降圧治療および抗凝固療法の個人の特性に応じたテーラーメード治療確立に関する研究

文献情報

文献番号
201021013A
報告書区分
総括
研究課題名
降圧治療および抗凝固療法の個人の特性に応じたテーラーメード治療確立に関する研究
課題番号
H20-循環器等(生習)・一般-016
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
河野 雄平(独立行政法人国立循環器病研究センター病院 生活習慣病部門 高血圧・腎臓科)
研究分担者(所属機関)
  • 長束 一行(独立行政法人国立循環器病研究センター病院・内科脳血管部門 )
  • 宮田 敏行(独立行政法人国立循環器病研究センター研究所・分子病態部)
  • 宮田 茂樹(独立行政法人国立循環器病研究センター病院・輸血管理室)
  • 神出 計(大阪大学大学院 老年・腎臓内科学)
  • 鎌倉 史郎(独立行政法人国立循環器病研究センター病院 心血管内科部門)
  • 山本 晴子(独立行政法人国立循環器病研究センター研究所 治験推進室)
  • レジャバアレキサンダー(独立行政法人理化学研究所・ゲノム科学総合研究センター)
  • 古賀 政利(独立行政法人国立循環器病研究センター病院 脳血管部門)
  • 矢坂 正弘(九州医療センター 脳県巻センター)
  • 是恒 之宏(大阪医療センター)
  • 長谷川 泰弘(聖マリアンナ医科大学 神経内科)
  • 花田 裕典(独立行政法人国立循環器病研究センター研究所)
  • 嘉田 晃子(独立行政法人国立循環器病研究センター研究所 )
  • 楽木 宏実(大阪大学大学院老年・腎臓内科学)
  • 相馬 正義(日本大学医学部 総合内科)
  • 土橋 卓也(国立病院機構九州医療センター高血圧内科)
  • 森本 茂人(金沢医科大学 高齢医学)
  • 三木 哲郎(愛媛大学プロテオ医学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
6,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
降圧治療および抗凝固療法の個人の特性に応じたテーラーメード治療の確立を目指して、遺伝子多型を調べることによる降圧薬の選択や、遺伝子多型や食事内容などを考慮してワルファリン投与量を決定することの有用性を検証するための研究を行う。降圧薬はアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB), カルシウム拮抗薬(CCB), サイアザイド利尿薬の主要3種について検討する。
研究方法
降圧治療に関しては、全国の約20の高血圧専門施設の参加で前向きに降圧薬関連SNPによる降圧薬選択の有用性を検討するGEANE研究から得られた情報を基に解析した。抗凝固療法については、遺伝子多型検出型超高速等温増幅法を用いて短時間にチップ化することにより、ベッドサイドで測定可能なCYP2C9ならびにVKORC1の遺伝子多型を正確に測定しうるシステムを開発し、より簡便にそれらを含んだ予測値を基に個人のワルファリン至適投与量を推定する方法の開発を目指した。
結果と考察
降圧薬については、GEANE研究154例と同じaffymetrixの50万SNP DNAチップを用いて薬剤の降圧効果関連遺伝子を検討したHOMED-BP-GENE研究のデータを入手し、初期にARB, CCBによる単剤治療が行われた対象者でのデータを用い再現性の確認作業を行った。結果はARBならびにCCBの降圧効果に両試験で有意(p<0.05)に関連した複数のSNPが確認された。これらは両薬剤の感受性遺伝子多型としてテーラーメード診療に応用できる可能性がある。ワルファリン研究においては、4施設にて328例が登録された。全体では、PT-INRやワルファリン服薬量の季節変動は大きくなかったがビタミンK摂取量は、夏に少なく、冬に多い傾向がみられた。また、全ての症例におけるVKORC1、CYP2C9の遺伝子多型の検討が終了した。今後、ワルファリン至適投与量に関与する因子について、さらに詳細な検討を実施する。
SNPを調べることは、患者にとって生涯変わることのない有用な情報が提供でき、ゲノム情報を用いた高血圧や止血・血栓症の診療を実臨床の現場で開始することが可能になると考えられる。患者の薬剤感受性に合った有効性の高い治療薬の選択に生活習慣などを合わせることにより、個人の特性に応じたテーラーメード治療の確立が期待できる。
結論
降圧薬、ワルファリンともに将来のゲノム情報や患者の有する特性を反映したテーラーメード診療実現のための基礎情報が得られた。

