文献情報
文献番号
199700783A
報告書区分
総括
研究課題名
劇症型 A 群レンサ球菌感染症の分子発症機構
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
大国 寿士(日本医科大学老人病研究所)
研究分担者(所属機関)
- 浜田茂幸(大阪大学歯学部)
- 山井志朗(神奈川県衛生研究所)
- 渡辺治雄(国立感染症研究所)
- 内山竹彦(東京女子医科大学)
- 赤池孝章(熊本大学医学部)
- 清水可方(国ロ旭中央病院)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 新興・再興感染症研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
平成10(1998)年度
研究費
27,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
劇症型 A 群レンサ球菌感染症の発症に関わる病原因子の解明と臨床・病理学的研究から、治療法並びに予防法を確立することを目的とする。劇症型の発症に関与する A 群菌が特定の、ないしは新たに出現したクローンであるか否かを検討いを検討するためには、以前より普遍的に存在する A 群菌株との比較の上で論ずる必要がある。そのために劇症型由来菌株、咽頭炎由来菌株並びに健常学童由来菌株の生化学的性状を比較、検討し、各菌株間にみられる細菌学的、疫学的特徴を把握し、且つ劇症型に関与する A 群菌がェがェがェが従来存在しない新規の病原因子を保有するか否かを遺伝子工学的手法を用いて明らかにすると共に、菌体代謝物質並びに菌体表層物質の病変成立における意義を明らかにすることを目的とした。
研究方法
細菌・疫学的研究に供試した菌株の M 型別には塩酸抽出によb謔よb謔闢セた抗原と自家製の抗 M 抗体を用いたゲル内沈降反応により行った。T 型別はトリプシン処理した菌体と市販の抗血清を用いた凝集反応により行った。生化学的性状の検討には "rapid ID 32 STREPT" キットを用い、また SPE-A, -B, -C の遺伝子型別は PCR 法を用いてトてトてトてトて行った。
菌株間の DNA 断片長多型の検出には Random amplified polymorohic DNA (RAPD)-PCR を用い、劇症株に見い出された 3 種の DNA 断片を精製し、これをプローブとしてサザンハイブリダイゼーションを行った。遺伝子の重復、欠失、挿入などの変異をスポットgトgトgトトの量的、位置的変化として検出できる RLGS 法を用いて、ゲノム DNA の変異の程度を解析した。
劇症型由来株と対照菌株の 102~109個をマウスの腹腔ないしは静脈に投与し、致死作用 (LD50) を検討すると共に、各臓器の菌数計算を行った。 SPE-A, -B, -C のマイトgggggトトgトージェン活性がヒトリンパ球を用いて, 型の如く行われた。
SPE-B を精製し、そのプロテアーゼ活性がヒト好中球 pro-MMP-8 に対する活性化を介して検討された。また、臍帯血から得られた CD 34 陽性細胞を選択的に分離し、stem cell factor と IL-6 存在下で、8~`~~~~`10週培養し、ヒト培養 mast cellを得、これに SPE-B を作用させ、形態学的には脱顆粒を観察し、遊離してくるヒスタミンはHPLC により定量した。菌体の細胞内侵入におけるヒアルロン酸の意義を検討するため、ヒアルロン酸合成酵素遺伝子(hasA)を不活化した変異株を??ををを作製し、親株と比較しながら、単層培養した HEp-2 細胞に対する侵入性を菌と一定時間接種後、CFU を算定した。
症例を全国的に集計し、臨床症状と検査所見を比較、検討し、病理解剖例では免疫組織化学的手法により、各種の抗体を用いて、病変部位における菌の同定とサイトカインの局在を検討した。
菌株間の DNA 断片長多型の検出には Random amplified polymorohic DNA (RAPD)-PCR を用い、劇症株に見い出された 3 種の DNA 断片を精製し、これをプローブとしてサザンハイブリダイゼーションを行った。遺伝子の重復、欠失、挿入などの変異をスポットgトgトgトトの量的、位置的変化として検出できる RLGS 法を用いて、ゲノム DNA の変異の程度を解析した。
