未受診者対策を含めた健診・保健指導を用いた循環器疾患予防のための地域保健クリティカルパスの開発と実践に関する研究

文献情報

文献番号
201021008A
報告書区分
総括
研究課題名
未受診者対策を含めた健診・保健指導を用いた循環器疾患予防のための地域保健クリティカルパスの開発と実践に関する研究
課題番号
H20-循環器等(生習)・一般-009
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
岡村 智教(慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学)
研究分担者(所属機関)
  • 山縣 然太朗(山梨大学大学院医学工学総合研究部社会医学講座)
  • 西脇 祐司(慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学)
  • 安田 誠史(高知大学教育研究部医療学系連携医学部門)
  • 大久保 孝義(滋賀医科大学社会医学講座公衆衛生学)
  • 三浦 克之(滋賀医科大学社会医学講座公衆衛生学)
  • 上島 弘嗣(滋賀医科大学生活習慣病予防センター)
  • 木山 昌彦(大阪府立健康科学センター健康度測定部)
  • 小久保 喜弘(国立循環器病研究センター予防健診部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
12,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、1) 全国にわたる大規模な個人ベースの調査で未受診者の特性や未受診理由を明らかにする、2) 未受診者の特性に合わせて一般的な市町村が保有しているリソースを活用した健診受診率向上のための地域介入手法を開発しその費用対効果を明らかにする、3) 複数の市町村で実際に地域介入を行ってプログラムの検証を行い受診率向上のためのマニュアル等の作成に資する、の3点である。
研究方法
初年度には全国の12市町村で未受診者約5万人を対象として郵送または訪問調査で未受診理由等を調査した(回収数 約2万5千人)。2年目にはモデル地域(大阪府H市)で「自覚症状がなく健康であると回答した者をターゲットとした地域介入プログラムを開発した。最終年度の2010年度は、前年度に開発した地域介入プログラムを実際に用いて複数の市町村国保の健診受診率を上昇させるための地域介入を行った。
結果と考察
モデル地域での健診受診のきっかけに関する全受診者調査から、ハイリスク・アプローチのみの健診受診効果は53%、ポピュレーション・アプローチ(ハイリスクとの複合含む)の効果は47%であり、両方の対策が必要であることが示された。またこのプログラムの実施に要した費用の総額を受診率増加分の推計値で除すると、受診率1%の上昇に要するコストは約34万円と推計された。このプログラムを近畿地方4市町、関東地方1市、東北地方1市で実施した(当初の受診率は25.0~52.7%)。その結果、もともと受診率が50%を超えていた一市を除くと受診率は3.0~6.8%上昇していた。これはモデル地域(H市)の解析結果からの予測とほぼ一致していた。一方、当初の受診率が高い市町村では保健指導参加率は大きく上昇したものの健診受診率は不変であった。
結論
既存のリソースだけではこれ以上の受診率の上昇には限界があり何らかのブレークスルーが必要である。本研究の成果は今後の市町村国保における未受診者対策のマニュアル等の作成に大きく資すると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

文献情報

文献番号
201021008B
報告書区分
総合
研究課題名
未受診者対策を含めた健診・保健指導を用いた循環器疾患予防のための地域保健クリティカルパスの開発と実践に関する研究
課題番号
H20-循環器等(生習)・一般-009
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
岡村 智教(慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学)
研究分担者(所属機関)
  • 山縣 然太朗(山梨大学大学院医学工学総合研究部社会医学講座)
  • 西脇 祐司(慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学)
  • 安田 誠史(高知大学教育研究部医療学系連携医学部門)
  • 大久保 孝義(滋賀医科大学社会医学講座公衆衛生学)
  • 三浦 克之(滋賀医科大学社会医学講座公衆衛生学)
  • 上島 弘嗣(滋賀医科大学生活習慣病予防センター)
  • 木山 昌彦(大阪府立健康科学センター健康度測定部)
  • 小久保 喜弘(国立循環器病研究センター予防健診部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、1) 全国規模の個人ベースの調査で未受診者の特性や未受診理由を明らかにする、2) 未受診者の特性に合わせて一般的な市町村が保有しているリソースを活用した健診や保健指導の受診率向上のための地域介入プログラムを開発する、3) 複数の市町村で実際に地域介入を行ってプログラムの検証を行い受診率向上のための指針等の作成に資する、の三点である。