公開日・更新日

公開日
2011-06-17
更新日
-

文献情報

文献番号
201021013B
報告書区分
総合
研究課題名
降圧治療および抗凝固療法の個人の特性に応じたテーラーメード治療確立に関する研究
課題番号
H20-循環器等(生習)・一般-016
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
河野 雄平(独立行政法人国立循環器病研究センター病院 生活習慣病部門 高血圧・腎臓科)
研究分担者(所属機関)
  • 長束 一行(独立行政法人国立循環器病研究センター病院内科脳血管部門)
  • 宮田 敏行(独立行政法人国立循環器病研究センター研究所 分子病態部)
  • 宮田 茂樹(独立行政法人国立循環器病研究センター病院 輸血管理室)
  • 神出 計(大阪大学大学院 老年・腎臓内科学)
  • 鎌倉 史郎(独立行政法人国立循環器病研究センター病院 心血管内科部門)
  • 山本 晴子(独立行政法人国立循環器病研究センター研究所 治験推進室)
  • レジャバ・アレキサンダー(独立行政法人理化学研究所 ゲノム科学総合研究センター)
  • 古賀 政利(独立行政法人国立循環器病研究センター病院 脳血管部門)
  • 矢坂 正弘(国立病院機構九州医療センター 脳血管センター)
  • 是常 之宏(大阪医療センター)
  • 長谷川 泰弘(聖マリアンナ医科大学)
  • 花田 裕典(独立行政法人国立循環器病研究センター)
  • 嘉田 晃子(独立行政法人国立循環器病研究センター)
  • 楽木 宏実(大阪大学大学院 老年・腎臓内科学)
  • 相馬 正義(日本大学医学部総合内科)
  • 土橋 卓也(国立病院機構九州医療センター 高血圧内科)
  • 森本 茂人(金沢医科大学 高齢医学)
  • 三木 哲郎(愛媛大学プロテオ医学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
降圧治療および抗凝固療法の個人の特性に応じたテーラーメード治療の確立を目指して、遺伝子多型を調べることによる降圧薬の選択や、遺伝子多型や食事内容などを考慮してワルファリン投与量を決定することの有用性を検証するための研究を行う。降圧薬はアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB), カルシウム拮抗薬(CCB), サイアザイド利尿薬の主要3種について検討する。
研究方法
降圧治療に関しては、全国の約20の高血圧専門施設の参加で前向きに降圧薬関連SNPによる降圧薬選択の有用性を検討するGEANE研究から得られた情報を基に解析した。抗凝固療法については、遺伝子多型検出型超高速等温増幅法を用いて短時間にチップ化することにより、ベッドサイドで測定可能なCYP2C9ならびにVKORC1の遺伝子多型を正確に測定しうるシステムを開発し、より簡便にそれらを含んだ予測値を基に個人のワルファリン至適投与量を推定する方法の開発を目指した。
結果と考察
降圧薬については、GEANE研究154例と同じaffymetrixの50万SNP DNAチップを用いて薬剤の降圧効果関連遺伝子を検討したHOMED-BP-GENE研究のデータを入手し、初期にARB, CCBによる単剤治療が行われた対象者でのデータを用い再現性の確認作業を行った。結果はARBならびにCCBの降圧効果に両試験で有意(p<0.05)に関連した複数のSNPが確認された。これらは両薬剤の感受性遺伝子多型としてテーラーメード診療に応用できる可能性がある。ワルファリン研究においては、4施設にて328例が登録された。全体では、PT-INRやワルファリン服薬量の季節変動は大きくなかったがビタミンK摂取量は、夏に少なく、冬に多い傾向がみられた。また、全ての症例におけるVKORC1、CYP2C9の遺伝子多型の検討が終了した。今後、ワルファリン至適投与量に関与する因子について、さらに詳細な検討を実施する。
SNPを調べることは、患者にとって生涯変わることのない有用な情報が提供でき、ゲノム情報を用いた高血圧や止血・血栓症の診療を実臨床の現場で開始することが可能になると考えられる。患者の薬剤感受性に合った有効性の高い治療薬の選択に生活習慣などを合わせることにより、個人の特性に応じたテーラーメード治療の確立が期待できる。
結論
降圧薬、ワルファリンともに将来のゲノム情報や患者の有する特性を反映したテーラーメード診療実現のための基礎情報が得られた。

