発症3?9時間の脳梗塞患者へのrt-PA静注療法の有効性を探求する国際試験EXTENDに参加する契機となった。
ガイドライン等の開発
日本蘇生協議会・日本救急医療財団による心肺蘇生ガイドライン2010の作成に、神経蘇生作業部会委員として加わった。本研究成果をもとに、急性期脳出血患者への高圧治療を含めた内科治療に関する記載を担当した。
その他行政的観点からの成果
添付文書上で急性期脳出血への使用が制限されているニカルジピンが、全国アンケートで84%の施設で使われている現状を明らかにし、関連学会を介して、添付文書改定意見を厚生労働省に提出した。主幹脳動脈閉塞を伴う脳梗塞患者1176例の治療実態を調べ、この結果は経皮経管的脳血栓回収機器MERCIの国内承認において、従来治療成績を判断する資料に用いられた。
その他のインパクト
研究成果を国内各地で医師やコメディカル、救急隊員、国民への啓発資料として用いた。ホームページhttp://samurai. stroke-ncvc.jp を開設し、また公開講座などで、医療者や国民に情報を公開した。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
148件
その他論文(和文)
100件
その他論文(英文等)
5件
学会発表(国内学会)
100件
学会発表(国際学会等)
30件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
3件
心肺蘇生ガイドライン2010の作成、ニカルジピン添付文書改定意見を厚生労働省に提出、MERCIの国内承認において従来治療成績を判断する資料として利用された
その他成果(普及・啓発活動)
10件
ホームページhttp://samurai. stroke-ncvc.jp の開設、公開講座多数

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Sato S, Toyoda K,Uehara T, et al
Baseline NIH Stroke Scale score predicting outcome in anterior and posterior circulation strokes.
Neurology , 70 (24) , 2371-2377  (2008)
原著論文2
Itabashi R, Toyoda K, Yasaka M, et al
The impact of hyperacute blood pressure lowering on the early clinical outcome following intracerebral hemorrhage.
J Hypertens , 26 (10) , 2016-2021  (2008)
原著論文3
Yoshimura S, Toyoda K, Ohara T, et al
Takotsubo cardiomyopathy in acute ischemic stroke.
Ann Neurol , 64 (5) , 547-554  (2008)
原著論文4
Kawano H, Toyoda K, Yamamoto H, et al
Heparin-induced thrombocytopenia as a serious complication of heparin therapy for acute ischemic stroke.
Cerebrovasc Dis , 26 (6) , 641-649  (2008)
原著論文5
Kawase K, Okazaki S, Toyoda K, et al
Sex difference in the prevalence of deep vein thrombosis in Japanese patients with acute intracerebral hemorrhage.
Cerebrovasc Dis , 27 (4) , 313-319  (2009)
原著論文6
Toyoda K, Koga M, Naganuma M, et al
Routine use of intravenous low-dose rt-PA in Japanese patients: general outcomes and prognostic factors from the SAMURAI register.
Stroke , 40 , 3591-3595  (2009)
原著論文7
Yoshimura S, Koga M, Toyoda K, et al
Frontal bone window improves ability of transcranial color-coded sonography to visualize the anterior cerebral artery of Asian patients with stroke.
Am J Neuroradiol , 30 , 1268-1269  (2009)
原著論文8
Naganuma M, Toyoda K, Nonogi H, et al
Early hospital arrival improves outcome at discharge in ischemic, but not hemorrhagic, stroke: a prospective multicenter study.
Cerebrovasc Dis , 28 , 33-38  (2009)
原著論文9
Nakashima T, Toyoda K, Koga M, et al
Arterial Occlusion Sites on MRA Influence the Efficacy of Intravenous Low-Dose (0.6 mg/kg) Alteplase Therapy for Ischemic Stroke.
Int J Stroke , 4 , 425-431  (2009)
原著論文10
Koga M, Toyoda K, Naganuma M, et al
Nationwide survey of antihypertensive treatment for acute intracerebral hemorrhage in Japan.
Hypertens Res , 32 , 759-764  (2009)
原著論文11
Nezu T, Koga M, Kimura K, et al
Pre-treatment ASPECTS on DWI predicts 3-month outcome following rt-PA: SAMURAI rt-PA Registry.
Neurology , 75 , 555-561  (2010)
原著論文12
Sato S, Toyoda K, Matsuoka H, et al
Isolated anterior cerebral artery territory infarction: dissection as an etiological mechanism.
Cerebrovasc Dis , 29 , 170-177  (2010)
原著論文13
Kuwashiro T, Toyoda K, Yoshimura S, et al
Atheromatous plaques at the origin of the left subclavian artery in patients with ischemic stroke.
Cerebrovasc Dis , 29 , 290-296  (2010)
原著論文14
Yoshimura S, Toyoda K, Kuwashiro T, et al
Ulcerated plaques in the aortic arch contribute to symptomatic multiple brain infarction.
J Neurol Neurosurg Psychiatry , 81 , 1306-1311  (2010)
原著論文15
Shono Y, Koga M, Toyoda K, et al
Medial medullary infarction identified by diffusion-weighted MRI.
Cerebrovasc Dis , 30 , 519-524  (2010)
原著論文16
Naganuma M, Koga M, Shiokawa Y, et al
Reduced estimated glomerular filtration rate is associated with stroke outcomes after intravenous rt-PA: the Stroke Acute Management with Urgent Risk-factor Assessment and Improvement (SAMURAI) Study.
Cerebrovasc Dis , 31 , 123-129  (2010)
原著論文17
Koga M, Toyoda K, Nakashima T, et al
Carotid duplex ultrasonography can predict safety and outcome of intravenous rt-PA therapy for hyperacute stroke.
J Stroke Cerebrovasc Dis , 20 , 24-29  (2011)
原著論文18
Nezu T, Koga M, Nakagawara J, et al
Early ischemic change on CT versus DWI for stroke patients receiving intravenous rt-PA therapy: SAMURAI rt-PA Registry.
Stroke , 42  (2011)
原著論文19
Naganuma M, Mori M, Nezu T, et al
Intravenous recombinant tissue plasminogen activator therapy for stroke patients receiving maintenance hemodialysis: the Stroke Acute Management with Urgent Risk-factor Assessment and Improvement (SAMURAI) rt-PA Registry.
Eur Neurol  (2011)
原著論文20
Koga M, Kimura K, Shibazaki K, et al
CHADS2 score is associated with 3-month clinical outcomes after intravenous rt-PA therapy in stroke patients with atrial fibrillation: SAMURAI rt-PA Registry.
J Neurol Sci  (2011)

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-

収支報告書

文献番号
201021016Z