研究方法
初年度は全国の12市町村で未受診者約5万人を対象に郵送または訪問調査で未受診理由等を調査した(回収数 約2万5千人)。2年目にはモデル地域(大阪府H市)で「自覚症状がなく健康である」と回答した者をターゲットとした地域介入プログラムを開発した。2年目から3年目にかけて実際にこのプログラムを用いて市町村国保の健診受診率を上昇させるための地域介入を実施した。
結果と考察
約2万5千人の調査から、主な未受診理由の上位三つ(「医師受診中(37%)」、「自覚症状がなく健康である(25%)」、「時間の都合がつかない(18%)」)を明らかにした。モデル地域で開発した地域介入プログラムは、受診勧奨ハガキ(ハイリスク・アプローチ)、「市のホームページ」、「広報の記事」、「街頭のポスター」、「健康まつりでの講演」、「健康まつりチラシ」(ポピュレーション・アプローチ)で構成されており、ハイリスク・アプローチのみの効果とポピュレーション・アプローチ(ハイリスクとの複合含む)の効果は約半々と推計された。また受診率1%の上昇に要するコストは約34万円であった。このプログラムを用いて6市町で受診率を向上させるための介入を行い(当初の受診率は25.0~52.7%)、もともと受診率が50%を超えていた一市を除くと受診率は3.0~6.8%上昇した。これはモデル地域(H市)の解析結果から予測した数値とほぼ一致していた。一方、受診率が高い市では保健指導参加率は大きく上昇したものの健診受診率は不変であった。
結論
本研究班の成果は今後の市町村国保における特定健診等の未受診者対策指針等の作成に大きく寄与すると期待されるが、既存のリソースだけでの介入による限界も示唆された。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201021008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
健診未受診者約2万5千人を調査し主な未受診理由の上位三つ(「医師受診中(37%)」、「自覚症状がなく健康である(25%)」、「時間の都合がつかない(18%)」)を明らかにした。「自覚症状がなく健康である」をターゲットとした地域介入プログラムを開発し、複数の市町で健診受診率を上昇させるための地域介入を実施した。その結果、もともと受診率が50%を超えていた一市を除くと受診率は3.0?6.8%上昇させることができた。これにより未受診者対策を科学的に行う端緒をつけた。

臨床的観点からの成果
本研究班では、がん検診のような客観的な評価が行われていなかった一般健診の効果についてプロペンシティスコアを用いて検証し、健診受診者の循環器疾患死亡リスクはあらゆる交絡要因を調整しても未受診者よりも低いことを示した。また眼底など詳細な検査項目の内容を頸部超音波検査等に変更しても未受診者の受診率にはあまり影響しないことも示した。
ガイドライン等の開発
開発した地域介入プログラムはどの市町村でも利用可能なリソースで構成されている。それは受診勧奨ハガキ・電話(ハイリスク・アプローチ)、「ホームページ」、「広報」、「ポスター」、「講演」、「健康まつりチラシ」(ポピュレーション・アプローチ)である。ハイリスク・アプローチのみの効果とポピュレーション・アプローチ(ハイリスクとの複合含む)の効果は約半々と推計され、このプログラムを用いた場合、受診率1%の上昇に要するコストは約34万円であった。これに基づいて受診率向上マニュアルの開発が可能である。

その他行政的観点からの成果
秋田県国保連合会、大阪府国保連合会、兵庫県国保連合会にて特定健診・特定保健指導実務担当者を対象とした未受診者対策のセミナーを開催し、それぞれの現場のスキルアップに貢献した。埼玉県担当者の要請に基づき研究報告書等を資料提供しその施策の推進に貢献した。
その他のインパクト
平成21年に毎日新聞(7月27日)、岩手日日新聞(10月21日)で本研究の一部が掲載された。平成22年度の厚生労働科学研究の「研究成果発表会(一般向け)」として市民公開講座を大阪府内で開催した(参加者 173人)。本研究で開発したチラシ等のツールを(社)日本家族計画協会から出版した。