公開日・更新日

公開日
2011-06-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201021013C

成果

専門的・学術的観点からの成果
降圧治療の無作為臨床試験GEANE研究による降圧薬感受性遺伝子多型の情報を、別の無作為臨床試験HOMED BP-GENE研究の結果と照合し、カルシウム拮抗薬(CCB)、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、利尿薬の降圧効果に関連する遺伝子多型を絞り込むことができた。抗凝固薬に関しては、多施設共同研究(GODWARD研究)を推進し、ワルファリンの効果に関する遺伝子多型や腎機能、年齢の影響を明らかにした。また、食習慣とくにビタミンKの摂取量に季節変動があることを示した。
臨床的観点からの成果
本研究では、高血圧治療において汎用されているCCB、ARB、利尿薬の効果について、それぞれに異なる複数の遺伝子多型が関与することが、2つの臨床試験を合わせた解析により明らかになった。将来の遺伝子診断に基づいたテーラーメード治療への重要な知見と考えられる。ワルファリンに関しては、その効果に特定の遺伝子多型が強く関与すること、腎機能や年齢もかなり影響すること、食事やビタミンK摂取の影響は比較的小さいことを明らかにした。この成果は、効果的で安全な抗凝固療法の確立に有用と考えられる。
ガイドライン等の開発
降圧治療および抗凝固療法については、各個人の遺伝子情報に基づいた治療は現在のガイドラインでは取り入れられていない。しかし、個人の特性に応じたテーラーメード治療の確立には各個人の正確な臨床情報および遺伝子情報が重要であると考えられ、本研究の成果は将来の降圧治療および抗凝固療法のガイドラインへの重要な資料となる可能性がある。
その他行政的観点からの成果
高血圧の有病率は非常に高く、適切な降圧治療は循環器病予防のために極めて重要である。本研究は、降圧薬の効果や副作用に関与する遺伝子多型を同定し臨床応用することによるテーラーメイド診療の実現に貢献すると考えられる。抗凝固薬を要する症例も多く、ワルファリンの個人の体質や食習慣に応じた効果的で安全な使用法の確立が必要で、本研究はその実現に貢献するものである。また、本研究は降圧薬および抗凝固薬の適切な選択と使用への資料となり、医療経済的にも意義が大きいと考えられる。
その他のインパクト
本研究の成果は、多くの論文および学会発表となって現れている。なかでも、降圧薬感受性遺伝子多型についての研究は、2008年のAmerican Heart Associationの学術集会においてTranslational Trial and Strategies &#8211; First in Manのセッションで取り上げられ、注目を集めた。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
67件
その他論文(和文)
21件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
51件
学会発表(国際学会等)
22件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Miwa Y, Kamide K, Takiuchi S, et al.
Association of PLA2G7 polymorphisms with carotid atherosclerosis in hypertensive Japanese.
Hypertens Res , 32 , 1112-1118  (2009)
原著論文2
Kamide K, Yang J, Matayoshi T, et al.
Genetic polymorphisms of L-type calcium channel α1C and α1D subunit genes are associated with sensitivity to the antihypertensive effects of L-type dihydropyridine calcium-channel blockers.
Circ J , 76 , 732-740  (2009)
原著論文3
Yin T, Hanada H, Miyashita K, et al.
No association between vitamin K epoxide reductase complex subunit 1-like 1 (VKORC1L1) and the cariability of warfarin dose requirement in a Japanese patient population.
Thrombosis Research , 122 , 179-184  (2008)
原著論文4
Oguro R, Kamide K, Kokubo Y, et al.
Association of carotid atherosclerosis with genetic polymorphisms of the klotho gene in patients with hypertension.
Geriat Gerontol Int , 10 , 311-318  (2010)
原著論文5
Horio T, Kamide K, Takiuchi S, et al.
Association of insulin-like growth factor-1 receptor gene polymorphisms with left ventricular mass and geometry inessential hypertension.
J Hum Hypertens , 24 , 320-326  (2010)
原著論文6
M. Mitsuguro, T. Sakata, A. Okamoto, et al.
Usefulness of antithrombin deficiency phenotypes for risk assessment of venous thromboembolism: type I deficiency as a strong risk factor for venous thromboembolism.
Int J Hematol , 92 , 468-473  (2010)
原著論文7
Matsumoto S, Kamide K, Banno F, et al.
Impact of RGS2 deficiency on therapeutic effect of telmisartan in angiotensin II-induced aortic aneurysm.
Hypertens Res , 33 , 1244-1249  (2010)
原著論文8
Ochi M, Tabara Y, Kido T, et al.
Quadriceps sarcopenia and visceral obesity are risk factors for postural instability in the middle-aged to elderly population.
Geriatr Gerontol Int , 10 , 233-243  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-

収支報告書

文献番号
201021013Z