劇症型由来株と対照菌株の 102~109個をマウスの腹腔ないしは静脈に投与し、致死作用 (LD50) を検討すると共に、各臓器の菌数計算を行った。 SPE-A, -B, -C のマイトgggggトトgトージェン活性がヒトリンパ球を用いて, 型の如く行われた。
SPE-B を精製し、そのプロテアーゼ活性がヒト好中球 pro-MMP-8 に対する活性化を介して検討された。また、臍帯血から得られた CD 34 陽性細胞を選択的に分離し、stem cell factor と IL-6 存在下で、8~`~~~~`10週培養し、ヒト培養 mast cellを得、これに SPE-B を作用させ、形態学的には脱顆粒を観察し、遊離してくるヒスタミンはHPLC により定量した。菌体の細胞内侵入におけるヒアルロン酸の意義を検討するため、ヒアルロン酸合成酵素遺伝子(hasA)を不活化した変異株を??ををを作製し、親株と比較しながら、単層培養した HEp-2 細胞に対する侵入性を菌と一定時間接種後、CFU を算定した。
症例を全国的に集計し、臨床症状と検査所見を比較、検討し、病理解剖例では免疫組織化学的手法により、各種の抗体を用いて、病変部位における菌の同定とサイトカインの局在を検討した。
結果と考察
劇症型 A 群レンサ球菌感染症の発病機構を明らかにするため、疫学、細菌学、免疫学、分子生物学並びに臨床、病理学的立場から研究を行ってきた。分離菌の細菌学的、疫学的検討では対照菌株(咽頭炎、健常学童由来株)と比贋梶jと比較しながら劇症型由来株の生化学的性状、血清型別並びに発熱毒素遺伝子の解析を行い、供試菌株を16の生物型に分類した。また同じ血清型でも由来ないしは分離年代により生物型並びに毒素型の占める割合に変化が認められた。従って、この分離菌株の不均一性は劇症型から分離される菌株を解析する際に、患者発生の背景として留意すべきことが指摘された。劇症型由来株に占めるM1/T1並びにM3/T3型とspeA遺伝子を保有する株の分離頻度は咽頭炎や健常学童由来株に比し高いことが確認された。
一方、遺伝子工学的手法を用いて、劇症型由来菌株に特異的なDNA領域の存在を明らかにするための検討がなされた。60種類の任意な配列のオリゴDNAプライマーを用いて、劇症型由来菌株、非劇症型由来菌株(標準株、咽頭炎患者由来株)のゲノムDNAをテンプレートとし、PCRを行ない、劇症型由来菌株のみに増幅される 0.4 kbp のDNA 断片長多型を得た。この断片をプローブとして、この領域周辺の DNA をクローニングし、その塩基配列を決定した。その結果、クローニングした 27 kbp の領域内に劇症型由来菌株に特異的な未知の約 400 bp の ORFの存在を確認した。また、RLGS 法により M3 型の標準菌株と劇症型菌株とのゲノム DNA の変異を解析した結果、劇症型菌株に特異的な7つの DNA スポットが認められた。以上の結果は劇症型菌株に新たな DNA 領域が加わっている可能性を示唆している。菌側の病原因子に関する研究において、劇症型由来菌株は猩紅熱由来菌株に比し、溶血毒の一つである Streptolysin-O(SLO) の産生能が高い傾向にあり、またマウス致死作用 (LD50)も強いことが明らかにされた。しかし、スーパー抗原活性を持つSPE-A, SPE-B, SPE-C の産生能は猩紅熱由来菌株に比し低下していた。菌体の組織侵入性に関する研究では菌体表層ヒアルロン酸に注目し、これが咽頭上皮細胞への侵入に如何なる影響を与えるかについて、ヒアルロン酸合成酵素(has A)を不活化した変異株とその親株とで比較、検討された。その結果、劇症型由来菌株と対照 (猩紅熱、咽頭炎)菌株間で細胞侵入性に相違はないが、変異株は親株、野性株に比し、高い細胞侵入性を示した。変異株においてはヒアルロン酸とは別に、他の接着ないしは付着因子あるいは未知の侵入性に関与する因子が露出している可能性を示唆した。
A 群レンサ球菌の産生するSPE-B (チオールプロテアーゼ)と菌体表層のプロテアーゼは相乗的に作用してマトリックスメタロプロテアーゼを活性化することを明らかにし、この活性化を介して組織破壊が促進され、菌体の組織への侵入性が容易に起るものと想定された。
また、SPE-B ないしは SL0 でヒト由来培養マスト細胞を刺激すると、脱顆粒を起すと共に、ヒスタミンのような、所謂 chemical mediator を遊離させる作用のあることを明らかにした。このことは SPE-B や SLOなどの菌体代謝物質が劇症型で起るショック病態へ関与する可能性を示唆している。