発表件数

原著論文(和文)
32件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
35件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
4件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
山下亜希代、門脇崇、清水めぐみ、他
地域における健診後の健康教室未参加者についての検討
日本公衆衛生雑誌 , 55 , 324-324  (2008)
原著論文2
米田志保子、門田文、田中太一郎、他
滋賀県K町における健康診査未受診者の特性と生活習慣改善に対する意識についての検討
日本公衆衛生雑誌 , 55 , 350-350  (2008)
原著論文3
田口真里、門脇紗他佳、寳澤篤、他
滋賀県甲賀市国保加入者の健診未受診者の実態について
日本公衆衛生雑誌 , 55 , 350-350  (2008)
原著論文4
西村奈津子、岡村智教、他
大津市国保加入者の特定健診未受診理由別の特性と受診率向上のための方策(第1報)
日本公衆衛生雑誌 , 56 , 181-181  (2009)
原著論文5
西本美和、小久保喜弘、岡村智教、他
大津市国保加入者の特定健診未受診理由別の特性と受診率向上のための方策(第2報)
日本公衆衛生雑誌 , 56 , 182-182  (2009)
原著論文6
安田誠史、岡村智教
地域の特定健診非受診者の非受診理由と受診率向上策
日本公衆衛生雑誌 , 56 , 185-185  (2009)
原著論文7
田中太一郎、岡村智教、山縣然太朗、他
特定健診の受診率向上に向けて -山梨県内2市における健診未受診者の特性の検討-
日本公衆衛生雑誌 , 56 , 381-381  (2009)
原著論文8
小泉今日子、岡村智教、山縣然太朗、他
受診率の異なる地区における特定健診の未受診者特性-山梨県甲州市-
日本公衆衛生雑誌 , 56 , 381-381  (2009)
原著論文9
山田睦子、西脇祐司、岡村智教.
背景要因の異なる複数地域における特定健診・特定保健指導の未受診者の実態
日本公衆衛生雑誌 , 56 , 389-389  (2009)
原著論文10
渡部えくみ、早川岳人、神田秀幸、他
特定健康診査未受診者における将来健診受診の意思別未受診理由の解明
日本公衆衛生雑誌 , 56 , 395-395  (2009)
原著論文11
坪井聡、早川岳人、神田秀幸、他
特定健診未受診者における健康リスクの集積と健診受診歴との関連
日本公衆衛生雑誌 , 56 , 396-396  (2009)
原著論文12
舟本美果、岡村智教、他
ポピュレーション・アプローチと個別アプローチの連動による特定健診受診率向上対策
日本公衆衛生雑誌 , 57 , 230-230  (2010)
原著論文13
久保田和子、大久保孝義、他
特定保健指導不参加者804名の保健指導に対する意識:岩手県花巻市における調査より
日本公衆衛生雑誌 , 57 , 245-245  (2010)
原著論文14
後藤恵、早川岳人、阿部孝一、他
平成20年度特定保健指導参加者の特定健康診査結果からみる保健指導の効果
日本公衆衛生雑誌 , 57 , 238-238  (2010)
原著論文15
渡部えくみ、早川岳人、神田秀幸、他
特定健康診査受診者、未受診者における将来健診受診意向への課題
日本公衆衛生雑誌 , 57 , 238-238  (2010)
原著論文16
岡村智教
特定健診・保健指導導入後1年を振り返って、今後の方向性
こくほ大阪 , 341 , 4-5  (2010)
原著論文17
岡村智教
市町村における特定健診未受診者の実態調査と受診率向上のための戦略(1). 厚生労働科学研究による大規模調査の結果から
週刊国保実務 , 2708 , 29-33  (2010)
原著論文18
岡村智教
市町村における特定健診未受診者の実態調査と受診率向上のための戦略(2). 受診率向上を目的とした地域介入の試み
週刊国保実務 , 2716 , 35-39  (2010)
原著論文19
Hozawa A, Ohkubo T, Tsuji I, et al.
Participation in health check-ups and mortality using propensity score matched cohort analyses.
Prev Med , 51 , 397-402  (2010)
原著論文20
久保田和子、大久保孝義、佐藤陽子、他
岩手県花巻市における特定健診未受診者の未受診理由と健康意識.
厚生の指標 , 57 , 1-6  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
2017-08-03

収支報告書

文献番号
201021008Z