臨床、病理学的研究から、劇症型症例に精神症状を含む中枢神経症状が観察された。また、急性期の患者血中からはサイトカインが検出されず、グラム陰性菌による敗血症性ショックとは異なるのではないかと思われた。劇症型患者の口蓋扁桃の粘膜上皮内に存在する A 群レンサ球菌の菌体表層には蛍光抗体法により多糖体抗原を検出出来なかったが、菌体表層にはフィブリノーゲンが結合し、且つその周囲組織に好中球の浸潤は認めなかった。なお、産褥期に劇症型感染症が発症する症例を経験した。
一方、遺伝子工学的手法を用いて、劇症型由来菌株に特異的なDNA領域の存在を明らかにするための検討がなされた。60種類の任意な配列のオリゴDNAプライマーを用いて、劇症型由来菌株、非劇症型由来菌株(標準株、咽頭炎患者由来株)のゲノムDNAをテンプレートとし、PCRを行ない、劇症型由来菌株のみに増幅される 0.4 kbp のDNA 断片長多型を得た。この断片をプローブとして、この領域周辺の DNA をクローニングし、その塩基配列を決定した。その結果、クローニングした 27 kbp の領域内に劇症型由来菌株に特異的な未知の約 400 bp の ORFの存在を確認した。また、RLGS 法により M3 型の標準菌株と劇症型菌株とのゲノム DNA の変異を解析した結果、劇症型菌株に特異的な7つの DNA スポットが認められた。以上の結果は劇症型菌株に新たな DNA 領域が加わっている可能性を示唆している。菌側の病原因子に関する研究において、劇症型由来菌株は猩紅熱由来菌株に比し、溶血毒の一つである Streptolysin-O(SLO) の産生能が高い傾向にあり、またマウス致死作用 (LD50)も強いことが明らかにされた。しかし、スーパー抗原活性を持つSPE-A, SPE-B, SPE-C の産生能は猩紅熱由来菌株に比し低下していた。菌体の組織侵入性に関する研究では菌体表層ヒアルロン酸に注目し、これが咽頭上皮細胞への侵入に如何なる影響を与えるかについて、ヒアルロン酸合成酵素(has A)を不活化した変異株とその親株とで比較、検討された。その結果、劇症型由来菌株と対照 (猩紅熱、咽頭炎)菌株間で細胞侵入性に相違はないが、変異株は親株、野性株に比し、高い細胞侵入性を示した。変異株においてはヒアルロン酸とは別に、他の接着ないしは付着因子あるいは未知の侵入性に関与する因子が露出している可能性を示唆した。
A 群レンサ球菌の産生するSPE-B (チオールプロテアーゼ)と菌体表層のプロテアーゼは相乗的に作用してマトリックスメタロプロテアーゼを活性化することを明らかにし、この活性化を介して組織破壊が促進され、菌体の組織への侵入性が容易に起るものと想定された。
また、SPE-B ないしは SL0 でヒト由来培養マスト細胞を刺激すると、脱顆粒を起すと共に、ヒスタミンのような、所謂 chemical mediator を遊離させる作用のあることを明らかにした。このことは SPE-B や SLOなどの菌体代謝物質が劇症型で起るショック病態へ関与する可能性を示唆している。
臨床、病理学的研究から、劇症型症例に精神症状を含む中枢神経症状が観察された。また、急性期の患者血中からはサイトカインが検出されず、グラム陰性菌による敗血症性ショックとは異なるのではないかと思われた。劇症型患者の口蓋扁桃の粘膜上皮内に存在する A 群レンサ球菌の菌体表層には蛍光抗体法により多糖体抗原を検出出来なかったが、菌体表層にはフィブリノーゲンが結合し、且つその周囲組織に好中球の浸潤は認めなかった。なお、産褥期に劇症型感染症が発症する症例を経験した。
結論
劇症型から分離される A 群菌と従来から普遍的に存在する A 群菌の生化学的性状、血清型別、発熱毒素 (SPE) 遺伝子について比較、検討し、また遺伝子工学的手法から、劇症型由来菌株にこれまでに報告のなかった、新規病原因子が存在する可能性を示唆した。菌側の病原因子の研究から、劇症型由来菌株のSLO産生能並びに致死活性、菌体表層に存在する ヒアルロン酸の組織侵入性などが検討された。 また、SPE - B のmast cell に対する作用、あるいは菌体表層プロテアーゼとの相乗的な作用を介してのマットリックスメタロプロテアーゼの活性化について検討し、病理解剖例から詳細な病理組織学的検討がなされた。
公開日・更新日
公開日
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更新日
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